(二時間くらい書きます)
↓一話のラスト部分
(扉の前に立っていたのは、大きな大きな「歯車」だった。
いや、厳密には、大小さまざまな形の歯車がいくつも重なりあい、人間の背丈ほどの塊になったものだ。ところどころ苔が生えたり錆びたりしている。色も金色、銀色、様々だ。
人間でいえば顔くらいの位置だろうか、そこにはめ込まれている巨大なベベルギアが、火花を散らしながら回転した。
「……知り合いか?」
「そう思う?」)
二話「傘の少年」
歯車人間は一歩足を踏み出した。千寿たちに近づく。その動き方はやはり人間の動きと似ている。しかしその非生物感(この言い回しあんまり好きじゃないのであとで考える)は、リンゴと千寿に生理的嫌悪感を抱かせるには充分だった。
リンゴは一歩後ずさる。千寿は一歩前に進み出た。
「えーと」
千寿が弁明しようと口を開く。それとほぼ同時に、ギアマンは全身のギアを回転させた。彼の足元の木の板が大きく抉れる。
千寿はとっさに体勢を低く取る。
神社に来た参拝客じゃなさそうだ。言葉の通じる相手でもない。どういうテクノロジーなんだろうか、警備ロボとか? でも、廃神社に警備ロボなんて配置するだろうか。そもそもリンゴも見たことがないみたいだし……
「ギ、ギ、ギ」
声とも音とも判別のつかない音がベベルギアから漏れた。
ビシュッ! と空を切る音が鳴る。
「パールくん!」
リンゴが叫んだ。赤い血が飛んだ。肩口に大きな切り傷ができている。千寿は振り返る。壁に小さなギアがめり込んでいた。歯車を弾丸のようにして発射したのだ。
「血……」
(ギアマンから逃げ、社殿から出る)
「……どこだ、ここは」
社殿から出た二人の目に飛び込んできたのは、ゴミ山のような風景だった。
散乱する瓦礫。何かの骨組みのようなものが地面から突き出し、あちこちにちょっとした小山が積み上がっている。先ほど千寿が通った雑木林や獣道は、どこにも見えなかった。
今二人が出てきた社殿は、小山の麓にあった。
雨は激しく降りしきり、目を開けているのもやっとだ。
「な、なにこれ……?」
リンゴは周囲を見渡し呆気にとられていた。
「おい、あそこ、誰かいる」
千寿が指さした先には……小山を二つほど越えた先に、真っ白な鳥居が埋まっていた。その上に、|誰かがいた。
背丈は、少年ほどだろうか。遠くてよくわからないが、手に大きな傘を持っているように見えた。頭には笠のようなものを被っていて、顔は見えない。
「お、おーい!」とリンゴはそれに向かって手を振った。
「ちょっと待て」と千寿はリンゴを制する。「あれは……また変な奴かもしれない」
「変なやつ?」
ああ、と頷きこうとして千寿がもう一度その鳥居を見ると、既にそこから少年の姿はなくなっていた。少年は、こちらへ向かって走ってきていたのだ。
「来る!」
「うわ、うわわわ!」
少年は助走をたっぷりつけてジャンプした。20メートルほど空を飛ぶ。二人の目の前に着地した。
(「傘」の外見描写……大きな長柄の唐傘と蓑、深編笠(縁が赤い)、穴の開いた木靴)
「……や、やあ」
「ア、カギャルワナ、ニドコ」
少年は何かを口走った。二人は顔を見合わせる……少年の言葉が理解できなかったからだ。
「……今度こそ知り合いか?」
「そう思う~!?!」
(ギアマンが出てくる)
「うわわ!」
「まずい、挟まれた」
千寿は地面に落ちていた棒を拾った。
いや、それは棒ではない……ボロボロになった白い傘だ。傘としての役割を果たしそうにないほどに()に穴が空いている。
()
「来る……っ!」
二人は身構えた。
が、結果的にはそれは杞憂だった。
少年は二人の脇をすり抜け……傘でギアマンに斬りかかったのだ。
(「傘」、ギアマンと戦闘を始める。)
少年は手に持っていた赤い唐傘を開く。すると唐傘が光り輝いた。
「うわっ、なんだ!?」
(傘の外見が少し変化している。唐傘の()に黒蛇の文様)
少年の唐傘から黒々とした蛇のようなものがはいずり出た。それはよく見れば、黒く太い鎖だった。
鎖がまたたく間にギアマンを縛り上げていく。
(「傘」、ギアマンを倒す)
(「傘」、二人に襲い掛かる)
「うわああ、やっぱりあいつ、敵だ!!」
「そもそもここはどこなの~!?!?!」
「蒸し返すのか、それ!!」
鎖が千寿の足元を掠める。地面が削り取られ土煙が大きく舞い上がる。
「ごほ、ごほ!」
