5月のイベントが8月に合体になったということで、ちょこちょこ書き出してみようかと思ってます。
ただ、脱稿したというのもあって、しばらく離れていたのでリハビリがてら、なんか書けたらなぁと。
I7のミツヤマ……っぽいものを書く、はず。
メモ:最初は三人称 三月視点 話は三人称
 今日もまた、彼の店には物好きなニンゲンがやってくる。
 もしかしたらニンゲンのフリをしたナニカかもしれない。だが、客の本性なんてものは商売には一切関係ないものだ。彼は客の正体なんぞには全く興味を抱いていなかった。
 対価をいただければ客が望んだものを渡す。ただそれだけの関係。
 それだけだが、それこそがこの店の店主である彼のプライドであった。
 彼の店は金と引き換えにして、客の望む体を与える店である。
 目が見えないものに見える目を。足のないものに駆け回ることができる足を。逃亡生活に疲れたからと盗んだ金をはたいて新しい顔を手に入れる犯罪者……なんてケースも存在する。
 物好きな常連は「今日はこの目の気分では無い」と青色の目から緑色の目にと、まるで洋服かアクセサリーのように身体のパーツを付け替えたりする。それも、一人ではなく一定数存在するのだ。
 少し”ズレた”場所に存在するこの店に辿り着くことができる客はそこまで多くはない。
 しかし、たまに居るのだ。店主のお眼鏡に適うような…店主曰く『面白いお客様』が。
 カランカランと、ドアのベルが来客を知らせる。
 店の奥のソファに腰をかけた男…店主は、ゆっくりと顔を上げた。
「……本当に、不気味なところだな」
 なんでこんなところに来てしまったかわからない。帰り道もわからない。よく方向音痴とからかわれるけど、いつもはどうにか帰れたりした。でも、今回ばかりはヤバいかもしれない。
 だって、何回歩いたところでこの不気味な店の前に辿り着いてしまうのだから。
 その店は、パッと見はアンティークショップのような感じだった。古めかしい、よくわからないもので満たされたショーケースは曇っていて。どう見ても繁盛しているような雰囲気じゃない。
 というか、単純にお化け屋敷みたいで怖い。
 しかしどう歩いたところでここに辿り着いてしまうのであれば、オレがやることは一つだろう。
 おそるおそるドアを開けると、カランカランとドアにつけられたベルが鳴った。
 店の奥から誰かがやってくる様子もない。もしかして空き家だったりするのか…?いや、でもな、それだったらそもそも鍵があいてないはずだし…。
「ひっ」
 ふと上を見上げると、ドクロの形をしたランプがオレを照らしていた。よくよく見てみると、店内は…なんというか、体の一部をかたどったようなものが多いような気がする。
 壁一面には洋画とかでよく見るような鹿の頭の剥製…ではなく、人の顔の剥製。それも一つじゃなく、いろいろな肌の色でいろいろな顔の形で。棚になっている部分には色とりどりの眼球がぷかぷか浮いたガラス瓶。髪の房が垂れ下がっているコーナーもある。
 顔の次に目を引いたのはデカいショーケースで、興味をそそられて覗き込んで…後悔した。
 その中には手やら足やら胴体やら…それが丸ごとだったり一部だけだったり、まるでマネキンがバラして展示されているような状態だった。割と綺麗に整頓はされているから、それがまた奇妙で不気味だ。
 まぁ、一言で言えば。趣味が悪い。
 今すぐにでも店を出たいところだけど、もしかしたら人もいるかもしれないし。
 オレは展示されている悪趣味なコレクションをできる限り目に入れないようにしながら奥へ進んだ。
 すると、カウンターらしきものが見えた。その奥にはソファがあり、そこに座っている人も。やたらとレトロだけど、どこか近代的な…物語でいう貴族が着ているような服を着ている。シルクハットかぶる人なんているんだな。室内なのに。
「あの、すみません」
「ああ、はい」
 不思議な色の目が印象的な人だった。眼鏡も服に合わせているのか、なんかそこらへんで買えなさそうな感じだ。
「ええと。どうかしましたか?もしかして、迷子でしょうか」
「子どもじゃねえよ!」
 いや、子どもじゃなくともこの状況はまさしく迷子なんだけれども。
「それは失礼。それで、本日はうちの店にどういったご用件で?」
 うちの店。やっぱり、店だったんだ。
 改めて悪趣味なものがこれでもかと詰め込まれた店内を見渡す。たぶん、全部売り物なんだよな。……もしかして、全部本物だったりして?いやいや、そんなはず…。
「私の店が何を扱っているのかも知らずに来られたのですか?」
「ぇ、あ…はい。いつの間にか、ここに…」
「まあ、そのようなヒトもたまに来られますね」
 オレのようなやつが来るなんて、そんなに迷いやすいところにあるのかここは。
「しっかりと説明すると長くなるんですけどね。しましょうか?」
