「ラギーのとこの寮長ってお前には優しいの?」
 ある日、なんでもないある日、なんでもない雑談をしてたクラスメートになんの脈絡もなく振られた話題だった。
「そんなことあるわけないッス。横暴だし、人遣い荒いし」
「じゃあなんであんな世話焼いてんの?」
 きっと純粋な疑問だったんだろう。オレだって、例えばオレが別の寮だったとして、サバナクローの寮長がレオナさんで、そのレオナさんの世話ばっかしてるやつがいたら『物好きだなぁ』と思うに違いない。生まれのせいか、育ちのせいか、そういう周囲からの視線には割と敏感なほうだった。
「うーん、なんでッスかねぇ」
 どうせ相手だってそこまで深く考えてないなんてことない話題のつもりだろうし適当に流しておこう、そう考えて中身のない返事をすれば、予想外にも納得がいかないような煮え切らないような表情が返ってくる。なにが言いたいのか相手の真意が掴めず首を傾げれば、一瞬躊躇ってから言いにくそうに口を開いた。
「いや……お前とサバナクローの寮長、なんか距離近いなと思って……」
「は?」
 は?
 いや……は????????????
 その日の授業を終えて、部活をして、寮に戻って、レオナさんの世話をして、自分の部屋に戻ってくるまでの間ずっと脳内でクラスメートの言葉が蘇って、その度に混乱を繰り返している。
 いや、だってわからないし。距離が近い、オレとレオナさんが?そんなの考えたこともなかった。今まで言われたことなかったし。レオナさんの世話を焼くのが当たり前になりすぎていたオレにとって、特別仲が良くもなければ悪くもないクラスメートの一言は結構な衝撃だった。
「おい、ラギー!」
「わっ!びっくりした」
「何ボーッとしてやがる」
 苛立った声にはっとして顔を上げれば、ベッドの上に寝転がっている不機嫌そうな顔を隠しもしないレオナさんと目が合う。きょろりと手元を見れば畳み掛けた洗濯物を握ったまま。あぁ、またオレ……。
「な、なんスか?小腹でも減りました?」
「…………」
「えぇっ?呼んどいて無視ッスか!?」
 も~~、なんて慌てていつも通りを取り繕う。不審そうなレオナさんの視線がなんとも居た堪れない。ここで『何かあったのか』なんて聞いてくるような人じゃなくて良かった、なんて内心で胸を撫で下ろしながら止まっていた手を動かしはじめる。
 直接聞いてくるような人じゃないけど、レオナさんが何か言いたそうにしてるのはめちゃくちゃ伝わってくる。そのくらい、ここ数日間ひとりでギクシャクしている自覚はあった。
 なんでもないようなただの雑談、なんでもないクラスメートの一言を気にするなんて、オレらしくないこともわかってる。育ちをバカにされたわけでもなければ差別的な暴言を吐かれたわけでもない、ただの疑問。『そうッスか?』って軽く笑ってそいつの気のせいにしちゃえばよかったんだ。
 でもそれができないのが、なんでなのか、なんで引っかかってるのか自分でもわかんねーから調子が狂う。
「あれ、レオナさん、明日錬金術の授業じゃないッスか?」
「あぁ?」
「白衣が見当たらないんスけど。またどっか適当に……」
「ラギー」
 きょろきょろと部屋を見渡すオレの視界の端にレオナさんの足が入り込む。わざわざベッドを下りてくるなんて珍しい。ラグの上に座ったオレを見下ろすレオナさんの顔はやっぱり不機嫌そうだった。
「……それ、お前もう畳んでる」
「え」
 くいと顎で示された先を見れば積み重ねた服の一番下に探していた白衣があった。畳んだことすら覚えてなかったことにびっくりして、いつもは回りすぎるくらいの口がうまく回らない。レオナさんのほうを見ることもできずにぱちぱちと瞬いていると上から呆れたような溜め息が落ちてきた。
「ラギー、疲れてんのか?」
「そ、そんなことないッスよ!うっかりしてただけで……わっ!?」
