夢小説の続き書く
 フアハトの咥内に生えている扇動する逆棘は、よく見ると鳥類の鉤爪に似ている。そのせいで口から無限に湧き出てくる肉体と内臓をこね合わせた《《なにか》》は常にどこか裂けている。
 肉体を得たヴォルデモートの主食はそれしかなかった。
 もちろんフアハトがそれを吐き出す様子それ自体も悍ましいものだが、食べるとなるともはや正気ではいられない。しかしそれでも、食べる他なかった。肉体、つまりは崩壊し続ける器を維持する必要があるからだ。
 フアハトのだす食事を前にして、遠のく意識をぐっと堪えて無心で口を開けて、閉じる。開けて、閉じる。頭の中には根源的恐怖と拒否感と嫌悪感が渦巻き、心の底から吐き出したいと願う。それでも喉へと飲み込むと次に訪れるのは多幸感だ。
 冒涜だ。
 これは感性に対する、人間の理性に対する冒涜だ。
 フアハトは幸福を感じるヴォルデモートをみてりるりるりるりる…と嘲笑う。そして食事を終えると、フアハトは胎児ほどの大きさのヴォルデモートを持ち上げて胸に抱く。
 嘴の下にある無数の萎びた乳房がヴォルデモートの頭部を撫ぜ、開いて欠けた肋骨部分に体が埋もれる。
 肋骨は剥き出しで、中には大きな目玉となにかよくわからない臓器らしきもの、そして古い木のようなものが詰め込まれている。大きな目玉はヴォルデモートのことをただじっと見つめている。
 その虹彩は特定の色を持たず、ヴォルデモートが緑だと思えば緑に見えたし、赤だと思えば赤に見えた。慈愛に満ちていると感じればそのように見えたし、敵意を感じればそう見えた。剥き出しの眼球はぬるりとしていて、ほんの少しだけ温かい。
「クルクルクルクル…ああ…ヴォルデモート。おまえは…なんだかとてもなつかしい」
 なぜ異形が他者を胸に抱くのか。
 よくわからない。単によく観察したいだけなのかもしれないが、その抱くという行為自体にどこかやすらぎを覚える自分がいる。
「ヴォル、デモート…おまえ、分けたな。魂を」
「…」
 なぜわかる?という質問はファハトに限れば愚問なのかもしれない。やつはやはり、りるりるり…と嘲笑った。
「痛みが鈍いのは幸いだ。なくたむ…だか、クルクルクルクル…おかしな事を考える魔法使いだ」
「分霊箱は俺様の知る限り唯一擬似的な不死を実現する手段だった」
「不死…不死といったのか?りるりるりるりる…笑いぐさだ、ヴォルデモート」
「…フアハト、おまえは不死に憧れぬのか」
「ぬぇはとぁ…る…愚問だ」
 確かにそうだ。おそらくこいつは不死をすでに手にしている。すでに手にしたものに憧れなど抱くものか。
「おまえ、それっぽっちの欠片では、それが限界だ。自由に動き回りたいのなら、新鮮な肉体ボディーが要る」
「…ではお前の吐き出すそれは何だ?」
「ぬ…これは……古い」
 この異形の体は一体何でできているのだ。全く何もわからない。口から出てくる内臓と無数の眼球には限りがないということしかわからない。
「すクぃーーく……だがおれは、ここから出れない。クィルルルル…とても強い縛りがある」
「結界…いや、中にお前がいるのだ。封印か。それであたり一帯生き物がいないのか」
「おまえ、魔法使い。おまえが一言許しをくれれば、おれはここからでれる」
「お前を出して、戻ってくるという保証は?」
「クルルルルルル…ばかなことをたずねる魔法使いだ」
 肯定とも否定とも捉えられることを言ってフアハトはヴォルデモートをかかえ、外にでた。
 来たときと変わらず、木々の間から青い光が差している。湿度も気温も、何もかも変わらない。まるで時間が止まってしまったかのようだ。
「よく考えるといい。ここでは、くぁた…時間にあまり意味はない」
 ヴォルデモートはフアハトに言われたとおり、よく考えることにした。