 うっすらと口元に笑みを浮かべた店主の提案を断る。難しいことなんだろうし、言われてもわからない気がする。ただでさえワケのわからない状況なんだし。
「では簡単に。たまにあなたのようなヒトが来られます。本当にこの店が必要なヒトが」
 ゆっくりと立ち上がった店主はオレよりも背が高かった。くるくると色を変える目がオレを見る。
「この店は、欲しいと思ったパーツを買える店。例えば、動かない足を健康な足に…だとか。少し値は張りますが、交換費用やメンテナンス費、保証も込みでご案内しますので長い目で見ればお買い得かと。あとはそうですね…お得意様にアクセサリーのようにパーツを付け替える方もいらっしゃいますよ」
 この店主の言葉を信じるなら。店の中にあるものは全て売り物で、本物だ。それを体に付けたりする…店…?移植みたいなもんなのか?でもそれなら病院とかでするだろうし、そもそも目の前の男は医者には見えない。
「あなたは、なにを求めてこちらに?」
 そう聞かれても困る。だってオレはただ道に迷ってこの店に辿り着いただけなんだから。
「オレ、欲しいものなんてないですけど」
「……え?」
 店主の目が見開かれる。信じられないって顔をされたんだけど、なんで?ウィンドウショッピングなんて言葉があるくらいだし、買おうとも思ってないのに店を回ることだってあるだろ?
 困惑したような表情だった店主は、一呼吸置いてオレを見ると何故か納得したような顔をした。
「……ああ、なるほど」
 何がなるほどなんだろう。まさか今の一瞬で何かを見たワケでもないだろうし。
「では青年。あなたに何か買っていただくために…あなたの求めるモノを見極めるために。店主である私が、今までにここに来たお客様に関する面白い話をしましょう」
「…面白い話?」
「ええ。こちらへ」
 案内された場所にはテーブルとソファがあった。さっきまでは無かったような気がするんだけど。テーブルの上にはいつの間に用意したのか、ティーポットと軽食まである。
 面白い話っていうのに興味が湧いたのは否定できない。しかし早く帰りたいという気持ちに嘘は無い。なんとなくこの人話長そうだし。厄介な人に捕まったかもしれない。とりあえず、いくつか話を聞いて…その後に話を切り出そう。
「さて、何から話しましょう。あ、砂糖はいくつですか?」
「え、えっと…ふたつ…。というか、店は…?」
「あ。さっき閉めたので。大丈夫です」
「えっ」
 さっき閉めた…?オレをここに案内するまでずっと傍にいたのに?そうやって首を傾げていると、元々開店休業中みたいなものだから気にしなくて構わないと言われた。なんかちょっと圧力的なのを感じる笑みで。まあ、店主が言うんだったらたぶん大丈夫なんだろう。オレのせいじゃないし。
「そうですね。よくあるパターンから行きましょうか」
「よくあるパターンとかあるんだ…」
「あなたのようなタイプではなく、普通にご来店する方でも望むことが多いという意味ですね」
 あなたのようにふらりと現れるお客様は非常に珍しいんですからね、と微笑んだ店主が紅茶をなみなみ注いだカップを差し出した。
【こっから一章】
 とある青年が店に訪れた。
 見た目は店に迷い込んだ青年とそこまで変わらない、濡れ羽色の髪が綺麗な高校生くらいの青年だった。
 店主はその青年にも、何が望みかと問いかけた。
「友だちとずっと一緒にいられるような…ずっと病院にいなくてもいい、健康な体が欲しいんです」
 その望みに店主は思わず頭を抱えそうになった。『健康な体』というのは案外アバウトな注文なのだ。ヒトによって体のどこを替えれば健康になるかなんて変わってしまうのだから。体を全部そっくり健康なパーツに入れ替えることも可能だが、非常に高くつく。
 普段はプライバシーに配慮して客の事情を聞かない店主だが、望みの詳細を聞くことにした。
 その青年は、ほとんど病院で過ごしていた。呼吸器系の病気で、運動のしすぎはもちろんのこと、少しの埃でもすぐに発作が出てしまうほど。
 病気のせいで学校にもほとんど行くことができなかった彼にとって、唯一外の世界に触れられる瞬間。それが友人と話すことだった。友人は病気とは無縁の生活であったにも関わらず、毎日のように青年の元を訪れた。
 青年には好きなものがもう一つあった。それは歌。
 あまり歌いすぎるのは体によくないが、友人と一緒に歌う時間は間違いなく彼にとって一番幸福な時間であった。
「あの子の褒めてくれたこの声は、僕の唯一の自慢なんです」
 そう店主に言った青年の顔はとても誇らしげだった。
 しかし青年にとって、友人が毎日訪れてくれるのは嬉しくもあり、同時に申し訳なくもあった。病気で学校に行けない青年は、友人が自分に合わせて学校で過ごす時間を削っている…自分のようになってしまっていることを見過ごせなかった。