 腕を急に掴まれて引っ張られるままよたよたと立ち上がれば、手に持っていた運動着がふわりと宙に浮く。空中で綺麗に畳まれたそれが積み重ねた服の山の一番上に移動するのを呆然と見つめることしかできないでいると、ついとこっちに視線が飛んできた。
「今日はもう部屋戻れ」
「えっ、でも」
「はぁ……お前がそんなだとこっちまで調子狂うぜ……。いいから戻ってさっさと寝ろ」
 気だるげに髪を掻き上げたレオナさんの言葉に下唇を噛む。立たされる時に掴まれた腕はそのままで、ちらりと見ればぱっと離されてしまった。それが少しだけ名残惜しく感じて、いやちょっと待てと思い直す。
「わかりました。……じゃあ、おやすみなさい」
「…………」
「はぁ~~~」
 シャワーを浴びて、濡れたタオルを引っ掛けたままベッドに倒れ込む。あの日からずっと同じことを考えてる。引っ張りすぎだろって自分でも突っ込みたくなるほどに。
 ずっと無意識のうちに目を瞑ろうとしてたこと、そんなことあるはずないと思ってたこと。自分でも気付かなかった可能性を見ようとしてる気がする。上手く言えないけど。
 つまりどういうことかって、オレはレオナさんと同郷で、小さい頃からレオナさんを知ってた。そりゃそうだ、なんてったってあの人は夕焼けの草原の第二王子。生まれた瞬間からオレとは何もかもが違う人。オレがどう足掻こうが、天地がひっくり返ろうがその事実は変わらない。羨ましくて、恨めしい。レオナさんが嘆いていることも正直オレにとっては贅沢なことだと思った。
 権力者は嫌いだ。レオナさんはオレの嫌いを形にしたような人だった。でも、だからこそ最大限利用してやろうと思って近付いた。オレがのし上がるために。オレはずるくて小賢しくて、そして耐えることに慣れている。得があるなら嫌いな奴にだって頭を下げるしいくらでも利用されてやる。
 そんな風に思ってた。思ってたはずだ。今だってレオナさんに腹を立てる時もあるし、言い合いになることだってある。
 『じゃあなんであんな世話焼いてんの?』
 のし上がるため。上手いこと胡麻擂って、それで甘い汁が吸えたら儲けもん。昔のオレだったら迷うことなくそう答えた。ずっとそうだったはずなのに、今はそれだけじゃない気がする。いや、そう、それだけじゃないって、今のオレが思ってんのが信じられないから無意味に考え続けてる。
 遠くの、薄暗いゴミ溜めから見ていたあの頃とは違うから。ただの能天気な権力者なんかじゃないってちょっとだけ知ってる。横暴で、我儘で、傲慢で、ぐうたらで、酷いこと言うし、短気だし、理不尽だけど、それだけじゃないってことをオレは知ってる。
「オレ、いつの間に……」
 気付いてなかったのに、気付いてしまった。世話を焼く理由が胡麻を擂るためなんかじゃなくなってたことにも、レオナさんの隣にいるのを心地よく感じてることにも、レオナさんといるとどうしてか楽しくて、どうしてか安心して、どうしてか満たされていることにも。
 あーあ、気付きたくなかったなぁ。そのせいでここ数日、レオナさんに名前を呼ばれて嬉しくなってるって自覚したり、もしかしてレオナさんオレにはちょっとだけ優しい?とか思ったりして。いい加減にしろよ、ほんと。レオナさんはそんなつもりないだろうし、この間までのオレと同じで無意識なんだろうし。そりゃ、そうだよな。言われるまで気付かないなんて間抜けにもほどがある。
「あーあ……」
 壁に掛けてある時計を見れば、普段ならとっくに寝てる時間だった。明日も普通に朝練あるし、授業もあるし、早いとこ寝なきゃって思ってもちっとも眠気がやってこない。今頃レオナさんは呑気にぐーすか寝てんだろうな、なんて考えて小さく笑いが零れる。
「……ん?」
 ぴくりと耳の先が跳ねた。もう夜中も夜中だってのに、廊下から足音が聞えたからだ。誰か寝れなくて散歩でも行くんかな。そんなことを考えながら足音を辿っていると、それはオレの部屋の前でぴたりと止まった。こんな時間に、誰だ?レオナさんだったら容赦なく扉を叩いて悪びれもなく起こしてくるだろうし……。怪訝に思いながらもベッドから体を起こして扉に向かう。廊下の向こう側にいる誰かにオレの足音は聞こえてるはずなのに、依然ぴたりと止まったままだった。首を傾げながら扉を開けて、息を呑む。
