睡眠導入催眠動画を上げていた男性配信者のシチュボを聴いてときめいてしまっていたら、次の日アルバイト先でその配信者と出会ってしまった不眠症リスナーの話
眠るとき「これがないと眠れない」「こうしないと眠れない」というものがある人は多いだろう。
決まった枕がないと眠れない、所謂枕が変わると眠れない人。赤ん坊の頃から一緒に寝ているぬいぐるみや抱き枕がないと眠れない人。お風呂に入らないと眠れない人。温かいものを飲まないと眠れない人。アロマやお香を焚かないと眠れない人。
眠る体勢も仰向けじゃないと眠れない人。逆にうつ伏せじゃないと眠れない人。実に様々な人がいる。
そんな人が眠るための条件。俺の場合、その条件は、眠るために必要なものは、とある人の「声」。
俺は、最近眠るときに必ずある動画配信者の「催眠動画」を聴いているのだ。
俺は――いつ頃からなのかは自分でもはっきりと覚えていないのだが――昔からうまく眠れない体質だった。調べてみたところ、「うまく眠れない状態」にも色々あるらしく、その中でも俺は、入眠がうまく出来ないタイプの人間だ。布団に入っても中々寝付くことが出来ず、何度も寝返りを打って、時計を見れば目覚ましが鳴る時間まで残り二時間なんてことはしょっちゅうあった。
しかし、毎日そうという訳ではなく、やはり疲れた日には気絶するように眠れるし、夜に眠れなくても、昼寝は出来ることもある。不眠症と呼ぶほど大げさなものではないだろう。そう決め込んで、精神科や心療内科のようなところに行くことも、ドラッグストアで売っている睡眠薬の類いを飲むこともなく、結局大学四年生の春を迎えるこの年まで、この体質とともに生きてきた。
そう、大学四年生。卒業論文と就職活動の板挟みになる大学四年生。俺は大学院を受けるつもりだから、就職活動は一旦置いてはいるのだが、代わりに大学院入試があり、院の先輩達から過去問を借り、それを卒業論文作成の合間に見る様な毎日を送っている。
遠いようで近い色んなことの締め切りや本番の日。それを考えると溜まっていく不安と、ストレス。
そんなマイナス感情の海に沈んだ結果、案の定、最近眠れない夜が増えてしまった。
しかも、以前はどうにかこうにかして眠ろうと布団の中に居続け、瞼を閉じてぼんやり何かを考えて時間を過ごしていたが、近頃はそういった「やること」があるためだろうか。眠るのを早々に諦めて、布団から出るとパソコンを立ち上げ、卒論を書くためにテキストファイルを開いたり、卒論で使う参考文献に目を通したり、院試の過去問を見たりして、気がつけば眠ることが出来ずに朝を迎える事が多くなってしまった。
「中山くん、最近隈がさらに濃くなったんじゃないかい?」
そんなことを、ゼミの教授から言われてしまう程だ。忙しいせいで「眠くならないのラッキー!」なんてことを思ってしまっていたが、それは大きな間違いだった。眠らないということはそれイコール休めていないということで、昼間に眠たくなることが多くなり、夕方のバイト中も何処かぼーっとしてミスをすることが増えてきた。流石に何日も連続で眠れないということはないのだが、それでも自分で「まずい」と思うほどには生活やら身体やらのリズムが乱れて来ていた。
これはいけない。そう思いながら、布団に入り――やはり眠ることが出来ずに――たまの息抜きを、と動画サイトを巡っているとき。俺はその人に出会った。
「じゅん」と書かれたその投稿者が上げていたのは深い紺色の背景に白い文字で「テスト投稿」書かれたサムネイルの動画。その動画のタイトルには「睡眠導入催眠音声」の文字が並んでいた。
「すいみん、どうにゅう……催眠?」
前半までは良いのだが、「催眠」の二文字が出てきた途端、疑心がポッと浮かんできたのを覚えている。
睡眠導入系の動画は今までに何回か視聴したことがあった。だがそれは、雨音や焚き火の音声などの自然音や、何とか神経に聴く何とか波のヒーリング音楽などだ。催眠術の「さ」の字もそこにはない。本当に、純粋に、聴いていて心地が良いとか、気持ちが良い音声達だ。そういった音声を聞くことでリラックスし、心を落ち着かせる事によって眠りを誘う、らしい。俺はこういった音声で眠り落ちて仕舞ったことがないからよくわからないのだが。
