此処はまるで牢獄のようだ、
 与えられはしたが何もない部屋に、その子供は居た。現在の皇帝の子供、将来はこの国を背負う人物になるべく、これから育てられる子供。
 お前は今日からアレの世話係だ、そう伝えてそれ以降は興味を失い部屋から去っていったこの国君主の事など頭の隅に追いやり、部屋の中心でぼんやりと座る子供に近付く、幼い子供は突如現れた自分を警戒するどころか、興味もないのか、手元にある分厚い書物の表紙をぼんやりと眺めているだけだ。
 この位の子供に読ませるような内容の本じゃないな、と溢しつつも子供の近くによれば、ようやっとその幼い顔が上げられる。目を惹きつけてやまないヘテロクロミアがこちらに向けられ、成る程あの愚鈍な王が嫌がる訳だ、異色の瞳は幼いながらも目を惹きつけ、そのかわりに中身がない。
 それもそうか、まだ幼いのだから。これからあらゆるモノを入れて満たしていくのだから、それは例えば親からの愛であったりするモノだが、残念ながらこの子供はそれすらも与えられる事はないようだ、その代わりとして、自分が呼ばれたのだろう、
「はじめまして、小さなワタシの主」
「……」
「今日から、ワタシがあなたの家族です」
「……かぞく」
 ぼんやりとこちらを見上げ、首をこてんと傾げた小さな主は年相応で、中身がないと感じたのは間違いだと己の中で訂正した。
 中身がないのでは無く、小さくて見えないだけだ。これから大きくなっていくのだろう、その小さな身体が成長するのと共に、
「この部屋は何もありませんから少し物を増やしましょう、何が欲しいですか」
「……なんでも」
「そうですか、それならワタシが見繕いましょう、大丈夫。欲しいものはこれから見つけていけばいいんです」
 そのかわりに、もし欲しい物が見つかれば、ちゃんとワタシに伝えて下さいね。
 小さな主の前に座り目を合わせて伝えれば、その双眸は大きく見開き、そして細められる。何もないこの子供に、自分が知る限りのモノを、ほんの少しでも与えられれば幸いだ。
 
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初公開日: 2020年04月17日
最終更新日: 2020年04月17日
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