「リンゴ! 埒が明かない! さっき見ただろ、ジャンプ力! どこまででも追ってくる……そもそも逃げ場所もわからない!」
「じゃあどうするの、パールくん!」
「傘を奪うんだ」
「へ!?」
「あいつは傘で攻撃してくる、傘を奪えば大丈夫だ!」
「できるの!?」
「やるしかない!」
千寿は傘の少年に向き直った。少年は鎖を振るいながら、その勢いを止めることなく真っ直ぐに二人に向かって走ってくる。
「無茶だよ……」
「リンゴは逃げてくれ」
「えっ?」
「危険すぎる。俺が時間を稼ぐから」
「でも」
「リンゴは、なにか目的があってあの廃神社に泊まり込んでたんだろ?」
「えっ?」
「リンゴは生きる理由がある。俺は特にないよ。ただの雨宿り客だ。あそこにたどり着いたのだって偶然だしな……」
リンゴは
(千寿、傘の少年の鎖にからめとられる。)
「う、ぐ……」
ぎりぎりぎり、と鎖が千寿を締め上げる。鎖は千寿の両脚と腕を縛り、身動きを取れなくする。
「うああっ!」
(少年、千寿の口を無理やり開かせる。馬の銜みたいな感じに……)
「あ、が……」
少年は千寿の顎に手を添えた。そして、手に持っていたその丸薬を千寿の口に押し込む。
ごくん。
喉の中を丸薬が滑り落ちる。
「う、げほげほっ!」
千寿は大きくむせた。
「なにを……飲ませたんだ」
「悪いものじゃないさ」
少年はそう言い、静かにほほ笑んだ。
「……え?」
千寿は目をしばたたかせた。
「今、お前……返事、したか?」
「威勢がいいね。見どころあるよ。ただ、暴走しなければ、だけど」
「お前、何者なんだ」
「審判だよ、テストのね」
「な……」
「傘の適性があるか、ここでいつもテストするんだ。今回は思わぬ邪魔が入ったけど」
「傘? 何の話――」
(突然飛んできた石によって少年の深編笠が飛ぶ。少年の素顔が露わになる……尖った耳、切れ長の目、薄い金色の髪……)
「パールくんを放せ!」
「リンゴ! なんで戻ってきた!」
千寿を縛り上げていた鎖が解ける。千寿は地面に倒れ落ちた。
「あ~……痛いね、痛いよ……」
少年は側頭部を押さえていた。青い血がぼたぼたと垂れ落ちる。
「僕、君たちに何かした? 怪我させた? 違うよね。ちょっと追い立てただけじゃん。非道いよね……。だから『レイン』は厭なんだ……いつも僕のことを化け物扱いする……! 師匠だけだ……師匠だけ……!」
千寿は地面を後ずさる。
「大丈夫だった、パールくん?」
「あ、ああ、俺は大丈夫だけど……まずいかもしれない」
「師匠……師匠! 僕に力を! この屍の大地に縛りつけてくれ! あっ……ふぅ、ふぅ」
少年は息を荒らげる。
(暴れ出す少年)
(傘を探す二人)
「この傘、使えそうだよ!」
リンゴが傘を振り上げた。白い洋傘だ。少し()が敗れてはいるが、状態は良さそうに見えた。
「よし、それを使おう!」
「使おうって、どうやって」
「あいつが傘を開いたとき傘が光ったろ、きっと開くのが発動条件だ」
(傘の部位についてちょい調べ物してきます)ハンドル、ランナー、生地
(傘はなかなか開かない。全身を鎖に包まれ大蛇のようになっている少年が二人に向かってくる)
「俺はどうなってもいい。けど、お前は守る」
「……パールくん」
「あのさ、ごめん、こんな話、今するべきじゃないかもだけど。私、自分に正直になるって決めたから」
「ん? どうした」
「私、パールくんに対して昔から思ってたことがあるんだ。というより、今さっき気づいた……って感じなんだけど」
「ああ」
「パールくんって、昔っからそうだった。自分を犠牲にして誰かを助けたがるというか。ヒーローみたいだった」
「……そうかもな」
「私、パールくんの……ううん、篠月のそういうところ」
リンゴは傘のハンドルに手をかけ、力を籠めた。
「…………大ッッッ嫌いだったッ!」
傘がぎらりと光り輝く。
(傘が剣と鞘に変形する。リンゴが剣、千寿が鞘)
「大して強くもないくせに、そうやって自分だけヒーローになろうとしてるのが……自分を犠牲にして誰かを救った気になってるのが、昔ッから、嫌だった! だから私は決めたの……」
鎖大蛇は
「もう逃げない。私は誰よりも強くなる……誰にも私を守らせない」
(少年の懐に踏み込み、少年の左脚を切りおとす。)
二話終(この尺だともしかしたら三話まで行ってるかもな 一話三千字弱くらいで考えているので……)