「ある日、僕はあの子に『僕がいない方がお前は幸せになれるのに』といってしまいました。あの子はショックを受けて、僕なんて知らないって言って病室を飛び出して…。酷いことを言ってしまったと気付いた僕はすぐに追いかけようとして、そのまま発作が出て…」
 朦朧とする意識の中、傷つけた友人の背中すら追えない自分の体を恨んだ青年。
 心にもない言葉で友人を傷つけたことを謝って、追いかけれるほどに元気だから自分のことは気にしないでと。自分の好きなように生きてほしいと。自分に合わせなくっていいんだと、伝えたかった。
 気付いた時には、店の前にいた。
 一通り身の上話を聞いた店主はもう少々病気について詳しく聞き、青年の体のどこが悪いのか大体あたりをつけた。
「そうですね。あなたの望む健康な体、ご用意はできます」
「じゃあ…」
 そう。用意はできる。問題はその代金である。
 この店はボランティアでやっているわけではない。それなりに報酬をもらわないとやっていけない。
 そう言って店主が差し出した契約書に書かれた金額を見て、青年は顔を青くした。病院にずっといて働いたことなんてない彼が払えるはずもない桁の数字が、金額欄に躍っていた。
「……払えません」
 長年の夢であった健康な体が手に入ると思って終始笑顔だった青年の顔が一転、暗く沈んだものに変わる。一回持ち上げられて落とされたのだから、ショックは相当なものだろう。
 しかしこの返答、反応は店主の想定内である。青年のように本当にこの店が必要なヒトはその望みに見合う報酬を持ち合わせていないことが多いのだ。
 店主は青年に問いかける。
「健康な体。その代わりに…あなたは、何を差し出しますか?」
 その望みを得るための対価を。その望みのために何を差し出せるのかを。
「僕にはお金はありません。でも、他にあげられるものだった、なんでもあげます。だから、僕に健康な体をください……!」
「その望み、叶えましょう」
 青年の切実な言葉を聞いた店主は笑って頷いた。
 パーツの交換は青年が思っていたよりもスムーズにあっさりと行われた。ヒトによってはこれだけかと聞かれることもあるが、できる限り交換を短時間で済ませるのは店主のこだわりであった。
 無事に健康な体、走り回れる体を手に入れた青年。
 交換が済んだことを伝えられた青年は、店主に頭を下げて店を飛び出した。
 まっすぐ、今までもそうしてきたかのように、でもどこか不格好に走って。
 これで友人に謝ることができる。これからは友人と一緒にどこへでもいけるのだと。
 友人はそれはそれは驚いた。今まで病院から出られないとまで言われていた青年が苦しそうな素振りも見せずに走ってくるのだから、驚かない方がおかしいだろう。
「どうしたの!?そんな、発作は…?」
 青年は友人の元に辿り着き、しばらく息を整えた。それでも今までのような発作の兆候は見受けられなくて。本当に、健康になったんだ。家族や医者にも言わなければならないが、まずは目の前の友人に言おう。まるで奇跡のようなことが起きたのだと。
 そう、言おうとした。
 しかし。
「…?どうしたの、口をパクパクさせて」
「……!!」
 青年本人にも届かない声がどうやって友人に届こうか。
 友人はすぐに青年を病院に連れ帰った。精密検査をしてもらうためである。
 結果は芳しくなかった。いや、悪いところがあったわけではない。体にはなんの異常もないのだ。今までの長かった闘病生活が嘘のように。青年の体は望み通り健康体になった。
 異常はない。それなのに、声だけは出ない。
 医者は首を捻り、心因的なものだろうと結論づける。下手をしたら一生を病院で過ごすのではなかろうかという持病が綺麗さっぱりなくなってしまったことについては、何も言えないまま。
 友人はその結果に納得せず、青年を連れて他の病院に向かった。青年にとっての初めての長時間の外出は病院のハシゴだった。
 結果は同じ。体にはなんの異常も無く、不思議なことに声だけ出ない。
 この結果を見た友人は、漠然と青年の変化は自分のせいではないかと思い始めた。
 自分のせいで青年は綺麗な声を失ってしまったのだ。そう嘆く友人に、青年はそっと寄り添った。
『お前と一緒にいろんなところに行けるようになって、嬉しいよ』
 そう書いたノートを見せて、青年は今以上の幸せは存在しないと言わんばかりに笑ったのだった。
「……と、まあ。こんなもんですね」
「その二人はその後どうなったの?」
 そう聞くと、店主はそんなに面白くないですけどと前置きをして教えてくれた。
 自分のせいで声を失った青年を友人は過保護なまでに守ったと。そして青年はそれに気付いていながらも、何も言わなかったと。
「どうです?彼らは幸せでしょうか」
「…………」
 なんというか…結果はハッピーエンドなのかもしれないけど、青年の声は出なくなったんだし…でも健康な体を手に入れたんだし…気持ち悪い終わり方だ。
