そう言うと、山口は弁当の包みを片付ける手を少し止めて、
「色がつく、って言うのかな。いや、たんぽぽが薔薇になった、みたいな……いや、薔薇っていうよりは百合かな……」
 と言った。理解はできる。具体的すぎて逆に分かりにくくなっているだけの話だ。
「……無邪気なだけだった笑顔に、相手を想う気持ちみたいなものが乗るようになった、みたいな?」
「うん、夏の太陽が春の太陽になった感じというか」
 また新しい表現が出てきた。翻訳するならこうだろう。地上に存在するもののことなんて意にも介さず、日照りも日照不足もお構いなし、ただひたすらひとり空に輝く性質、が「夏の太陽」であるなら、雪に包まれていた世界を柔らかく穏やかに溶かし、花と春風と共に祝福をもたらすような性質、が「春の太陽」だろうか。細かいニュアンスは違うかも知れないけれど、大体そんなところだろう。こちらの喩えも概ね理解できるし、合っているとは思う。
 そうだね、と同意すると、山口は口の両端を思いきり持ち上げた。いわゆる、いい笑顔、ってやつだ。
「……何、その顔」
「いや、なんでもない!」
「なんでもないようには見えないんだけど」
「いやー、日向はきっといい恋をしてるんだろうなーと思っただけだよ」
 その緩い顔を見ていられなくて視線を外した。追いかけてくる視線はこう言ってくる。
 ーー日向が可愛くなった理由は。日向が好きなのは、ツッキーだろ、と。そして、僕はそれを知っていて、僕も日向と同じ気持ちでいるということも、この男は理解しているらしい。
 まったく、自分は大した技術も能力もないとか謙遜するくせに、観察眼は大したものを持っているんだから始末におえない。
よし一万字超えた解散!
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立野
コメントありがとうございます!
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自由気まま枠
初公開日: 2020年04月26日
最終更新日: 2021年03月14日
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