 この異形を閉じ込める奇妙な環状の結界は誰が張ったのか。これまで古今東西、時代を問わずには学べる限りの魔法を学んだつもりだった。しかしフアハトの存在もこの結界も該当する術はない。
 強いて言うならば遙か古代の原始魔法に近いだろうか。しかし魔法使いが許可すれば外に出れるというのもまた変な話だった。
 フアハトが契約により使役される使い魔的なものならば封印する必要はないし、封印せねばならぬような魔物ならば、許可を出せば結界の外へ出れるなどという抜け道は必要ない。
「ヴォルデモート…聞かせてくれ。なぜ魂をわけた?なぜ、そのようなかたちになった?クルクルクルクル…ヴォルデモート」
 フアハトはヴォルデモートが身動き取れないのをいい事に、胸に抱きながらしきりにそうやってたずねる。楽しげに、嫌らしく笑いながら。
 はじめは答えるのに躊躇していたが、ギョロギョロ動き時に不快に脈動する眼球と臓物に嫌気が差し始めた頃、ぽつりぽつりと素性を話した。
 フアハトは一体どれほど長い間この結界に閉じ込められていたのだろうか。世界を揺るがした大戦、疫病、災害。何もかも知らないようだった。
 フアハトの美しい虹彩はヴォルデモートの話を聞くたびに色を変える。まるで語り手の心情が反映されているかのようだった。
 だがヴォルデモート、闇の帝王を名乗る魔法使い。それごときでこの異形に心を開くようなやわな精神ではない。正気を失う一歩手前まで来ても、かならず自分を奮い立たせ、狂気を打ち消す。それが今のヴォルデモートに唯一できることだった。
身体が…
自由に動く体がほしい
「フアハト…俺様に身体をよこせ」
「それは許しととっていいのか?」
「ああ。ボディーを集めるために、ここから出て探してきてくれ」
「いいとも」
 フアハトの目が半月形に歪んだ。微笑んでいるのだろうか。そしてヴォルデモートを窖に残し、フアハトは出ていった。
 戻ってこないのではという不安が胸をよぎった。だが、おそらくやつはきちんと戻ってくる。許可の出し方を肉体集めに限定したからだ。
 あれがどういった存在か答えは出せないが、契約や許しに対し厳密であると推察できる。
 フアハトの残していった肉の塊の上で微睡んでいると、外からどさどさと重たいものを落とす音が聞こえた。フアハトは戻ってきた。そしてヴォルデモートを窖から出すと、平たい岩の上にまとめてある塊を指さした。
「これでお前の体をつくれる」
 倒れているのは中年の男女と老婆、そしてまだ十歳にもなってない男の子だった。どれもアバダケタブラを食らったあとのようにポカンとした顔をしている。
「近くに集落があるのか」
「近くはないが、近場から調達した」
「…それで、俺様はどうすればいい」
「なくたむ…耐えるのだな」
 フアハトはそう言うと、積み上がった遺体を横に退け、中央にヴォルデモートを横たえた。天には青白い光しか見えない。
 まるで生贄の祭壇だ。
 何が始まるのか、何に耐えるのか。想像を巡らせるより先に枯れ木を折るような音と血の匂いが漂ってきた。見ると、フアハトが老婆の上腕をきれいに2つに折りたたんていた。
「とぅー…ィーーーク…久々だ。じつに…」
 そう言うと老婆の遺体をどんどん、実に手際よく折り畳んでいく。まるでもともとそう曲がるかのように。しかし実際は骨がおぞましい音を立てて皮膚を裂き血飛沫を撒き散らして畳まれていく。
 やがて腕は蛇腹にされて肩から外された。フアハトは老婆の喉に指をつぷりと突き刺すと、ファスナーを開くように一気にに指を下に引いた。腹膜が皮膚ごと裂けて内臓がこぼれだし、周囲に一気に血の匂いが充満した。
 フアハトは内臓を手で掬い出して岩の上に丁寧に並べた。血や粘液のついた部分は丁寧に纏った襤褸布で拭い、時に色の悪そうな部分は爪で切断し、別に置く。