「れ、レオナさん……どうしたんスか、こんな時間に。腹減って起きたんスか?」
 真っ暗な廊下を背にしたレオナさんは寝て起きたのか髪が乱れていて、いつもよりぼんやりした顔でオレをじっと見下ろす。
「まだ寝てねえのか」
「……今、寝ようとしてたんス」
「こんな髪濡らしたままか?」
 不機嫌さも、呆れも含んでいない落ち着いた低い声が鼓膜を叩く。生乾きのオレの髪を梳くようにレオナさんの手が伸びてきた。こんな触り方、今までされたことがなくてどきっと心臓が脈打つ。
「俺のはいつもすぐ乾かすくせに」
 ふっと笑われて、顔の横の髪に触れていた手がするりと首をひと撫でする。なんだかいつもと雰囲気が違うレオナさんに動揺してしまう。
「っ……それで、何の用です?」
「寝付けなくて困ってるんだ。子守歌でも歌ってくれよ」
 嘘つき。あんたが寝付き悪いとこなんて見たことがないし、誰が毎朝あんたのこと起こしてると思ってんだ。むっとして表情に出すと、白々しく首を傾げたレオナさんの指先がオレの指先を掠める。オレの気持ちも知らないで、なんでこんなタイミングで。わざとらしく溜め息を吐いてから上で待っているレオナさんと目を合わせる。
「仕方ないッスねぇ……今日だけ特別ですからね」
 数時間前までいたレオナさんの部屋に舞い戻る。ベッドに寝転んだレオナさんに視線を投げながら床に腰を下ろそうとすると腕を掴まれて引っ張り上げられた。
「は?なんスか」
「ここで寝ろ」
「はぁ?」
「いいから、ほら」
 強い力で引っ張られて、上から布団を掛けられてしまった。何故か向かい合ってるし、何故か抱き込まれて。ぽんぽんと濡れた後頭部を撫でられて、頭が混乱する。
「さっさと寝ちまえ」
「子守歌は?」
「あぁ……?」
「って、もううとうとしてるし。オレ必要なかったんじゃないッスか!?」
 今にも寝そうなレオナさんを引き剥がそうと胸に腕を突っ張れば背中に回った腕にぐっと力が入って余計距離が近くなる。あぁ、もう、バカ!
「うるせ……ぐう」
「ね、寝た……」
 きっちりオレを抱きしめたまま。なんだこれ。はー、ほんと、勘弁してくれ。脱出しようにもここまでホールドされてちゃ難しい。ぐうぐうと低く響く寝息に諦めて瞼を閉じる。レオナさんの体温ですごくあったかい。目の前の心臓がオレよりも少しゆっくり脈打ってるのがわかる。足先を動かせばレオナさんの足がぴたりとくっついて、呼吸をすればレオナさんの匂いで肺がいっぱいになった。
 そういえば、こんな風に誰かに抱き締められるのも、誰かの体温を感じながら寝るのもいつぶりだろう。じわじわとありもしない心ってやつがあったかく、満たされていく感じがする。
「……あぁ、そういうことッスか、れおなさん……」
 思考が次第にゆっくりになる。いろいろ考えなきゃいけない、でもさっきまで全然眠くなかったのに全身が心地よくて安心する。うと、うとと眠気がやってきて、もっとレオナさんの体温を感じたくて身じろげば、男らしい腕がオレの体を抱き寄せてくれた。
「ほんと、……ずるい……」
 もう認めるしかない。オレはレオナさんのことが好きなんスよ。たぶん、結構前から。
 ※
 ラギーの奴がおかしくなったのは数日前からだった。いつもは喧しいくらい飛んでくる小言も、ちょこまかと視界の端で動き回る姿もぱったり減って、いきなり静かになられたら嫌でも気付く。らしくない、まずそう思った。良くも悪くもあいつは感情を隠すのが上手い。瀕死の状態でも虚勢を張るような、そんな諦めの悪いところを多少なりとも気に入ってる。
