折原臨也夢 夢? モブ
「諦められないなら、諦める方法を探しても良かったのでは?」
それは恐らく宣告だった。己に対して。目指すべき、或いは妄信より逸脱する『方法』を探せただろう自己へ対しての、最終宣告だった。最終、それよりも遅い。それは現状を覆せない、ifへの夢想に過ぎなかった。ここへ至らなければ思い描けるはずも無かった。稚気を行使していたに過ぎなかったと知るのは、成長してからだ。成長はした。代替に、他人という取り戻せない犠牲を献上して。
「例え結果を同じくしたとして、意欲的にそれを求めているわけでは無かった」
青年の絶対的な、突き刺す美麗に呼ばれる声に、夢遊より起こされる。瞼の裏で描いたよりもうつくしい容姿を、いつまでも新鮮に驚愕する。この世に存在して良い容姿であるのか疑問である。天使に導かれるのとおなじほど、中身の悪辣さから悪魔からの勧誘もあるのだろう。両肩に極致を乗せて誘惑する人間。間にある平均値ではあまりにも青年を表さないのだが、その極致を併せ持つからこそ、青年は折原臨也足り得るのだろう。
今のただ横たわっている青年は、完璧であった折原臨也を損なっている。彼女が、損なわせたのだった。
「結果」
「何れ至る辺獄だとしても」
「辺獄なんて上等なものじゃない」
「そうだね。もっと現実的で、チープで解り易い」
「私の与えたチープで解り易い現実を、貴方が実感してくれるのは嬉しい」
「嬉しい――でもいいけれど。好ましい、が近かったのかな」
「過去形ね」
「今こんな目に遭ってしまえば。こんな俺でさえ悔恨もできる」
悔恨、と呟いた青年は首を振って悩む素振りを見せたが、それに代える単語は見つからないようだった。艶を失った黒髪がはらはらと揺れるのみ。
「邁進する貴方を好ましく思っていたのは確かだった」
「ああ」ふ、と笑う。「過去形だね」
煽られたような声色に、彼女は肩を揺らす。同じように返せるわけも無く、彼女は誤魔化すように視線を逸らし、用意していた、皿に盛ったリンゴをひとつ口に放り入れた。瑞々しさとは裏腹に、甘美が張り付き、余計に喉が渇く。青年に求められたように思われ、手にしていた赤の映えるそれを、色素の薄い口の隙に与えた。与えられただけ、貪欲に飲み込んでいく存在には、毒も薬もなかった。
そうっと眠りに落ちていく青年を見下ろす。彼女は青年よりも褪めた顔色で、ぐったりとベッドに凭れた。