 続いて中年の男。これは腕はそのままにして老婆と同じように腹を捌いた。そして頭部に爪を這わせて、こりこりこり…と丁寧に頭蓋骨を切断していった。感心したことに、髄膜には一つも傷がついていない。フアハトは脳を取り出し、また丁寧に脇によけた。
 人間は解体してみればかなり≪ちらかる≫。かなり大きな岩の上がもう一杯だった。
 フアハトは折りたたんだ老婆の腕から割れて皮膚を突き破った骨をひょうひょいと取り出し、男の空っぽの腹部に入れた。そして老婆の体は一握りの髪と眼球、足を残して一度地面に置いた。
 次に女の死体を取り上げると、丁寧に脂肪を取り除き、女性器と肝臓、腎臓を捨てた。筋肉は丁寧に切り取り、取り外し、また男の腹部に放り込む。そして顎を無理やり開かせて、歯をどんどん抜いていった。
 そして少年だ。フアハトは十歳にも満たない少年の体から四肢を捥いだ。そして首から上にぐるりと切れ込みを入れて一気に顔の皮を剥いだ。
 悪夢というよりは、悪趣味な幻覚を見せられている気分だった。しかしこれは現実だ。
 ヴォルデモートは死体なら何体も見たしなんなら作ってやった。しかしこんなに執拗に解体されていく様は見たことがなく、くらくらとめまいが襲ってきた。
 フアハトは人間で人間を作ろうとしている。
 そしてヴォルデモートの体に手を伸ばす。大きな、猛禽の足のような鉤爪付きの手でヴォルデモートを鷲掴みにすると、開いた男の胴体に入れた。
 するとフアハトは体をぐう、と屈めてヴォルデモートの目の前に、一番赤くぬらぬらと光る目玉を持ってきた。じろり、と虹彩が輝く。自分の瞳の色がわかった。人間の中身と同じ、赤。
「クルクルクル…ここからだ」
「かまわん、やれ」
 ヴォルデモートにはフアハトが笑って見えた。
 そしてフアハトは嘴を開き、ヴォルデモートの右肩から腹にかけて噛みついた。そしてその咥内にある無数の棘がぎっちりとヴォルデモートの弱弱しい皮膚に喰い込み、絡みついた。そして、
「ッー…!」
 バリっという皮のはがれるいやな音がして、頭が真っ白になった。悲鳴は上げなかったはずだ。しかし、もう自分がどこにあるのかわからなくなるくらい痛かった。これまで感じたすべての痛みを上回る痛みだ。
 フアハトは間髪入れず、ヴォルデモートの口の中に鋭い鉤爪を突っ込み、舌を探し当てる。舌を根元からがっちりつかむと、もう一方の手を無理やり口の中に突っ込んだ。とてつもない痛みが再び襲ってきて、ヴォルデモートはくぐもった悲鳴を上げた。次いで歯茎に次々と、あのどこか酸っぱいようなキンとした痛みを感じた。
 ようやく口から手が引っこ抜かれたと思ったら、次は目の前にばっかりと開いたフアハトの口が見え、ついにヴォルデモートは気絶してしまった。
回想
 
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ななし@0d0f14
みてます♡
04:06
すをー
ログインできているのか…?
04:11
すをー
できてた
05:19
Yog
おお~なんかわかってきた
06:35
すをー
えもい…いやエロい…?雰囲気だけで既に好き…
08:04
すをー
寝ます!お体に気をつけて執筆頑張ってくださいねー
08:19
Yog
すをーさんありがと~おやすみ~
13:39
ななし@e82f91
不気味なのに何故か引き込まれる…………
22:06
区星
すご…………すご………
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向き
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てすと
初公開日: 2020年04月13日
最終更新日: 2020年04月13日
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