福本が語ったのは、概ねそのようなことであった。
正直――どう反応して良いのか、分からなかった。揶揄されたと怒るべきか、それとも貴様のそれはただの幻想であると一蹴してやるのが良いのか。そのどれでもない気がした。
適切な例えをするならば、愚図る子供を慰める行為にも似ている。さながら今の福本は、あれがほしいこれがほしい、と愚図る子供に近しい。そんな子供に、自身は何を与えてやれるのだろうか。与えてやる義理もないのだが、放っておくのもなんとなく癪だ。こういう甘いところが、佐久間さんをして『近い』と言わしめるのだろうか。己としてはそういったところが他の機関員と隔絶されている気がしてどうにも座りが悪いのだが、福本はそれを渇望しているらしかった。可哀想だと、思った。人間としても化け物としても完璧を目指す。その志自体が、既に人間らしくないのに。人間は完璧でないが故に人間なのだということを、彼は知っているのだろうか。
だがしかし、これほどまでに感情を吐露する福本を俺は未だかつて見た事がなかった。彼の言葉を借りるならば、今の福本はこれまでで一番「人間らしく」見えた。
「なんと、言っていいか……わからないが」
「……」
「人間だ化け物だなんだと、貴様の内面については俺は何も言うつもりはない」
「……ああ、」
曖昧な相槌が返ってくる。その目は伏せられていて、俺の姿を映してはいない。この男は……何かを期待しているのか、それともしていないのか。望まれている答えが果たして何なのか、よくわからない。だから、率直な意見を述べるより仕方なかった。とにかく何か答えて、この場を切り抜けたかった。好ましい空気とは言えないこの雰囲気をどうするべきか。
「まあ……、そうだな。確かに貴様は、機関員の中でも一等何を考えているか分からないところがある。だが今、俺の前で話している時は……その、少し人間らしいと思ったがな」
福本が、やっと此方を向いた。少し驚いたような、縋るような。そんな表情。
「人間らしさは、時には甘さにも通ずるところがある。俺自身は、少しでもそう思われたことが正直癪ではある」
「……ああ」
「俺たちは、お互い無いものねだりをしているのかもしれないな」