【プロローグ】
とある休日。
買い出しから帰る途中、女の子が公園の隅で泣いているのが見えた。
僕は腕時計で時間を確認するとその公園に立ち寄った。
「どうしたの?」
すると女の子は顔を上げた。
可愛い三つ編みの女の子だった。
「だれもあそんでくれないの……」
「そっかぁ。じゃあ僕と遊ぶ?」
「いいの?」
女の子は嬉しそうに笑い、僕の腕を引っ張ってブランコがある方へと向かう。
女の子がブランコに座ったので背中を軽く押してあげる。
すると女の子は嬉しそうにきゃっきゃとブランコを漕ぎ出した。
滑り台にシーソーと色々な遊具で女の子と一緒に遊んだ。
一時間くらい経った頃、女の子はふと立ち止まって僕を見る。
僕は女の子の目線に合わせるようにしてしゃがみ込む。
「おにいちゃん、きょうはほんとうにありがとう!」
「うん、僕も君と一緒に遊べて楽しかったよ」
「おにいちゃん、またあえる?」
少し不安そうに女の子は眉根を下げた。
「きっと会えるよ」
僕は女の子の頭を撫でる。
女の子はとても嬉しそうに笑っていた。
オレンジ色の夕焼けに照らされた女の子はそっと僕の手を握る。
「おにいちゃん、またね」
女の子はキラキラと夕焼けに照らされ光ながら空に溶けるように消えていった。 
無事成仏出来たのかな。
僕はしばらくその場に立ち尽くしていたが、時間を確認するとその場を後にした。
―――これは僕の日常であり、自分の甘さを痛感する物語だ。
【chapter1】
僕は幽霊が見える。
それは物心ついた時からで、僕が幽霊を成仏させることが出来ると知ったのは小学生になってからだ。
丁度さっきみたいに公園にいた女の人と遊んだ後のこと。
遊び相手がいなくてベンチに座っていた女の人とお喋りをした。
話している最中にお母さんが迎えに来ると女の人は「私もあなたみたいな子供が欲しかった」と僕の手を触れながらそう言い残して消えていったのだ。
お母さんに聞いても女の人なんていなかったと言う。
おそらく子供が出来ずに亡くなった人なんだろうと、最近になって気付いた。
さっきの女の子はきっと誰かに遊んでもらいたかったんだろう。
最後は嬉しそうに消えていった。
相手は霊だとわかっていても何かできないかとつい話しかけてしまう。
これはきっと僕の悪い癖だ。
治さないとなぁ。
寮の入口に着くとかっちゃんが壁に寄りかかって立っていた。
「公園にいたヤツ……」
「見てたの?一緒に遊んであげたらありがとうって成仏していったよ」
「……そうかよ」
かっちゃんはそれだけ言うと不機嫌そうな顔をして部屋に戻って行った。
かっちゃんも霊が見える。
けれど、他人からしたら不気味に思われるのでお互い他の人には言っていない。
オールマイトにも言えない二人の秘密だった。
その日の夜。
部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ドアを開けるとそこには轟くんが立っていた。
「轟くんどうしたの?」
「いや、お前英語教えて欲しいって言ってたろ」
「ああ!ごめん、すっかり忘れてた」
よくよく見ると轟くんの手には英語の教科書などが握られている。
「入っていいよ」
轟くんを座らせると僕もその隣に座った。
ここ最近は毎日のようにお互いの部屋を行き来している。
なんだかんだで今一番一緒にいるのは轟くんかもしれない。
轟くんと一緒にいると安心するんだよね。
そして英文を読む姿もかっこいい。
僕がじっと見つめていると、視線に気付いた轟くんがこちらを見てふっと笑う。
「緑谷、見すぎだ」
「ごっごめんね!」
「別にいい」
轟くんは頬を緩めて顔を近づけてくる。
近づいてくる端正な顔立ちに僕はドギマギしながらもその場から動けないでいる。
吐息がかかるほど顔が近づくととっさにぎゅっと目をつむった。
「無防備だな」
轟くんのその言葉にそっと目を開けると、轟くんは楽しそうに僕の前髪に触れた。
からかわれたのだと気付くと一気に顔に熱が集まってくる。
「もう!轟くんってば!」
そう言いながら轟くんの胸元を力を入れずにポカポカと殴る。
「悪かったって」
「全然反省してないでしょ」
轟くんは僕の拳を受けながらも反省してなさそうな顔をしている。
「仕返しだ、えいっ」
と轟くんにデコピンをお見舞してやる。
痛そうに顔を歪ませた轟くんだったけど、二人して目を合わせて笑い合った。
ここ最近の癒しの時間だ。
そして笑顔の轟くんが見れるのもこの時間の僕だけの特権だ。
二人で笑いあっているとドアをノックする音が聞こえた。
誰だろうと首を傾げながらドアを開けるとそこにいたのは……。
「かっちゃん……」
かっちゃんは何も言わず、顎で部屋を出るようにうながす。
仕方ない。
「ごめん、轟くん。かっちゃんと話があるからちょっと出てくるね」
「おう」
「ごめんね、すぐ戻るから」
轟くんが頷くのを確認すると部屋を出た。
「外出んぞ」
かっちゃんはそれだけ言うと無言ですたすたと歩いていく。
僕は大人しくその後をついて行った。
外に出て数歩歩いたところでかっちゃんがぴたりと歩みを止める。
「お前、もう霊に話しかけるのやめろ」
かっちゃんは振り返らずにそう言った。
「……え?」
「テメェは気付いてねぇんだろうが、霊に話しかけた後のテメェの顔は真っ青だ」
「そ、そうかな?僕自身は至って元気だけど」
僕の言葉にかっちゃんはばっと振り返る。
「正義感だかなんだか知んねぇが未来のない霊に情けなんかかけてなんになる!」
「そんな風に言うなよっ。霊になる前は僕らと同じように生きてたんだぞ。出来る限りのことはしたいんだ!」
「だからテメェは甘ぇんだよ」
「もともとかっちゃんに理解してもらおうなんて思ってないよ……」
かっちゃんは深いため息をついて僕の後ろを指さした。
「なに?」
振り返っても何も無い。
かっちゃんは依然として指を指したまま口を開いた。
「おい、出てこい」
かっちゃんの呼びかけに答えるように後ろの茂みがガサガサと動き出した。
『見つかっちゃった』
茂みから出てきたのは一人の男の子だった。
カット
Latest / 98:09
カットモードOFF
81:14
月影うさぎ
どうでもいいけどこの話暗い帰り道歩きながら書くのちょっと怖いw
チャットコメント
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
轟出小説(タイトル未定)家に着くまで配信
初公開日: 2020年05月14日
最終更新日: 2020年05月15日
ブックマーク
スキ!
コメント
【轟出小説】霊が見えるでっくんと友達だと物足りないと感じているろきくんの話