しかし、この動画は「催眠」とかいう、テレビなんかで見る限りではやらせ感しか漂わない、謎めいた胡散臭い術を持って聴く人を眠りへ導いていくらしい。一体どうやって。催眠術というと術士が「あなたはだんだん眠くなる」などと宣って五円玉の下がった糸を人の目の前でゆらゆらと揺らすようなイメージしかないのだが、五円玉が永遠と揺れる動画でも流れるのだろうか。
そんな半ば、冷やかしのような気持ちを抱え、興味本位で俺はその、視聴者数がまだ一桁台の動画のサムネイルをタップした。動画の再生画面が表示され、クルクルと円がその中心で回った後に、サムネイルに表示されていた画像と同じ画像がそこへ表示され、「あー、あー」と男性の声が流れ始めた。
「えっと、これで録音、されてますよね? えー、はじめまして。本日は、この動画を視聴してくださってありがとうございます。「じゅん」と申します」
えらく丁寧でたどたどしい声だった。落ち着いていて、低すぎず、高すぎない、とても聞き心地の良い声なのだが、先ほどの口ぶりや最初の発言を編集でカットすることもなくそのまま使っていることから察するに、彼はこの動画が初投稿動画なのだろう。緊張している様子で、正直その声を聴きながら「この人、大丈夫なのだろうか」と心配してしまうほどだった。
だが心配は無用であったようで、緊張がほぐれたのか彼の口調は次第に流暢に、穏やかになっていった。
簡単な自己紹介から始まり、自分が大学で心理学を専攻していること。その授業の一つで、心理療法としての催眠術について学んだこと。そして、最近大学内でとても眠そうにしている人を見て、そういう人に対して自分が何か出来ることはないだろうかと考え、学んだ知識を活かして、眠ることを手助けするような催眠誘導動画を作ってみようと思い立ち今に至ることを彼はゆっくりと語っていった。
彼の話を聞いていると、ふと、祖父母が住んでいる山奥の田舎の情景が瞼の裏に浮かんだ。祖父母の家の近くに流れている川のせせらぎを聴いているような、懐かしさと心地よさを感じる。そんなテンポで滔々と語る彼の言葉に、いつの間にか俺は聞き入ってしまっていた。
「催眠、と聞いたら怖いというイメージを持ってしまったり、身構えてしまったりしてしまうかも知れませんが、どうぞリラックスして、気楽に聞いてください。まだ初心者ではありますが、僕なりに頑張りますので」
画面の向こう側で彼がガッツポーズをしているような気がして微笑ましくて笑ってしまう。だが、
「唯、僕の声に身を任せてください」
その声にだけは思わず息を呑んでしまった。もぞもぞとした謎の感覚。それの正体を掴む前に、俺は「では、始めましょう」という彼の声にハッとして意識も思考もイヤフォンの向こう側に持って行かれてしまった。
「では、横になって、瞼を閉じて……まずは、リラックスをするために深呼吸をしましょう。僕の声に併せて呼吸してください。はい、では……鼻からゆっくり息を吸って……口からゆっくり吐いて……全部吐ききったら、はい、また吸って……吐いて……」
声に併せてゆっくり呼吸をする。彼が言うように腹式呼吸を意識して、呼吸を繰り返す。
眠りに入るための方法として、腹式呼吸を試した経験はあったのだが、そのときは呼吸を繰り返しているうちに――普段無意識に行っている行為を、意識的に行ってしまったからだろうか――呼吸の仕方さえ見失ってしまうような、「あれ、息の仕方って、これであってたっけ」とにわかにゾッとしてしまうような考えが頭に浮かび、息をしているのに息が止ってしまったかのような息苦しさを感じ、逆に眠れなくなってしまった。だから、意識して呼吸をする事にはある種の苦手意識を抱いていた。
しかし、彼の――「じゅん」の声に併せていると不思議と自然に呼吸が出来た。彼がずっと呼吸のテンポを声で示してくれているからだろうか。ある意味では「彼のペースに飲まれている」状態ではあるはずなのだが、全く息苦しさは感じず、寧ろ心地よささえ感じた。
声に導かれるままに何回か深呼吸を繰り返し、彼に言われるがままに、深呼吸から、いつも通りの呼吸へとテンポを戻す。リラックスしてきたからなのか、純粋に眠たくなってきたからなのか、少しだけ意識が微睡んで来た。
