この関係をなんと言えばいいのだろう。
自宅に訪れたら招き入れる間柄ではあるけれど、警報がいくつも出るほどの土砂降りの中に出ていこうとする相手を素直に引き留める言葉は上手く見つからない。
あれこれ気のむくままに滞在して気がすんだら出ていく相手だ。いつもそう、であるはずなのに。それでも流石に状況が状況ということもあって玄関に向かう相手へ声をかけずにはいられなかったのは彼の優しい心根のせいだろう。
「ねえ、帰るの」
こんな雨なのに。
言外にありありと含まれたニュアンスは伝わらないわけがない。
室内に居ても窓を叩く雨の激しさに、傘がどれだけ役に立ちそうかは察しがつく。
わざわざ好き好んで外に出て土砂降りの雨で身体を冷やしてしまうなんて、アスリートとしては好ましくないことだ。
「あ?」
人に口だしをされるのをあまり好まない相手は、案の定というか、軽く不機嫌そうな音で反応をよこしてみせた。きっとあの細い眉を片方だけ上げ、何を言っているんだと言わんばかりの顔をしているのだろう。キッチンにいる日和には玄関先の楓の顔など見えもしないが、多分そうだと想像はつく。
「コーヒー淹れるよ」
やかんの口からしゅんしゅんと上がりはじめた白い湯気を眺めながら、楓に向けて静かに誘いを投げかける。
だってどうせ雨は朝まで降るというし、明日向かう先のプールはお互い同じなのだ。コーヒー一杯を二杯に増やしたところで大して変わりはしない。
少しの間、窓を叩く激しい雨音と湯が沸く音だけが響く。
きしり、とフローリングが軋む音がして、玄関からキッチンへと足音がゆっくりと近づいてくる。
「明日の朝の分もコーヒーつくなら居てやるよ」
横を見ると、いつものように少し皮肉げに口角を吊り上げた笑みを浮かべる楓が居た。その目に薄く楽し気な色が浮かんでいる。
外の雨はまだ激しく、窓に壁に打ちつける音が絶え間なく響いてうるさいくらいだ。それでもその音をどこか心地良いと感じながら日和はコンロの火を消した。
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お家かえひよ
初公開日: 2020年04月29日
最終更新日: 2020年04月29日
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お家デートもどきのかえひよ。
場面のふわっとした始まりと終わりは浮かんでる状態でスタートします。
リハビリと集中力テストと配信お試しなど兼用。
セベクポリスメン
twst夢。詳しいことはチャンネルの説明欄を見てね。あと「一人なんだから単数形だろ」っていうマジレス…
芦葉
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