「ロナルドとアタシがドラちゃんを賭けて争った時の、最後の勝負の内容と結果は?」
「棒倒し、ロナルド君の反則勝ち!」
「女子会でアタシの家に来たときドラちゃんに何があった?」
「思い出したくないです……」
「どうやら本物のようね」
「信じて頂けたようでなによりです……」
店に入ってきた女に『おいドラルクさんってあの人のことだったのかよどういうことだよ』と混乱するロナルドを、とにかくお前は事務所に帰れ後で連絡すると強引に追い出してから行われた尋問はあっさりと終わりを告げた。
「いやまあ、見た瞬間『ドラルクじゃん』とは思ったけどな」
女物の服と腰まである長い黒髪と小柄な身体を除いた全てが、ドラルクそのものであった。端的に言えば、ドラルクを知る者が見れば間違いなく『ドラルクの女体化』と思う、そんな容姿であった。
「お前一体なにやったんだよ?」
「いや私にも何がなんだか」
ドラルクの語るところによればこうであった。
ちょっと散歩へと出かけた帰りに突然眩暈がして、気が付いた時には自身がすっかり女の姿に変身していた。どこぞのイカレポンチの仕業だろうと踏んで、とりあえず事務所に帰ろうとした所でちょうどビルの前でロナルドと行き合った。するとロナルドはドラルクを初対面の女性と認識したのでそれをいいことにからかって遊んでやろうとしたが、どうも様子がおかしい。話すうちに、どういう訳だかは見当がつかないがロナルドは『ドラルク』がわからなくなっていることに気付き、どうもまずい事態になっていること悟りどうしたらいいものか考えあぐねてひとまずその場を後にしたのだという。
「試しにSNSで適当な投稿をしてフォロワーの反応を見ると、誰だコイツはという事もなくいつも通りでした。故にロナルド君以外の記憶が失われた訳ではないようだと判断して、ギルドに助けを求めに来た次第です」
一体どこの誰が、なんのためにこんなことをしでかしたというのか。
ロナルドが女ドラルクに惚れている以上、『ロナルドに懸想した第三者説』はここで潰えた。ならばこの状況を望んでいるのは誰であろうか。
「とにかく、こんなことができるのは吸血鬼しかいないだろ。しかも催眠と他人の変身能力制御ができるといったら相当の力の持ち主じゃないか」
「吸対のダンピールの彼にも応援を頼むか? 彼ならロナルドがこんな状態だと知ったら力を貸してくれるだろう」
「姿を元に戻す方法に心当たりはないの?」
「ああ、ええと、そのですな」
ドラルクが遠慮がちに放った言葉に、そこにいる全員が耳を疑った。
「私、別にこのままでも構わないかなぁ……と」
そう言って、女の姿でドラルクは気まずそうに笑った。
「……ど、どういうことだよ!?」
「よく考えたら、私が女になったところで困ることもないな、と。長い吸血鬼生、女になることもまぁあるかなと思えば。この方がゲーム実況配信のスパチャも増えるかもしれませんし」
しれっとそんな風に言ってのけるドラルクを信じられない思いで退治人達が見つめる。
「ねえまさかドラちゃん、このまま女としてロナルドと恋人になろうっていうの!? 今までのロナルドとの思い出を捨てて!?」
「そんな訳ないでしょう!」
「ならなんでここに来たんだよ!?」
シーニャの発言を心外だとばかりに否定するドラルクにショットが詰め寄る。
「私が力を貸してほしいと言ったのは事務所に置いてある私物に関してです。見ず知らずの女が突然『あなたの家にある見覚えのない荷物は私の所有物なので引き取りますね』って、訳がわからないし怪しいでしょう。その辺り上手い言い訳を考えるのと、ついでに運び出すのも手伝ってもらえないかと」
予想外のドラルクの態度に退治人達は戸惑いを隠せなかった。【えーなんだこの、めっちゃドがドライにそう言い放ったことにめっちゃ退治人達が「えっ!?」ってなってるさまをちょっと長めに入れたいこのへんに誰か代わりに考えてほしいマジで。あっなんか♡出ましたねありがとうございます。温かく見守るつもりだった二人がこんな訳わかんない破局の仕方しちゃったらめっちゃ嫌だよね~的な文章を入れたい】むしろ二人の暮らしを終わらせたがっているかのような物言いをするドラルクに、腹が立つような呆れるような同情するような、複雑な感情が退治人達の胸に【この辺で「あ~でもやっぱそうなのかな」的な目線の退治人達の心情も書いておきたいあーちょっと待ってそれだとちょっと先の展開的に矛盾というか…いや矛盾つー程でもないんですけどうーん、「腹を立てる」っていうニュアンスと同じ意味のエモい言い回しってないですかね】
「出て行くってことかよ……?」
「そうする以外にないでしょう」
「ロナルドさんはどうするのです?」
「どうするも何も……私のことを覚えていない上に私が今こんなでは一緒には暮らせないでしょう。私を忘れているなら忘れているなりに一人でやっていくのではないですかな。五歳児でもいい大人なんですし。ロナルド君には気の毒ですが、ジョンはしっかり連れて行きますが」
「アホかそういうこと言ってるない! ドラルクに惚れてるロナルドそのままか!?」
やけに潔いような、ともすれば捨て鉢になっているようにも見えるドラルクにターチャンが声を荒げた。
「いやいや、もう惚れた腫れたの騒ぎもないでしょう。彼は私のこと忘れてるんですから」
「ちょ、ちょっと待てよ」
ドラルクの言葉を聞き咎めたショットが遮る。
「もしかして気付いてないのか?」
「何に?」
「ロナルドが、今の姿のドラルクに惚れてるってことだよ」