31.あれはアンドロメダ。あれは、ペルセウス。君や私を照らしてくれる星たち。けれど、決して手を貸してはくれない光。
ねえ明瞭、国を裏切ろうだなんて考えないで。大丈夫、きっと解放されるから。私の未来視が外れた事は一度もない、そうだろう?
(明解)
32.他の鳥とは違うとて、所詮はただの雄梟。どれだけ愛し合おうとも子は生せないのだと、君が私を見つける度に泣きながら伝えて。分かっていると私の涙を拭いながら笑う君に身を預けるのは、これで何回目だっけ。
何度も去ってはまた私を愛してしまう君を、バカみたいに同じ巣で待ってしまうのを、私はあと何年繰り返せば君に行かないでと言えるのだろう。
(鷹梟)
33.誰が何と言おうと俺の神はお前だけだ。貴方がそう言うのと同じように、誰が何を企てようと私が守るのは王、ただ一人。
さあ手を取って。この先がどんな茨の道であろうと、貴方が進むと言うのなら幾らでも切り拓いてあげよう。貴方にとっての唯一神が、消える事になろうともね。
(ファラ月)
34.イライ、イライ、可愛い俺の恋人。イライ。こっちを向いて。こっちを、向いてくれ。
ああ、ああ、動かなくなってしまった。可愛い俺のイライ。
(荘園?)
35.その指輪に罪悪を感じるのならば、君が苦しまないように。喜んで道化を演じようとナワーブはイライに微笑みかける。大丈夫、痛みへの耐性はある方だから。心を殺すのは得意だよ。どうか気づかないで。
(荘園)
36.潮風を浴びてパサパサになった髪を梳く。奮発して予約をしたオーシャンフロントの部屋。太陽に照らされて光り輝く二人の目の色だ。
せっかく誰にも知られていない場所だからと誘う浮かれたイライに、溜め息を吐きつつも応えてしまうナワーブもまた、浮かれているのかもしれない。海に行くのは後でも、明日でも。時間ならたっぷりある。
ここはお互い以外の全てを捨てた二人が逃げられる所まで逃げた、誰も知らない場所なのだから。
(?)
37.はジめましテ、ごしュジンさま、めいれいはなアに?
機械好きの友人に、貰い物だけど怖いからあげる!と押し付けられた人型のロボットのネジを巻いたら動き出した。ナワーブはスマートフォンを片手に、アテネとネジに書かれたカラクリを警戒する。嫌な音を鳴らしながらカラクリはぎこちなくしゃがみ込んで、祈りを捧げるように両手を合わせた。
いウこと、きかないと、ミなわたしをこわす。こわされるのは、いや。ユウこときく、ミなよろこぶ。ネえ、わたし、いいこ、できテる?
(現代傭アテ)
38.隣のオカズの音声さえも聞こえてしまう薄い壁を気にしながら、同じ言葉を繰り返すカラクリを必死に黙らせる。捨てない、壊さない。約束する。
やがてネジが回りきり静かになった機械を睨みつけて、それから彼の言葉を思い出した。
言う事を聞かないと、皆私を壊す。まさか、良くないものが組み込まれているなんて言わないよな。たとえば、何らかの臓器だとか。やめてくれよ。
(現代傭アテ)
39.知らないうちに悪事の片棒を担がされ、掛けられた手錠に絶望する。そんな夢を見て慌てて目を覚ますも、飛び起きるはずだった体は何かに阻まれベッドに沈んだ。重みの原因に目を向けると、壊れたテープが如く言葉を繰り返していたポンコツが上に乗っていて。
ゲンコツをお見舞いすればその硬さにナワーブの方がダメージを受けて、知りたくはなかった熟女好きな隣の住民に嬉しくもない壁ドンをプレゼントされる羽目になった。
昨日はネジで動いたくせに。こいつ、一度解体してやろうか!
(現代傭アテ)
40.ミて、わたし、そウジおぼえました。いウこときいテます、すテない?