 だから何かよっぽどのことがあったのかもしれないとは考えたが、あいつがタダで転ぶような男じゃないのを知っているし、あいつの身に何があったかなんてそれこそ興味がなかった。どうせ寝て起きたら次の日には何もなかったようにいつものへらへらとした顔でやってくるだろ、そう考えて放っておいたが、次の日もその次の日もラギーの様子は変なままだ。
 常に上の空。何かを考えてるのか、何も考えてないのか。ぼーっとして、俺が名前を呼んでも気付かない。俺の身の回りのことをやってる最中でさえ手が止まる。そんなことが増えて、だからって何かあったのかなんて聞くつもりもなかった。
 何があったのか、それはどうでもいい。小煩いやつが静かになってよかったじゃねえか。普段からこうあってほしいもんだ。ラギーがぼけっとしてるのをいいことにぐうたらする日々。ふと、こいつが俺の目の前に現れる前のようだと思い至った。
 あの頃は何もかもが腹立たしくて、何もかもが退屈で。そう、人生が退屈だと思っていた。代り映えのない日常、誰もが揃って俺に対して腫れ物を扱うかのような態度。どう足掻いてもひっくり返ることのない世界。色も味覚も感情も、何もかも乾ききった砂みたいだった。
『レオナさーん。さっき腹減ったって言ってたでしょ。食堂からかっぱらってきたッス、一緒に食べません?』
 今でこそ俺が指示して材料費を出して作らせている夜食だって、最初に言ってもねえのに動いたのはラギーだった。いたずらが成功したような顔をして、何がそんなに楽しいんだか正直分からなかった。頼んでもいないのに、ただ同じ寮で、同郷というだけで俺の周りをうろちょろするラギーの魂胆は考えなくても簡単に察することができた。それでも傍に置いてたのは俺にも少なからず利があったからだったが、今思えばラギーは『珍しかった』んだ。
 ラギーのことは随分前から知っていた。薄暗いゴミ溜めに住んでいる意地汚いハイエナ。あんなところで生まれ育ったやつはさぞかし陰気なんだろうと鼻で笑っていたことだってある。
 けどあいつは俺が思っていたそれとは少しだけ異なった。意地汚くて生き汚くて、狡賢く図々しいのはまさしくハイエナのそれだったが、どうにもそれだけじゃなかった。
 何でもないことを楽しそうに話して、大した価値もないものを宝物のように扱い、そこまで美味くもないパンを、まるで御馳走のように齧る。俺がどうでもいいと切り捨ててきたすべてをあいつが大切そうに拾い上げるから、俺も捨てることに躊躇するようになった。
 全部あいつのせいだ。あいつが俺の世界に色を付けた。誰かと食べる飯は御馳走でなくても特別暖かく美味く感じるのだと教えてきた。あいつが、ラギーが喧しくないと、退屈だ。
「……」
 体感で、いつもより早く起きたのを感じ取る。若干眠気の残る瞼を持ち上げれば俺の腕にちょこんと頭を載せて眠るラギーがいた。あぁ、そういや夜中に引っ張ってきたんだったか。
 いつだって俺を起こすのはこいつで、だからこいつの寝顔なんて初めて見たかもしれない。すやすやと深い眠りについているラギーの丸い頬を撫でて、乾かさなかったせいで寝癖の酷い髪に指を通す。
「ん……」
 小さく身じろいだラギーの足先が俺の足に擦り寄ってくる。寝てるところを触られても起きないなんて、ここが俺の部屋じゃなかったら誰に食われたっておかしくない。それとも、俺の腕の中だから警戒心を解いてるとでもいうのか。なんて考える自分を内心で嘲笑った。
 起きてほしいような、このまま眺めていたいような。らしくないのは何もラギーだけではなかったらしい。
「れお、な、さん…」
 ほとんど掠れて聞こえないくらいの声が俺の名前を呼ぶ。その声はやたらと不安そうで、まるで迷子になった子猫のようだった。もう一度髪を撫でてやれば胸板に額を押し付けてくるから抱き寄せるようにちっぽけな背中に腕を回す。