 でも。
「……二人が幸せって思ってるなら、幸せなんじゃない?」
 オレが不幸だと言い切るのは簡単だが。第三者のオレがとやかく言うようなことじゃない、はずだ。でも、なんとも言えない気持ち悪さが、苦さが残る。今食べたチョコレートみたいな、舌に残るみたいな苦みが。
「まあ、そうですね」
 我ながら微妙な答えだったと思うんだけど、店主は気分を悪くしたみたいな様子も見せずに頷いた。自分でも同じように答えただろうと。
 彼らは幸せ、なんだと思う。青年の望みは叶って、ずっと一緒にいられるんだし。
「なんか、人魚姫みたい」
 陸を歩ける足を手に入れる代わりに綺麗な声を失った人魚姫。そう言うと、店主は言い得て妙だと口元を緩めた。
一章終わったし、ご飯食べるしそろそろ終わります~
見てくれた人ありがとう!!
書けたのはちゃんと清書して、支部か何かに上げます!!
お疲れ様です~
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↓こっから二日目↓
こんばんは。ふんわりミツヤマを匂わせるような、健全のオムニバス形式物(上のやつ)の続きを書いていこうかなと。
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「さて。次は何を話そうか」
 店主はそう言いながら、お代わりの紅茶を注いでいた。ドクロの形をした、お世辞にもいい趣味とは言えないランプから落ちてきた光が、紅茶色の水面に当たってキラキラしていた。
「ああ…もう一個。よくある話がありました」
 紅茶に砂糖を入れつつ、店主は微笑んだ。さっきの話のオチからして、気持ちのいい終わり方をしてくれるものじゃなさそうだけれども。
「よくある話といっても、作り話…フィクションにおいて、という意味ですね。まあ…そうですね。結末にリアリティがないと言いますか…別の話でも構いませんが」
 ……興味がないことも、ない。
「じゃあそれを、お願いします」
 まだここから出られなさそうだ。
あっ間違えたこれじゃないじゃん
いやこれでもいいか
「あのっ、俺の親友を助けてください!!」
 その青年は勢いよくドアを開け放ち、店主のいるカウンターまでずんずんと進んできた。その表情からはこの店内に飾られている商品に対する驚きはない。つまり、この店がどんなものであるかを知って、なにかしらのコネを使ってここに辿り着いたのだろう。正直、そんなニンゲンは掃いて捨てるほどいる(と言っても元々この店に来るような客は少ないのだが)。
 全く面白みもないと店主は溜息を吐きたくなったが、一応は客の前だと思いとどまった。この店の他に類を見ない特性を理解しているであろう目の前のお客人が、それだけのことで店を出て行くとは思えなかったが。
「親友ですか。ちなみに、ここのことはどちらで?」
「ち、父の友人がこちらでお世話になったと聞きまして」
 なるほどと頷きつつも、予想とほとんど違わぬ答えに店主はますます溜息を吐きたくなった。ツテで来たということは、彼は難なくこの店の正規の金額を支払うことができるのだろう。つまり、金持ちのお坊ちゃんである。よくよく見れば、彼が着ている服は走ってきたかのように乱れてはいるもののなかなかに上質なもので、青年の言葉をしっかりと裏付けていた。
「そうですか。ではこちらへどうぞ」
 退屈でつまらない客ではあるが、金蔓…客であることは間違いない。店主は少しだけ背筋を伸ばして、青年をソファへと案内する。彼は肘置きの部分が骨の意匠であることに気付いて、ようやく少しだけ眉を顰めるような動きをした。
「それで、ご依頼は」
「親友を助けてほしいんです」
 そうだけどそうじゃない。店主は先程とは別の意味で溜息を吐きたくなった。こんな短時間で何回も溜息を吐きたくなる客はそういないだろう。それはそれで面白いのかもしれないと店主は少しだけ前向きに考えることにしてみた。基本的に自分勝手なニンゲンの客が多いこの店で、友人を直してほしいという依頼自体は割と珍しいのだし、と。
 しかしこれだけではやはり、何をどうして商品を提供すればいいのか全くわからないのである。
 仕方ないので、店主は手段を変えてこちらが欲しい情報を一つ一つ丁寧に聞いていくことにしたが、これが結構骨の折れる作業だった。青年はその親友とやらのことが大好きらしく、ことあるごとに親友とのエピソードを挟もうとしてきた。それは仕事に関係がないことなのでと何重かのオブラートに包んでやんわりと指摘するが聞き入れてくれない。というより、そのオブラートのせいで全く伝わっていないような気さえして、店主はこの仕事が終わったら年代物のウィスキーを開けることを決めた。
くそどうでもいいこと書き始めてしまったな???
