ひらり
目の前で落ちてきたものを見て沖田は目を見開いた。ひらひらとレースがついた、薄ピンク色の布。沖田が上を見上げるとそこには「げっ!」と嫌そうな顔をした神楽の姿。
「……なんでィ。これてめぇのかィ? 」
「……そうアルヨ」
そういえば、神楽が最近一人暮らしを始めたとこの間銀時がぼやいていた気がする。
一人暮らしで洗濯物をしているときに運悪く風が吹いてブラジャーが下に落ちた。丁度そこに沖田がきたというわけか。なんという漫画みたいな展開だよ。と沖田は突っ込みながら神楽のブラジャーを拾いあげると上から「お前なんで拾うアルカ!」と神楽が叫んでいるのが聞こえる。
「なんでィ。お巡りがせっかく拾ってやってんだろィ。感謝しろよ」
「いやいや!私がすぐに拾いに行こうとしていたネ!普通の服とかだったらまだしも、ぶ、ぶら……下着を拾うなんて変態アルカ!」
別に沖田にとってブラジャーなど、ただの布でしかない。こういうのは中身がなけりゃ意味がない。
「なんでィ、わざわざこれのために降りてくるのは面倒だろうなぁっていう親切心で拾って届けてやろうとしたのになんなんでィ」
「……じゃぁさっさと上に届けるヨロシ」
偉そうだなぁと思いながら沖田はブラジャーをつかんだまま結構年季の入ったマンションの階段へと足を踏み入れる。
ふっと手元のブラジャーに目をやるとサイズ表示が目に入ってしまった。
【E65】と書かれた数字が沖田の目に焼き付いた。
二階に上がると神楽が玄関を開けて待っていた。
「……お前に拾われるって最悪アル」
「いやおめぇ、女の一人暮らしだったら少しは気をつけろ。俺だったからいいもの。どっかの変態だったら持ち帰られていたぜィ」
沖田はふと視線を下にやり神楽の胸元を見てしまう。
(これがEカップ……)
「……おまえどこ見ているアルカ?さっさと渡して去るヨロシ」
「……いやぁ。あんなにツルペタだったやつがここまで……」
言い切る前に神楽の拳が沖田の頬をかすめる。
「あっぶねぇなぁ…」
「お前がセクハラ発言するのが悪いアル」
神楽は沖田が持っていたブラジャーを奪い取り、「さっさと帰れ税金ドロボー」と部屋に戻っていく。
(わざわざ拾ってやったんだからもうちっとなにかねぇもんかねぇ……しかしE……意外と着痩せするタイプなのかねぇ)
正直に言うと、ブラジャー自体には何も思わなかった。でも、そこに書いてある表記が沖田の目に焼き付いたまま離れない。
***
それからというもの、沖田はまともに神楽の顔を見ることができなかった。というか姿をみるだけで(E……)と頭に浮かんでしまうのだ。