「な、水羊羹食おうぜ!」
「……なんであんたと夢野先生が仲良くできているのか、謎すぎる」
 結局彼の愛嬌に勝るほどの辟易は私の中から生まれることもなくつい甘やかしてしまうのだから、この男の行動や態度に付随して対人の心を掌握するアビリティというのは天賦の才他ならない。夢野先生ですら丸め込んだのだ、私のような癒しに飢えた女性は案外このダメさにころっといってしまうだろう。
「お茶も欲しい」
「あっついの淹れてあげるから待ってて」
 せめてもの嫌がらせである。自分がまさか甲斐性なしの男に絆されることなんて、ちょっと仲良くなったぐらいでそんなこと、あり得ないと思いたかったのだ。実際、好みのタイプといえば夢野先生のような男性だ。出会ったばかりの私を街中でひっ捕まえてご飯を奢らせるような男とは、絶対に相容れないはずだと思っていたのに、気づけば帝統が何をしても仕方ないで済ませているのだから、この男が無自覚に撒き散らしているご愛嬌というのは恐ろしいものだ。
「幻太郎が、お前のこと褒めてた」
「えっ、な、なんて!?」
「食いつきがダンチじゃねぇかよ……」
 先日夢野先生から、根詰めすぎると次第に視野が狭まってしんどくなってくると聞いていたので、学生の頃にヨーロッパ各国とアジア圏数カ所に友人とバックパックをした時のアルバムを手渡したのだ。
 素人の写真だから綺麗なものばかりではないですがと添えれば、興味深そうにパラパラとページをめくりこの写真は等と説明を求めてきたので、いい気分転換になってくれるかもと自負はしていたが帝統に言うほど気に入ってくれていただなんて。先生の言葉を借りるなら、これがまさに僥倖ってやつだ。
「もう買い出しねぇの? 暇だから付き合うけど」
「あー、大体は揃ったんだよね。あとはカーテンなんだけど」
「カーテンって、普通真っ先に買うもんじゃねぇの?」
「気に入った色のサイズがなくて、窓大きいでしょこの家? 幅一五◯センチ必要で取り寄せになっちゃってさ」
 一人暮らしで必要かは悩んだが、カフェテーブルを購入して正解だった。椅子が一つしかないので帝統には折りたたみの踏み台に座ってもらって、二人で夢野先生からの引越し祝いを堪能して頬杖をついて、テレビを見る。その隣に本来あるはずのカーテンがないのだから、いまいち生活感がない気も否めないのは確かだ。一応前の家のカーテンは持ってきて、新しいカーテンが届くまではレースカーテンだけでもと取り付けてみたのだが、もちろん幅は足りないし裾もつんつるてんで、とても見れたものではない。
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