「リラックスしてきたところで、身体の力を抜くために暗示をかけていきますね」
ここにきて、やっと催眠らしい単語が出てきた。最初はそんなの微塵も抱いてなかったはずなのに、俺は謎の期待を抱き、耳から入ってくる言葉の通りに自分の両腕に意識を集中させ、呼吸を繰り返した。
「僕が指を鳴らすと、深く、深く呼吸をする度に、あなたの腕から次第に力が抜けていきます。3……2……1……」
パチン、と弾けるような音が響く。その音が鳴った後、じゅんは静かに「俺」に語りかけてきた。
「呼吸を繰り返してください。そうです。ゆっくり息を吸って、吐く度に……ゆっくり腕から力が抜けていって……じわりじわりと、腕が重くなっていきます……吐く息と一緒に、力も吐き出されていきます……どんどん筋肉が緩んで、重たくなっていく」
彼の言葉が耳から入り、身体を巡り、腕に染みこんでいく。腕を意識して、呼吸を繰り返し、彼の言葉を飲み込む度に、彼が言うとおりに腕の力が抜けていく。力が抜けると、次第に腕が痺れていき、次第に感覚がなくなっていく。指が一つも動かせなくなると、「次は脚に意識を移してください」と優しい声が囁いてきた。
そして、俺の身体は腕、脚、腹、背中、肩、首元と彼が示す部位から順番にどんどん麻痺していった。身体に力が入らない。完全な脱力状態に陥った俺の脳内には――恐らく、こういった状態になった場合に、真っ先に感じなければならない感情――「恐怖」の二文字はどこにもなく、毛頭なく、あるのはただ一つ。「気持ちが良い」という感覚だけだった。
雲の上に寝転がっているような。ふわふわと浮遊しているような心地が身体を包み込む。
「では、身体の力が抜けたところで……次は頭の力を抜いていきましょう。僕が指を鳴らすと、呼吸を繰り返す度にあなたの頭の中にある今日あった嫌なことや、不安が溶けていき、次第に意識も思考も蕩けていきます。3、2,1」
パチン。幾度目かもうわからない指の音が鳴らされる。それを合図に頭の中を意識して息をすると、焦らすように少し間を開けた後にじゅんが口を開いた。
「ゆっくり、深く、呼吸をする……その度に、頭がトロトロと、気持ちよくなっていきます。どんどん意識が微睡んで……段々と、僕の声しか意識できなくなっていく……段々と、頭がぼーっとして、心地よい感覚に包まれる……」
指が鳴らされるとゆっくりと頭が溶けていく。中身が蕩けてじわり、じわりと流れ出す。
考えることが出来なくなって、軽い、絶頂感にも似た快楽に抱きしめられてどうすることもできない、する気すらもはや湧いてこなくなった頃には、本当に彼の声しか意識できなくなっていた。意識すらも出来ていなかったかも知れない。その位に俺の意識は闇の底へ沈み、思考は粒子になって宙を舞ってしまっていた。それでも、彼の声は肉に、骨に心に染みこんでくる。
「……はい、これであなたは催眠状態に……入れて……入れていると思います。すみません、初心者だし、音声だけだと、本当にそういう状態に入っているかわからなくて。本当は、直接こういうことをしてあげたいんですけど」
今思い返せば心臓に悪くて仕方がない言葉だが、当時この音声を聞いていた俺はその言葉を全く気にせず――というかもう意識が朦朧としている状態であったため――唯ぼんやりと、動画の最初の様に少したどたどしくなった彼に「可愛いな」なんてことを思っていた。
「……じゃあ、仕上げに、眠たくなる暗示をかけていきますね。これから僕が一から順に数を数えます。すると、あなたの意識はどんどん遠くなっていって、次第に僕の声も遠くなっていって……そのまま眠りにつきます。では、数えますよ、」
「いーち」「にーい」とゆっくり、ゆっくり数が数えられていく。最初の方こそ聞き取れていたが、十を過ぎた頃からだろうか。段々、じゅんの声が遠くなる。それが何処か寂しくて、でも気持ちが良くて堪らなくて。何も出来ず、あらがえないまま、流れに飲まれ、流されるように、俺の意識はいつの間にか闇に落ち――意識が覚醒した時にはカーテンから柔らかな朝日が差し込んでいた。
