「ねえ、はじめまして、だって変だねこの人」
10年もののソファに寝ころびながら、妹はにゅ、と足を掲げてのかかとの先だけ僕に向けて不満げに続けた。
「だって現実で言わなくない?これ、言ったことなくない?」
どうやらスマフォでなにやら動画視聴の最中らしい。
朝食のパンをぐいぐいと咀嚼し、僕は空になった皿を流しに収め、妹のかかとをぐに、とつかむ。
「あのさ、それ。僕今日、いろんな人に言わなきゃ行けないんだけど」
「言わなければいいじゃん」
僕の手を器用に振り払い、スマフォをテーブルに置いた妹はこちらを見上げてくる。ビー玉みたいな目に映る僕は、まるで下手な蝋人形だ。
「行かなければ言わなくてすむよね。行かなければいいじゃん」
勝手なことを言わないでほしい。
「いってきます」
はじめまして、を言いに。おもに、新しい残りの中学生活に。