ティーンズ小説の作家として賞を取り、ついに長編の出版が決まった。
担当さんも決まり、いよいよ書き出すことになったのだけど…。
(…こ、怖い)
担当さんとの打ち合わせはいつもこの感想から始まる。
私の担当さんに決まったのは、黒縁眼鏡の超絶イケメンで、端から見たら羨ましいの境地なんだろうけど…。
この超絶イケメン黒縁眼鏡さんは、とにかく言葉が荒い。的確な指摘だからぐうの音も出ないんだけど、言葉が荒い。今も仕上げた部分を読んでもらっているのだが、ずーっと眉間に深いシワが刻まれたままだ。
(あああー。また般若顔だぁ…)
今日は何言われる?
今日はまた溜息つかれる?
ドキドキは治まらず、彼が顔をあげるのをひたすら待っている。
「…全然違います」
あああー。またこの言葉から始まるのかー。
「素人ですか?違いますよね?」
『違いますねぇ…』
「それならば、この表現はなんです?何も伝わってこない…」
トントンと原稿の上で細くて長い指が音をたてる。
「ここも、ここも…ええっと、ここもですね…」
『…そんなに?!』
「そんなに、です」
はぁ、と担当さんは深いため息をつく。
「若い女の子が読む小説なんですよ?告白のシーンがなんでこんなに雑な表現なんですか?」
『雑…』
がっくりと肩を落とすと、担当さんは半咲いで口を開いた。
「まだ、落ち込む域ではないですよ」
ああー。今日もダメ出しの嵐だー。
私は両手にぐっと力を入れた。
とりあえずここまでにしまーす。
ありがとうございました。