ナワーブは頭を抱える。崩れた本の山。割れた食器。三代目の掃除機。それらにではない。己の為だとしても、役に立とうと必死なポンコツを可愛いと思い始めている、そんな自分にだ。いっそ感情のない人間になれたなら、バラバラにして捨ててやったのに。
明日もまた肺が潰されて嫌な夢を見て、飛び起きるのでさえもカラクリに阻止されるのだろう。悪くないと思ってしまっているのだから、どうしようもない。
(現代傭アテ)
41.三つ数えたら目を開けてね。まだだよ、まだ。ちょっとナワーブ? それは薄目じゃないかな。そんな人にはキスしてあげられな……、あ、いや、ええと。はは。ズルをした罰だ、君からキスをして?
(現代パラレル)
42.ナワーブと喧嘩をした。
怒っていたら、喧嘩の理由を忘れてしまった。それくらい些細な事だったのに、意地っ張りが邪魔をして。それでも結局、君が迎えに来てくれるから。あーあ、怒っていた事も忘れてしまうよ。
(現代パラレル)
43.イライを怒らせた。
先程ぶつかった相手が美人だったから鼻の下が伸びていたとか何とか。こんな時は少し放っておいて、拗ねるといつも行く図書館に迎えに行くのがベストだ。早く帰ろう。もうすぐ日が暮れる。
(現代パラレル)
44.心が視える。本人さえも知らない心の叫びが聞こえる。
死んでしまえたら楽なのに、ごめんなさい、つらい、許されたい、同胞に会いたい。イライ、助けて。いつもはあんなに頼もしい背中が少し丸まって、小さな子どものように見えた。突然抱き締めたら、不審な顔で退けるのだろうか。
差し伸べられた手を取る術を知らない、孤独な元傭兵へ。気づいて、私はここにいるよ。
(荘園)
45.甘くて、甘くて。あまりの甘さに胸焼けしてしまいそうなのに。それでも欲しくて。泣きながら俺の名を呼ぶ青年の涙を舐めて、耐えろとイライの耳を柔く食んだ。
一欠片も残さず、骨までしゃぶり尽くしてしまいたい。そう口にすれば、お前は良いよと言うのだろうな。
(?+ケーキバース)
46.真っ赤な衣装に身を包み、今宵私は森神様に嫁ぐ。滲む赤が目立たないように。
外套もなく身を震わせて、竦む脚に鞭を打つ。村の繁栄と森の命を頂く許可を得る為、年に一度、若い女が贄に出されるのだ。けれども小さな村に若者はもう一人だけ。きっと私は殺される。唯一の明かりの元へ、一歩、一歩。ふいに後ろから声がした。
「やあオニーサン、迷子?」キャパシティを超える驚きに意識が遠のく。体がふわりと浮くのを感じていた。
(チェシャ×新春)
47.へえ、贄ねえ。気を失った新春を介抱し、目が覚めるのを待ってもう一度迷子か?と問うた猫が呟いた。この森に神らしい神はいない事、贄というものに初めて会った事。それを考えると今までの女たちは、村が見えなくなった時点で逃げ出していたのだろう。
新春はぼふんと枕に頭を預ける。殺してください、帰るところはもうない。鋭い爪が喉をつつと撫でる。新春が目を閉じると、猫は青年の唇をひと舐めした。
(チェシャ×新春)
48.この森を根城にして二百年は経つらしい猫の「顔が好み」というたった一言で、青年は未だ命を繋いでいる。良くしてもらってばかりで気後れしてしまう。否、夜の誘いだけはいつまで経っても慣れないのだけれど。新春は一人頬を染めて、赤が滲んだ項に残っているだろう痕を撫でた。
(チェシャ×新春)
49.一緒に観ようと借りてきた映画のエンドロールをぼんやりと眺めて、いつこれが来るのか不安になると口にしたら、ナワーブは少し黙って。そうして私の頭をくしゃりと撫でながら、それは何十年後の話だ?なんて言って笑った。私は君に救われてばかりだ。
(現代パラレル)
50.ぱさりと布の、重力に逆らう事なく落ちる音が小さく響く。
二十六時三十七分。甘ったるいスイーツを飲み干して、緑を映したシアンが揺れた。
ナワーブ。ねえ、もっと。
(荘園?)
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