これ見てくれている人はいるのだろうか。
 ようやくの思いで店主が必要な情報を聞き出し終わる頃には、すでに紅茶のポットは空っぽになってしまっていた。しかし彼はまだ話したりないとばかりに口を開く。親友を助けてほしいと切羽詰まった顔で扉を開けてきたのが嘘のようだ。
 契約の際に必要な書類があったため、店主は再び話し始めた青年を止めることはない。もう止めることに体力を使いたくなかったのだ。
「彼は俺の大親友で、小さいときから一緒だったんです。俺の友人ってことであっちも由緒ある家柄らしいんだけど、よく覚えてない」
 そこは覚えておくべきだろうとツッコミを入れたかった店主だが、思いとどまる。ちゃんと話を聞いていると思われては、話に巻き込まれてしまうかもしれないからだ。ある程度のヒアリングは業務内容に入っているものの、世間話のようなものに応じるのは別。それであればもっと聞き上手な適任がいるはずで、更に言えばそれを生業としているようなニンゲンだっているはずだ。
「最初は喧嘩ばかりで。何もかも真逆な俺たちが仲良くなるまでには結構時間がかかりました。でもその真逆な部分が、パズルのピースみたいにぴったり合わさって。いつの間にか、二人でいるのがすごく心地よくなったんです」
 その話は先程も聞いた。そう思いつつ、店主は契約用の書類の用意を終える。青年もそれに気がついたのか、さっきまではどうやっても閉じることのなかった口がようやく閉じられた。さっさと仕事を進めれば彼は自然と黙るということを、終わりが近づいてようやく店主は悟った。
「で、その親友を救いたいと」
「はい。お願いします。お金なら、いくらでも払います」
 青年はぺこりと頭を下げた。テーブルに額がくっついてしまいそうだ。
「親友は、少し前から体調が悪そうで…それでも大丈夫だって言って病院に行かなかったんです。今病院に行っている暇はないんだって言って…。なんであのときに無理矢理にでも連れて行かなかったのか、ずっと悔しくって…」
 要するに、忙しさか何かで何かしらの自覚症状はあったのにも関わらず病院に行かず、病を悪化させたのだ。それだけであればよくある話だ。単純な風邪であればなんでもなかったのかもしれないが、今回で言えばそれがよくなかった。病魔が親友の体を内側から壊してしまっていたのだ。
 気付いた時にはもうすでに遅く、病の進行が止められないところにまで来てしまっていた。
そんな病気あるか???あるんだよきっと。こう、進行が早い病気なのかもしれない。
「どんな名医に話を聞いても駄目でした。どう頑張っても、進行を遅らせることと苦しまずにすむことくらいしかできないと言われて…そこで、父からこの店のことを聞いたんです」
待って、こんな展開にしたら想定していたオチに持って行けないぞ????(今更気付く)
いや…?いけるか…?あ、いけるわ
 話を振ったのは店主であったが、ここまでまた話し始めると思ってはいなかったので、すぐさま次の段階へ進むことにする。病気の詳細は聞いた。必要ないほどに詳しく。身長や体重を即答できるのは果たして親友なのかと問いたくなったが、親友と呼べるような相手がいない店主には判断しようがなかった。
 契約書に詳細を書き、どのパーツを交換するのかを決定する。そしてそれが間違いでないかを店主の特別な目で”視る”のだ。それで間違いがないと判断できれば、正式に契約を結んで施術に入る。ここで何かしらの不備が発生するとクレーム案件になってしまう。ここはいらなかったから返品したいと言われてもこちらも困る。面倒なことはとことん避けたい店主であったが、後の面倒を減らすためにこの行程を省くことはなかった。
 古めかしいデザインの眼鏡を少しだけ下にずらし、青年を視る。彼の頭の中は面白いくらいに親友のことでいっぱいで、本当に彼のことを想っているのだとわかった。しかし、店主が知りたいのはそんな青臭い友情ではない。
「……?店主さん?」
「ああ…」
 この展開を一体誰が予想できただろうか。また店主は溜息を吐きたくなった。
 ここまで用意をしたというのに、それが全て無駄になりそうだからだ。
「どうしました?」
「それが、ですね…少し困ったことが起こりまして…」
「え…?」