「嘘だろ……」
そう言葉を出す口の端からは涎が垂れていて、頭も身体もすっきりとしていて……何が言いたいかというと、ここ数年の中で一番よく眠れたのだ。
今まで、枕を買えても、アロマを焚いても、温かい飲み物を飲んでも、読書をしてもうまく寝付けなかった俺が、催眠などという不可思議極まりないもので、しかも可愛い女の子ではなく――可愛くはあるのだが――男の声で眠りの中へと落とされてしまうなんて。
あまりに信じられなかったのだろう。俺は「まぐれかも知れない」と、その日の晩にも同じ動画を視聴した。結果は言わずもがなである。次の日の目覚めも最高で、俺は不敵な笑みを浮かべ、静かに「じゅん」のチャンネルを登録した。
その日から、俺の寝るときの日課は「じゅん」の動画を見ること――というより声を聞くこと――になった。幸運なことにも、じゅんは始めに上げた催眠動画以外にも週に一度位の頻度で、催眠を使ったもの以外の睡眠導入系の動画――俗に言うASMR系の動画や、文豪の小説や詩を読み上げる動画、さらには雑談やリアルタイムで催眠をかけるライブ配信などもアップロードするようになった。
彼のリスナーになってわかったことなのだが、俺は純粋に彼の声を聞くと落ち着くようで、例の催眠動画以外でも心地よく眠りにつける事が判明した。まあ、一番良く寝付けるのは催眠動画だから、大抵寝るときには例のあの動画を聞いているのだけれど。
という訳で、俺は彼の新作動画がアップロードされる度にその動画を視聴し、眠りにつき、目覚めては高評価ボタンを押し、たまにライブに遭遇できた時には小額ではあるけれど投げ銭をする。そして、ライブを試聴しながらまた眠りにつき、目ざまの良い朝を迎える――という生活を送るようになった。
彼の動画と出会い、二ヶ月と少しが経ち、少しずつ身体とメンタルと肌つやの調子が良くなってきた頃。その動画は上げられた。
「じゅ、じゅんさんの、シチュエーションボイス……だと?!」
画面に表示された通知を見て、スマートフォンを持つ手が思わず震える。相も変わらずサムネイルは単色の背景の上に文字が並んでいるだけのシンプルなものであったが、それでも動画タイトルとサムネイルの上に並ぶ「添い寝」の言葉のインパクトは凄まじいの一言では言い表せないものであった。
最初の頃こそチャンネル登録者数二桁だったじゅんだが、最近はリスナーも登録者も増えてきていた。しかも、動画やライブ配信のコメント欄から察するに、その大多数は女性だ。まあ、男の俺目線でも、彼の声は中々にイケている――イケボだとは思うし、女性リスナーが多いのも納得だ。
そして、そんな女性リスナーから常々リクエストされていたのが「シチュエーションボイス」。ようは、あるシチュエーションの下で、特定の誰かに向かって語りかけているような台詞を言い、演技をするような音声だ。
リクエストがある度、「僕、演技とか苦手で……」と断っていたじゅんだが、どうやら遂にシチュエーションボイスを解禁したらしい。何故に彼がシチュエーションボイスを撮ろうと思ったのかは不明だが、これは、一リスナーとして、聞かねばなるまい。
俺は動画タイトルに「女性向け」と書かれていることに関してはあまり気にしないままに、動画のサムネイルをタップした。
動画の再生画面が表示され、クルクルと円がその中心で回った後に、サムネイルに表示されていた画像と同じ画像がそこへ表示される。そして、静かに彼が語りかけ始めた。
「せーんぱい」
その一言目に思わず驚く。どうやら、今回彼は「後輩役」らしいが、実際のじゅんも、ライブで話を聞く限り俺より二つ年下――つまり後輩である。そのせいもあってか、まるで彼が設定したこのシチュエーションが、まるで俺のために用意されたのではないかと勘違いしてしまった。まあタイトルに「女性向け」と書いている時点で勘違いなのだが。
初手からドキドキさせられてしまっている俺をからかうように、じゅんはくすくすと笑い声を漏らした。
「急にベッドに入り込んじゃったからびっくりしちゃいました? すみません。でも、いいじゃないですか。恋人同士なんですから、一緒に寝ても」
「こ、こいっ、こい!?」
