あそれユニちゃんズ!あよいしょユニちゃんズ!
真行寺由仁が最寄り駅にたどり着いたのは、指定された時間の5分ほど前だった。慣れない電車の路線に何かと戸惑いはしたけれど、余裕を持って家を出たおかげでなんとか間に合った訳だ。
……寝起きこそ諸々のモーニングコールによって半ギレだったけれども。規則正しい生活とはいつも無縁の人生だというのに。
駅を出て、少し先の喫茶店の前が待ち合わせ場所。進む足は若干浮ついたように跳ねている。人と遊びに行く経験なんて人生で数える程もなかったから……などと考えてしまうと落ち込みそうなのでやめる。地雷多いなぁ。
つらつらと垂れ流す思考を停めれば、先客は既に着いていた。現実でもやっと見なれた後ろ姿。なんと言おうか、まずなんと声をかけようか、ぎこちなく思考をめぐらせて。
「あ、ちえるちゃ――」
「えー、この辺りに出来てるんです、例のパンケーキ屋さん!?全然知らなかったー。私あんまりこっち来ないので」
「ね、風間ちゃん大体駅向こうの方に行くし」
「珍しーね、どしたん?」
――咄嗟に踵を返してしまった。電柱の陰に隠れて深呼吸を三回繰り返してから、もう一度ひっそりと伺う。
「え!何それヤバくないです?アッハ、ちえる的にもちょっと衝撃かも?」
あそこでからからと笑うパーカー姿は間違いない、ちえるだ。昨日の夜由仁に誘いをかけ、朝チャットに鬼のようにスタンプを送り電話を鳴らしまくって、寝ぼけながら応対した由仁に生活態度にまで謎の苦情をくれた後輩だ。
……じゃあ、あの話している人達は一体、いや、まあ、大体想像はつくのだが。
「……うーん……」
思わず、視線を彷徨わせる。由仁はなんというか、空気を読まないことには嬉しくもなんともない定評があった。割り込み程度のことを気負いなくやらかした前科が何度もあった――後からそのタイミングの悪さを自覚して散々頭を抱えたものだけど。だからこそ、今も、別に声をかけに行くこと自体は吝かではない、が。
悪手かもしれないと予め分かっているのなら、それは最早、何もしないことが正解ではないだろうか。
「(……楽しそうに話してる)」
距離を取ったことで会話は雑踏に紛れて聞こえなくなってしまったけれど、彼女が敬語を使っていることやその生活範囲に対する言及から、学校の先輩などだろうと推測できる。ここで由仁がやぁやぁとずうずうしく登場するのは、いささか不躾ではなかろうか?と考えてしまう。そんな気がした。
若干跳ねた三つ編みを撫でながら、由仁は辺りをぼんやりと見渡した。特にめぼしい建物はない、なら、あの喫茶店に入って、ちえるの話が終わる時期を伺うのが…最善か。
そろりそろり、何故か申し訳ないような気持ちに背を丸めて、由仁は喫茶店の入口を開けようとしながら――一瞬、ちえるの方を盗み見て。
「――」
目が合った。
「あ、すみませーん、待ち合わせ相手来てくれたんで今日はここでお暇させてもらいますね?」
すっぱりお別れの言葉もそこそこに、そのまま放置された先輩たちの丸い目を背に、ちえるは扉に手をかけていた由仁の手をがしりと掴む。
「ねー?」
声が笑ってない。
「う、うん……?」
「何、ちえるの後輩?」
突然のことに目を白黒させる由仁に、見知らぬ方々は無遠慮に声をかけてきた。
「あ、あー、いやその、私は、なんというか……ぐえっ」
返す言葉に困っていればぐいっと手を引かれて、何故か抱え込まれるようにされる。動けない。
「そーですよ、ちえるの大事なセンパイですよー。ま、こんなふうに私の事置いて一人でどっか行こうとする薄情者ですけどー」
「え!?や、そういうことじゃないよ!?」
「急に何かと思えば……ホントに自由だねアンタ」
「はいはい分かった分かった。それじゃあね、ちえる。センパイさんもどーも」