 青年の顔がサッと青くなる。店主の次の言葉を予想したのだろう。手が震えて、持っていたカップから紅茶が跳ねた。琥珀色の雫が青年の上等な服を濡らすが、誰もそれを気にすることはなかった。
「もう直す必要はないみたいですよ」
 がたりと音を立てて、青年が立ち上がる。彼の顔は青を通り越して真っ白だった。
「そう…ですか。ありがとうございました」
 すぐに店の中に溶けて消えてしまう弱々しい声は、先程までの青年とは全く違った。まるで自分は世界の全ての幸福を知っていると言わんばかりであったのに、今や見る影もない。
 青年はそのままふらふらと店を出て、真っ暗闇を歩き出した。あの調子では元の世界に戻ることは適わないかもしれない。しかし、無駄話だけしていったあの青年は最早客ではない。客でもない他人を安全に帰宅させることは店主の仕事ではなかった。
「……最後まで、話をちゃんと聞いていただけませんでしたね」
 店主はすっかり冷めてしまった自分の分の紅茶を一気に飲み干した。
少々席外します
戻りました
これ、環と壮五の話なんですけど、どっちをどっちにしようか悩み中。
 それからしばらく経ったある日。店で初めてメンテナンスをされる一人の青年の姿があった。
「どうですか。お体の調子は」
「めちゃくちゃ元気です。ありがとうございました」
「いえいえ。こちらも貰うものはしっかりいただきましたから。ご満足いただけたなら幸いです」
 店主の声は軽やかだ。この青年はいつだったかの彼と同じくらいの歳であったが、店主の言うことにすぐに素直に応じてくれる。癒やしというのはこういうことを言うのだろうかと、全くもって仕事に関係ない方向へと思考が向いたその時。服を着終えた青年が口を開いた。
「でも…」
「どうしました?何か、問題でも?」
「いや、体のことじゃないんだけど…」
「構いませんよ」
 彼からはすでに代金をいただいている。何か悩みを聞くくらいであればアフターサービスの一環だ。あくまで、悩みを聞くだけで解決はしないのだが。
「俺には親友がいるんです。その彼が、行方不明になってしまって…」
「…そうだったんですね」
 店主は彼が以前訪ねてきたあの青年であることを知っていた。目の前の青年を視るまでもなく。
 何故なら。
 あの青年が訪ねてくるほんの少し前、友人はこの店に訪れていたのだから。
 店主はもう直す必要はないと言った。それはもうすでに店で悪いところを全て取り替えていたからだ。それをあの青年は友人が死んでしまったから治すことができないと勘違いしたのだった。
 おそらく、彼は帰ることができなかったのだろう。ズレた場所に存在するここから帰るには、明確な意思を持って進まなければいけない。帰りたいという強い意志と帰る場所が必要なのだ。あんな状態で店を出たのだ、どこか別の場所、別の世界に出てしまったか、あるいは未だに闇の中を彷徨っているのか。
 店主はそれを口に出すことはない。目の前の青年は親友がこの店に訪れていたことを知らないのだ。わざわざ自分から仕事を増やすこともない。一銭にもならないような雑用を。
「もし、この店に来たら伝えてください。俺はいつまでも待ってるからって」
「はい。お伝えしますね」
 そんな日は永遠に来ないでしょうけど。喉元まで出かかった言葉を、砂糖のたっぷり入った紅茶で流し込んだ。
「その人って結局……」
「来てないですね。来るかもしれませんし、来ないかもしれません」
 そんな心底どうでもいいという風に話す店主は、たぶん店の外に出てその青年の探してやることなんて一生ないんだろう。もしまたこの店に来たらその言葉を伝えてやろうとしか思ってないはずだ。店主の言葉を借りるなら、言伝はアフターサービスのうちに入るはずだし。
 というか、最後の方に結構重要な話があったような気がする。オレが帰るための手がかり。
「あの、帰るには意思と場所が必要って…」
「はい。この空間には別に決まった道なんて存在していないので。帰りたいと思う気持ちと明確な帰る場所があればちゃんと帰ることができるんですよ」
「じゃあオレは…」
 帰れる。そう言おうとして、言えなかった。
 オレにはどっちもなかった。本気で帰ろうという気持ちも、パッと思いつくような帰るべき場所も。
「…気付きました?青年。あなたには、どちらもないことが」
「……はい」
 じゃあ、オレはこれからどうすればいい?
