今日も元気に言語
2年前、入学式の日。
学園長に引きずられ司書である私は何故か鏡の間に立ち
生徒たちの魂が見極められ、寮が決まっていくその様子をただぼんやりと眺めていた。
時折生徒たちから向けられる視線はもうこの1年でなれきったもので、もはや羽虫以下の存在感である。男子のみのこの学校で女性、加えて誰の国でも見たことがないであろう私の服装が違和感の塊なのだ。
司書、その服なんていうの?
そう何度も問いかけられたけどこの一年間、再び私は答えることができなかった。
「司書さん、緊張してます?」
「眠いんです」
私を引きずってきた学園長に話しかけられ眉が寄る。
「私いる意味があるんですかこれ」
「男子しかいないと思いこんでいる新入生にうちの学園にだって華はあると主張したいじゃないですか」
身を翻そうとすれば袂を引っ張られてため息をつく。
華だと主張したいのならもう少し丁寧に扱っていただきたいところだ。
私が彼にほとんど逆らわないことを知っているのだからたちが悪い。
「解凍したときは私も驚きましたよ。なにしろ女性だという資料、一つも残っていませんでしたから」
「……何故封印されたのか覚えていませんからそう言われても困ります」
記憶喪失ですもんねぇ、とつぶやく男に軽く殺意が湧いてくる。
学園長に就任ししばらくたった頃、男は封印指定を受け凍結された魔法師の情報を見つけ捜索。
解凍の術式を施され目が覚めたときにはこの男が私を起こしたのだと嫌でも理解してしまった。
だが残念、封印指定を受けるほどの何かがあったはずの私は前学園長に封印された理由も覚えておらず、それどころか己の過去さえほとんど記憶にない。
全員の寮が決定し入学式が終わる。
「帰っていいですか」
「もう終わりましたし、いいですよ」
多分選別の間自分が暇だから呼んだんだろうこの男。
鏡の間を抜け、再び生徒たちの視線を浴びながら図書館にむけて足を動かし階段を降りようとしたときだった。
「ねぇ、センセイ」
双子だったために特に記憶に残っている新入生。
たしかオクタヴィネル寮に選別されていたはずだ。
「私は教師ではありませんが、どうかされましたか?」
階段の踊り場、後ろには輝くステンドグラス。
その光を浴びて振り返った司書を双子は眺め、一方が口を開いた。
「呼び止めて申し訳ありません。フロイドがどうしても貴女に聞きたいことがあると」
聞きたいこと。
どうせ服のことだろうと思って生返事を返した。
「センセイじゃないならなんなの?」
こてん、190cmの男だというのに首を傾げるとどこか愛嬌がある生徒だ。
それが聞きたかったわけじゃないだろうに。
「図書館で、司書をしています」
ひのひかりがこんなに似合わない人はじめて見た、そう告げてくる男に失礼な表現もあったものだなと逆に感心してはぁ、と再び気合の一切入っていない声が出た。
「フロイド、聞きたいことがあるんでしょう」
「あ~うん、そうそう。あのね、司書ちゃん」
生徒は双眸を軽く細め、口の端を釣り上げて笑う
「司書ちゃんってこの世界の出身じゃないよね?
「ねぇ司書ちゃん」
後ろから回された腕。
「司書ちゃんってば」
後ろからかけられる言葉。
2年前の事を思い出していた自分に腹が立って一切反応せずぺらり、とページを捲る。
「さすがに拗ねるんだけど〜」
彼は私を司書、とそのままの名前で呼ぶ。
すべての人を海の生物に例えてしまう彼がそう呼ぶのはかなり異質なことだ。
そこまで思考が至ったところで息を吐き本から視線を上げた。
「やぁ〜っとこっち向いた〜」
嬉しげに頬を緩ます彼に何がそんなに嬉しかったのだ、と少し首を傾げて。
「読み終わっただけだからどいてフロイドくん」
「やだ。どうせ新しい本もってきてそっちのけになるんでしょオレ」
「…………。」
「だぁ〜め、この前もそんなことないって言うから一回信じてあげたのに裏切ったの司書ちゃんじゃん」
裏切ったも何も約束していなかったと思わんかねフロイドくんよ。
「私と君がこうしていて何になるの」
「お喋りできるじゃん」
「……授業は」
「まだ20分あるから問題なし〜」
なんとかうんとかカレッジめ、名前も長いが休憩時間が長すぎる…!!
「ねぇ司書ちゃん。オレずうっと聞きたかったことがあるんだけど」
ふ、彼の声のトーンが落ちる。
……苦手だ。
真実を暴くんじゃなく、抉りだそうとするこの声音が
出会った時のあの言葉を思い出させる。
「司書ちゃんって」
「――何歳?」
「女性にその質問はどうかと思う」
間髪入れずに返してやった。
そう、彼はこういうところもある。
真面目な声で私を怯えさせたあとになんてこともない問を放り投げるのだ。
え〜、といいながら腕がようやく緩まったかと思えば身じろぎされて青の頭が膝に乗る。
……重い。
190cm台の男が重くないわけがない。
「だって30年前も司書してたんでしょ?」
「……凍結されてた時の話がしたいならそう言えば?」
あはは
笑い声。
「答えてくれないくせに」
「凍結中の記憶とここに来たときのこと以外覚えてないもの」
02
あぁそういえば。図書館には司書さんがいますよ。
ある日の昼下がり。
唐突にそう言われあんぐりと口を開いた。
「え?」
「なんです、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして」
ぜひとも自身の行動を思い出してから言っていただきたかったセリフである。
「理事長私の世界に戻る方法調べてくれてましたけど」
図書館で。
「調べなくても司書さんがいるなら聞いたほうが早かったのでは」
ぴたっ、動きを止めた理事長は冷や汗をダラダラと垂らしながら一歩後退。
「いや?そこは君に対する誠意といいますかね?人に頼るだけでは良くないと思いまして?ほら私優しいので!」
決してそれが思いつかなかったとかいうわけではないんですよ、ねんを押してくるのでウンウンとうなずいて一言。
「で、正直なところ?」
「あーー……司書さんは特別な雰囲気をもっていまして些末事で呼び出すのが忍びなく」
私の世界に帰るという最終目標些末とか言われた気がしたんだが気のせいだろうか。
図書館も何度か行ったのに司書さんには会わなかったなと思わず首を傾げた。
「あとは最近できた役職ですので意識になかったといいますか。いえ本当に決して忘れていたわけではないんですよ」
「最近って……この学校じゃ珍しくありませんか?」
伝統と伝統でできていて伝統に縛られている学校なのに、そうぼやけば君本当最近毒舌になってきましたねと理事長。
「司書という役職はもともとあったんですが30年前になくなって3年前に復活したんです」
司書さんは生徒にも大人気ですから君も意識していけばわかりますよ、そう告げられて傍でツナ缶を頬張っていたグリムとともに図書館へ歩き始めた。
カット
Latest / 22:05
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
twst長編ゆめの序章かな
初公開日: 2020年04月16日
最終更新日: 2020年04月17日
ブックマーク
スキ!
コメント
🦈の言語を取得していないキャラ崩壊以前の話言語崩壊がおこる