ガンガンと頭を叩くように痛いのは、昨晩浴びるように飲んだアルコールのせいだ。後先考えずに飲めばこうなるということをわかっていながら、どうして同じことを繰り返してしまうのだろう。健康的な春の朝日が眩しすぎて恨めしい。
朝日を直接招く窓、遮光カーテンを開いた犯人はベッドには既に居ない。どうせ同じ症状に見舞われてトイレにでも駆け込んでるのだろうと、特に気にすることなくもう一度寝るためにベッドへと横たわったところで、キッチンの方から何かが倒れる音と俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「っし、ししまる!!!!おい、獅子丸!!早く来て!!」
「…っだよ」
「早く!!!お願い!!」
頭痛を助長させる甲高い悲鳴にも似た声は、僅かばかりの緊張を孕んでいる。こんなのどかな休日の朝、ふたり暮しのワンルームにどんな危険が孕んでるってんだ。大方、コーヒーの粉やら砂糖やらをぶちまけたから片付けるのを手伝えとかでも言うのだろう。二日酔いも相まって無視を決め込もうとキツく目を閉じても、切羽詰まった声が畳み掛けてくるからまともに眠ることすら出来ない。
「うるっせぇぞアホうさぎ!」
「ししまるぅ……」
その後もキャンキャンと騒ぎ立てた張本人は、冷蔵庫の前で膝を着いて座り込んだ状態で、仕方なく起き上がってきた俺を見上げた。予想と違って、キッチンにはコーヒーも砂糖も散らばっていない。その上、こちらを見上げる瞳は潤んで、何かをこらえているのか頬は蒸気している。
「……ンだよ」
「れ、いぞうこ、の……中……」
息も絶え絶えといった新兎の様子は想像と全く異なっていて、正直内心動揺する。震える手で指さしたのは、キッチンの隅に佇む冷蔵庫。ニンジンの形を模したキッチンタイマーが朝日にツヤツヤと光っている。
「冷蔵庫の中の、上から、二段目……」
どうやら、開けて見ろと言いたいらしい。その意図を読めず、問い詰めたところで俯いて首を横に振るだけの新兎にいい加減焦れて、仕方なしに手を伸ばす。眉間にシワが刻まれていることを自覚しながら、扉に手をかけてそのまま手前に引いた。背後の新兎が小さく息を飲むのを空気で感じる。
開いた隙間から漏れ出る冷気が肌を撫でていく。今更、パンツ一枚にTシャツしか身につけていないことに気がついた。
「ッ、んだこれ」
「…………っ」
常備のコーラとビールがひしめきあう最上段。
調味料やらが乱雑に置いてある下段。
冷蔵庫らしいラインナップの中央に、見慣れた、しかし場違いな小さな箱が佇んでいる。真っ赤な背景に、ポップな字体で書かれた「0.01」の文字。
「誰だ冷蔵庫にコンドーム入れやがったのは!?」
「ヒーーーー!!!!アッハッハ!!無理!笑い死ぬ!!!」
潤んだ瞳の理由は笑いすぎだったようだ。俺の叫び声に手を叩きながら床を笑い転げる新兎を睨みつける。
「てめえかこんなところに入れやがって!」
「違う違う!っ、待って無理笑いすぎて足、つる」
「知るか」
※え^^^^^^^冷蔵庫ってなに入ってるかな あとで書き出す