 縋るように店主を見るが、彼は肩をすくめるだけだった。
「それではあなたが落ち着くために。もう一つ、お話しましょう」
 
【ここまで二章】
終わった!!(終わってない)
とりあえず、本編は三章で終わる……はず!!
SWDもあるんで、一章のあたりを推敲して支部のあたりにでもアップしますかねぇ…
本日はここで終わろうと思います。
ご視聴ありがとうございました~ノシ
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今日は三章から書いていこうと思います。
一応、メインは三章で終了の予定。
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【ここから三章】
「ここは、一体……」
 黄蘗色の髪をした長身の青年は、悪趣味な店内を見回してそう零した。その振る舞いからして、この店が何を売っているのかはわかっていないようだった。
 店主はいつもと同じように店の説明をして、ソファに案内しようとした。青年の望みをゆっくりと聞き出そうとしたのだ。
 しかし店の説明を聞いた青年はサッと顔を青くして、店主の肩を掴んだ。
「あ、あのっ!僕はどうなっても構いません!兄さんを…兄を、助けてください…!」
 それだけ言われたところで助けようもないと、どうにかなだめすかして店主は青年をソファに座らせた。紅茶も勧めようとしたが、流石に断られてしまった。客が飲まないのに自分だけ飲むのもおかしな話だ。この仕事の間、ある程度の口の渇きは我慢しなければならないなと店主は自分もソファに座った。
「で、お兄さん…でしたか?」
「はい…今こうしている間にも、もしかしたら…」
「事情を、お聞かせ願えますか?」
 急かしたいのはわかる。しかし話を聞かなければ助けられるものも助けられなくなってしまう。店主がそう伝えれば、多少早口ながらも詳細を話し始める。店主はその話を契約に必要な書類を出しながら聞いた。
 青年とその兄は 
ちょっとここのエピソード変えたいからひとまず保留
兄エピソード強めにしよう
「兄さんがいないなんて、僕はどう生きていけばいいかわかりません。だから、僕のことはどうしていただいても構いません。兄さんを、助けてください」
「……なるほど」
 これは久々に大仕事だ。血液程度ならどうにでもなるが、臓器のほとんどが駄目で四肢も半分以上が…と考えると、体のほとんど全てを取り替えると言っても過言ではない。不可能ではないが、単純に踏まねばならない手順が増えるので施術に時間がかかるのだ。
「わかりました。お兄さんの体、完全に直してみせましょう」
「っ…!ありがとうございます…!」
「では、お代なんですが…」
 契約書にサラサラと数字を記入する店主。その数字を見て、青年の口の端がひくりと動いた。自分のことはどうしてもいいと言ったものの、それで本当に足りるのかわからぬ程の金額だった。
「僕は…どうすれば…」
あ、やっべ。支部にアップしたやつ、絶対いれないと行けないって思ってた部分付け足すの忘れてた。どうしようかな。
「大丈夫ですよ。お金ではありませんが、あなたはしっかりと支払えますから」
「本当ですか…!よかった…」
なんか、一章二章が強すぎた気がする……
 溜息を吐いた青年の体がソファに深く沈み込む。だいぶ気を張っていたらしい。兄が死んでしまいそうな状況で、自分は訳のわからない場所に放り出され、ようやく兄が助かる糸口が見つかったのだから当たり前である。
 手で覆われた美しい顔から、一筋、何かがこぼれ落ちた気がしたが、店主は何も言わなかった。
「では詳しい話を…」
「いえ。大丈夫です。この契約書にサインをすれば、兄さんは助かるんですよね?」
「……ええ」
 店主がそう言うや否や、青年は店主が止める間もなく万年筆を握って、契約書にサインを書き終える。そのサインを満足そうに眺めた青年が、ふと契約内容の部分に目を落とした。
「……え」
 そこで青年は糸が切れたように崩れ落ちた。目を見開いた驚愕の表情もそのまま。まるで、青年だけ時が止まってしまったかのように。
「…ふふ」
 ピクリとも動かない青年の体の下敷きになった契約書を、店主は丁寧に引き抜いた。
「駄目ですよ。契約書は最後まで読まないと」
 途中で投げ出されたマリオネットのようになっている青年をそのままに、店主はソファから立ち上がる。
「…ああ、紅茶をお出ししなくてよかった」
 もしティーカップがあったら、倒れた拍子に契約書に零してしまったかもしれないし”商品”に傷をつけてしまったかもしれなかった。そういう意味では、本当に気の利く客であった。まあ、今はもうすでに商品になっているが。
