仄暗に、絡めた指のそっと解かれるのを見ていた。
春待ち付きの朝は冷たく、蒼く。舎人を頼む彼の男のひそやかな声を聞かねば、永久に、夜と呼んで相違ない。
ブチャラティは空になった指で、昨晩脱ぎ落とした衣を手繰り寄せた。薄色のそれから香る黒方に、取り違えたと気付いたものの、自身の焚き染めた梅花よりよほど嗅ぎ慣れたように思われて、微睡の淵、薄く笑う。
几帳と御簾の間で、声は密やかに。
衣擦れと、去ってゆく女房の静かな足音を床に聞く。
ほとんど音もなく几帳の内へと戻った温もりは、花でも愛でるような仕草で、ブチャラティの髪を梳いた。
褥の、元いた場所へその長躯を横たえて、男ーーアバッキオは囁く。
「悪い。起こしたか」
隣に温度が戻る。
ブチャラティの手から黒方香る衣を抜き取り、代わりに梅花を着せ掛けて、柔らかに息をつく。
「まだ休んでていいぜ。あんたは、『星が悪くて不出仕』だ」
「勝手に文を? なんてやつだ」
「で、お前は?」
「先日、北山にて飛び立つ天狗の影を浴び、どうにも穢れを受けたように思われます。つきましてはこの身を清め……」
「参議どのの渋面が目に浮かぶな」
キーボードの電池が切れたので終わる!!!