夜道を歩いていると、頭の隅がざわめく。
 この辺りは人通りが少なくて、見かけるものはシャッターの降りた店と荒れた空き地ばかり。街灯のやけに白っぽい光が、孤独を浮き立たせてくる。風が寒くて、身を縮める。疲れきった頭脳は思考を拒み、ただ足を前へと進める。職場からの帰り道は、ただ空虚だ。辛くてたまらなかった時代のソレと同じように。
 そうして、私は自らの住まいに辿りつく。古びた団地を見あげると私の部屋は明かりが灯っていた。その光だけが、過去と現在の違いで、私を孤独から救うものだった。
 そこから先は駆け足で、私は家に帰る。身体中に血が巡っていく。もう家は食事して寝るだけの場所じゃない。私を待ってくれている人がいる。
「ルミちゃん、おかえりぃ。ユナナがいて嬉しいでしょ~?」
 息を切らせながら廊下のドアを開けると目の前に彼女がいた。
 さっきまでゲームをしていたのだろうか、この間プレゼントしたビーズクッションに身を埋め、床にゲーム機を投げ出している。
「ただいま……!」
 それだけ言って、彼女の前に跪く。着替えも何もしてないけれど、これをしなくては始まらない。瞬きする間も惜しんで、彼女を、由奈菜を、じっと見つめる。
「隠さなくてよくなったからってさぁ、ユナナのこと見すぎ。ほんっと好きなんだね」
 今日の服装はラフな薄黄色のシャツに、ホットパンツだった。カジュアルすぎる格好は好みではない。私の趣味の服は暑苦しいと彼女は言う。だが結局のところ、由奈菜を前にして私の嗜好なんてどうでもいいことだ。可愛いの女子■学生は何を着たってよく似合う。サイドテールにした髪は今日も艶やか。こちらを見据える視線は挑発的で、生意気なのに、もう怒りなんて湧いてこない。シャツから覗く鎖骨には明らかな色気が漂っていて、彼女がこんなものを晒しながらラン■セルを背負って登下校していることに当惑してしまう。成長途上にある身体は、骨の硬さと肉の柔らかさを両立させていて、それがシャツの上からはっきりと感じ取れる。
 私の熱視線を由奈菜は嘲り、すっと片膝を立てる。かつて私を踏みしめた素足の爪先から、少しむっちりとした太ももまで、私は目でなぞる。ホットパンツの裾と太ももの間には隙間があり、そこから拝めるであろうものに狂わされて、私は無意識に上から覗きこもうとしてしまう。
「おあずけ」
 由奈菜は一言で、醜い欲に支配されていた私を制する。子どもの言葉にびくりと怯え、私は固まる。ああ、また、我慢できなくなっていた。怒られて、しまうのだろうか。たっぷりと時間をかけて私の緊張した面持ちを楽しんでから、由奈菜は立ち上がった。
「きゃはっ、もういいよ。ルミちゃん……」
 頭を撫でられて、そのまま抱かれる。許しを得たことで、私は人でいられなくなる。
 音が鳴るほどはしたなく、少女を嗅いだ。
 私は犬で、由奈菜は飼い主。
 そうあることに、安らぎを感じる。
 
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初公開日: 2020年04月19日
最終更新日: 2020年04月19日
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壁打ちしてたら割とまとまってきたゆうぎり喜一の現パロいちゃいちゃ世界線のメモ
篠畑