「この件が終わったら、すぐにお店に並べてあげますから。もう少し、待っていてくださいね」
 その後、契約通り青年の兄は一命を取り留めた。すんでのところで持ち直した…のではなく、ある日目覚めると、元通りの健康な体になっていたのだ。集中治療室で24時間ずっと管理されていたにも関わらず、なんの前触れも無しにである。
 魔法だ、奇跡だと騒がれた青年の兄の胸は、何故かぽっかりと穴が空いたような心地だった。
 頭の先から足の先まで、全身を調べ尽くされた彼は1週間後、ようやく退院することになった。どこかから漏れ出した情報のせいで、ここ数日病院前がごった返していたが、こっそりと裏口から出たため、特に厄介なことにはならなかった。
 何故か家族総出で迎えに来たのを見て、彼は困ったように笑った。
「父さんも母さんも。なんでわざわざ家族全員で迎えに来てんだよ」
 父と母にそれだけのことだったのだと怒られるが、彼にはよくわからなかった。彼としては気を失って、気がついたら病院のベッドで寝ていたくらいの認識だからだ。むしろその後の体の隅々まで調べられたことが無ければ、今までにないくらいに健康体だっただろう。
 とにかく無事でよかったと、彼らは車の中、家族3人で笑い合ったのだった。
「……えっと、つまり。兄を助けようとこの店に来た弟は、存在ごといなくなった?」
「ご名答です。花丸を差し上げましょう」
 そんなものもらっても嬉しくはないけれど。何故か店主がやたら上機嫌な気がする。いや、最初から今までずっとうっすら笑ってる感じだったけど。なんだろう、雰囲気みたいなものが。
「どうです?いつも傍に居たはずの存在を、思い出すこともできなくなってしまうのは。血を分けた兄弟のことを忘れてしまうなんて」
「そう、言われてもなぁ…」
 質問の意図を図りかねる。大切な存在がいなくなるというのは、しんどいことなのかもしれないけど。その質問にはちゃんと答えることはできない。
「だってオレ、弟なんていないから」
「……ああ、そうでしたね。それは失礼致しました」
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三章はひとまずこんな感じで。
間がまだ書けてないからもうちょっと考える。
これであとはエピローグ書けば、アイナナ編は終わりだ~
ドラマの方とかずっと放置している別作品にも手をつけていけたらいいな!
今日はこれで終わります~
ご視聴ありがとうございました!!
カット
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カットモードOFF
02:57
うつき
こそりこそり
11:41
じるこにあ
うしゃがいる!?
21:29
うつき
????今少し目を離してた間にすでに冒頭が出来てる。。。。だと。。。
22:00
じるこにあ
元々、書いてたやつの手直ししてるだけだからねw
22:26
うつき
なるほどなるほど!がんばえーーー!
59:24
じるこにあ
これ、何人見てるかわかんないな
60:25
うつき
私はいるよー
62:29
じるこにあ
うしゃー
63:08
うつき
コメントの反映結構遅いかんじかな?wいまやっとじるしゃの返事見えたw
63:49
じるこにあ
コメントに返信していくモードじゃないからなぁ…w
64:35
うつき
確かにwwwふぁいおーー!
75:29
じるこにあ
三人称書き辛くてしんどい
164:55
じるこにあ
書きづらい…
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のぺのげの続き書きます
初公開日: 2020年05月01日
最終更新日: 2020年05月03日
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コメント
No pain, No gain.(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12840290)の続きを書いていきたい。
三人称視点苦手で語尾が同じの連続するかもしれないけど、温かい目で見守ってください(支部に上げるときや本にするときはちゃんと直します)
結構救いのない話を書きますが、一応メンバー全員が出るドラマ企画という体で書いてます。そこらへんの舞台裏の話もおいおいやっていけたら。
前回の続きにそのまま書いていきますが、ここから加筆修正するので上の文章は支部のやつとちょっと違ったりします。