 暖かくて、どうしてか安心感を覚えて再び眠気がやってくる。下にあるラギーの丸い耳が不規則にぴくぴくと俺の顎を擽るのが心地いい。すうと息を吸えば俺の匂いに混じって薄っすらとラギーの匂いがした。俺よりもひと回りもふた回りも小さく肉付きの悪い体はとてもじゃないが抱き心地がいいとは言えないが、それでもどうしてか乾いていた何かが満たされていく気がする。
 ひっくり返せない世界。そう明るくもない未来。諦めていたのに、手に入るわけがないのに、俺はこの温もりを手放しがたいと思っている。
「レオナさん、れーおーなーさん!」
 たった数日聞かなかっただけで随分元気で、それでいて煩く感じる声が俺の名前を呼んでいた。二度寝から瞼を持ち上げれば顎の下に柔らかい毛の感触。背後から差し込む光の感じから、もうとっくにいつもの時間を過ぎているのだと察した。
「あっ、起きました?もー、離してください。オレ、抱き枕じゃないッスよ!」
「うるせえ……近くででけえ声出すな……」
「あんたが離してくんないからでしょ。完全に寝坊ッスよ。急がないと」
 昨日までの腑抜けたツラはどこへいったのか、腕の中でもがくラギーは反抗的な目で俺を睨み上げている。もう少しあのまま放っておいてもよかったか、なんて考えが脳裏を過ったが、それよりもこの生意気な態度を取るラギーのほうが『らしくていい』と感じた。
 ふっと笑いを零せば自分のことを笑われたと思ったらしいラギーがムッとして俺の腹を押して離れようとする。
「ちょっと!2限にも間に合わなくなるッスよ!?」
「あー、うるせえうるせえ」
「え、ちょ、わあっ!?」
 キャンキャンと喚く小さい体を転がしてベッドの上に押し倒す。ぽかんとした顔が傑作だ。くつくつと止まらない笑いを隠すことなく溢れさせながらそのちっこい頭の両側に腕をつく。
「な、なんスか……」
 戸惑っているだけではないか細い声は俺を否定する気はないらしい。気まずそうにうろうろと視線を逃がしてはたびたびこっちに向けるのがまたおかしくて笑えば下唇を噛んで頬を上気させるもんだから、ついつい加虐心が顔を出す。
「ラギー」
 名前を呼んで、額を摺り寄せた。赤みを帯びた頬はあからさまに、ぐっと狭まった瞳が一層色を濃くする。こいつが何を考えているのか、今は手に取るように分かる。シーツに投げ出された抵抗する気もない手のひらの輪郭を指先でなぞると目の前の瞼が大袈裟に震えた。
 なぁ、お前も期待してるんだろ? 零そうとした言葉が喉元で止まる。されるがままになっていたラギーの指先が、俺のそれを握り返したからだった。
 ぐっと腹の底が熱くなって、どうしようもない感情が噴き出した。
 掴み返された小さな手をきつく結び直して、ふるりと揺れる唇に噛み付く。俺のものより小ぶりで柔らかなそれは今まで口につけた何よりも俺の心を潤わせた。一度味わったらもっと欲しくなった。ちゅ、ちゅと甘皮を擦り合わせて、緩く閉じられたあわいに舌先を這わせればぴくりと肩を震わせ応えるように蕩けたそこが綻んだ。堪らず舌を捻じ込んで熱い粘膜を舐り、逃げようとする薄っぺらい舌を追い掛けて捕まえる。
「んっ、んぐ……っん、ン」
 息苦しそうに歪む表情とぎこちない舌の動きが更に興奮を煽る。へたくそ、そう言ってやったらこいつはどんな顔をするだろう。伝っていく俺の唾液を溢れさせることなくこくこくと飲み下すラギーを褒めるように上顎を擦ってやれば下敷きにした身体がびくびくと跳ねた。
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れおらぎ
初公開日: 2020年04月29日
最終更新日: 2020年04月29日
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きのうの続き
れおらぎ
なかよししーんに入るまで
ふくろこ
七夕リチャアヤ
眠気が勝つか、今日が終わるのが先か
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