そんなことを言いながら、彼女たちはさっさと帰っていく。が、今やそんなことはどうでもよかった。
後に残された由仁は、さよならを言ったっきり黙った後輩の挙動が気になりすぎて口が開けない。背中から感じる圧に冷や汗が出そうだ。
「……ちえるちゃん?あの、ちょっと、重」
「私の事、置いてこうとしましたよね?」
「……………………してない、けど」
「しーまーしーたーよーねー?」
「待っ、ちょっ、分かったしたよ!したけど、でも私なりの気遣いみたいな……!」
「ああもう全く、由仁先輩の気遣いはいつも若干ズレ気味と相場が決まってることをご存知ない?」
「どこから生まれた定説なの?」 
「そりゃあもちろんちえると黒江先輩の間ですケド」
「滅茶苦茶身内じゃないの……」
ぱ、と離されて開放される。ズレたショルダーバッグを直して向き直ると、やはりちえるは若干しかめっ面をしていた。不機嫌を隠そうとしてない。
「なんでですか」
「え?……や、別に」
「由仁先輩てば理由なく目の前に待ち合わせの相手がいるのにスルーしちゃう系女子なんですか?へー。普通に最低だなーって、ちえるなっちゃいますけど。いいんです?」
ザクザクザクザク容赦のない。言い逃れは無意味そうだ。
「いや、……楽しそうに話してたから、もう少し後でもいいかなぁと……思って」
「ハ?なに節穴チックなこと言ってるのこの子。あんなのただの愛想笑いと適当な相づちのスペシャルコンボおみまってただけのめちゃくちゃ空虚なソレですよ?何見てたんです?」
「ええ〜……」
あまりにあけすけな物言いに若干引いた。やれやれ、と肩を竦めたちえるは、小さい子にものを教えるように、いいですか?と口にする。
「ちえるは今日、由仁先輩と遊びに来たんです。ね?だったら分かりそうなものでしょ」
「ええと、それはまあ、うん、分かってるけど」
「……あ〜〜〜もう、分かってないなぁ!
由仁先輩以外!基本全部どーでもいいことだって言ってるんですよ!」
「うん……うん?嬉しいけど……」
まあそんな大袈裟なことは無いだろうと、由仁が首を傾げた。ちえるがどうしようも無いものを見る目を向けた。
「……こうも鈍感だと超めんどくさいってどういう作りしてるんだろこの先輩……開き直ってもアレだけど蓋しててもアレだな……」
「なんか今批判されてるよね。よく聞こえないけどニュアンスで分かるからね」
「ええまあ。こんなキュートな私と一緒で通常運転由仁ちゃんしてる先輩にドン引いてました」
「言われなき風評被害やめよう?」
「そこが可愛いんだから別に良くないです?やれやれ分かってないんですから〜。これだから素人は」
「えーそう?へへ……いや待ってほんとに褒めてる?ねぇ」
何かおかしくはないだろうか。ちえるはその追求にただただにっこり――どこか満足そうでもある――笑うと、さて、と手を打った。
「それじゃあ、どこ行きましょーか?うーんめちゃくちゃ楽しみ!ね、由仁先輩!」
「ちょっと?」
1時間!??!?!?なんそれ!?!?おしまいです   こんな   こんなのよく見てくれましたね  ヒーッ
カット
Latest / 62:17
カットモードOFF
11:11
ななし@86865f
散会!
61:50
ななし@86865f
たのしかったです ちぇるん
61:56
ななし@a23f7f
ゆにーん
チャットコメント
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
コネのなんか
初公開日: 2020年06月19日
最終更新日: 2020年06月19日
ブックマーク
スキ!
コメント
コネのなんか 即興
わぱれ、ゆるかき
きょむい〜ぬ
筋トレ
アヤカさんはミモザがこぼれるように咲く頃、動物園のペンギンの檻の前で懐かしいおもかげを見た話をしてく…
瀬をはやみ