思わず叫び声を上げ、動画画面を見る。当然のことながら、そこに表示されているのはサムネイルと全く一切変わらない一枚画だったのだが、耳の中に飛び込み続ける音声はいつもと全くもって違うものだった。
いつもより彼の声は熱っぽくて、甘くて、官能的で。催眠音声を聞いているときとは違う意味で頭が溶けそうになる。
なるほど、「女性向け」とはそういうことか。これは、じゅんが「彼氏役」でリスナーが「彼女役」であることを想定して、それを前提として撮られている音声なのか。
そう気がついて、そう気がついたのだが、俺は何故か布団の中に潜り直し――何故か布団にもう一人眠れそうなくらいのスペースを空けて――目を閉じた。
「今日も眠れないんですか?」
彼の問いに心の中で返事をする。
「そうですか……眠れないと辛いですよね。特に先輩は、いつも頑張っているので……くたくたになるまで頑張っているので……ちゃんと休めていないの、心配です」
そんなに、俺は頑張っていないよ。ただ、普通のことを、普通にしているだけで……。
「そんなことないですよ。先輩は頑張ってます。いつも見てるからわかりますよ。もう少し、先輩は自分を甘やかしてあげてください。それとも――」
じゅんの吐息が鼓膜をぬるりと撫でた。
「僕が甘やかしてあげましょうか?」
ドクンと心臓が跳ねる音がした。
イヤフォンを耳に差し込んでいると、自分の鼓動が鮮明に聞こえてくる。催眠音声を聞きながら、深呼吸をしているときも、当然身体の中を血が巡り、心臓が脈打つ音は聞こえるのだが、それが酷く穏やかなものであったということを、今自分の耳で轟いている音を聞いて知った。
身体中がむずむずする。右手で枕にしがみつきながら、左手で自分の口を塞いで声を抑えながら、それでもイヤフォンを外すことも、動画の停止ボタンを押すことも出来ないのは、このまま聞いていたいと思うのは、何故なのだろうか。
「じゃあ、俺が頭撫でてあげます。遠慮しないでください。大丈夫、恥ずかしくないですって」
「ほら」という声と同時に実際に頭を撫でられているような音が聞こえる。その音を聞いて、見ず知らずの彼に頭を撫でられていると想像するだけで、なんだか幸せな気分に浸され、以前鼓動は早いけれど、いつも彼の声を聞いているときのように頭は何処かぼんやりとしてきた。
頭を撫でられるなんて、何年ぶりだろうか。いや、実際に撫でられている訳では無いと言うことはわかっているのだけれど。それでも、普段の生活で頭を撫でられることなどないし、そもそも俺は平均男性の身長より頭一つほどカラがでかいから撫でられる訳がないし。
そうだ、頭を撫でられるなんて、あの時以来で――。
「ふふ、先輩の髪の毛気持ちいい……どうしました。顔真っ赤にしちゃって。可愛い」
少し掠れた声で囁かれた「可愛い」という言葉。その言葉が電気のように背骨に響いて来る。
「やばい」と頭の中では思っているのだが、「まずい」と何かが警鐘を鳴らしているのはわかるのだが、その危険に対する恐怖よりも身体中を包み込む幸福感と快楽が圧倒的に勝り、俺の身体を拘束し、締め付け続ける。
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紫呉
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紫呉
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動画配信者とリスナーの創作BLもの
初公開日: 2020年05月31日
最終更新日: 2020年06月13日
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睡眠導入催眠動画を上げていた男性配信者のシチュボを聴いてときめいてしまっていたら、次の日アルバイト先でその配信者と出会ってしまった不眠症リスナーの話です
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紫呉
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