自室で
なにしてたの、とスピーカーの向こうで声がする。
「寝てた」
『ふうん』
「アオイは?」
『お店、手伝い終わったところ』
中途半端に閉められたカーテンの隙間から、そうきつくない西日が入り込んでいる。ベッドから右手だけを出して覗くスマートフォンの画面に、幼馴染の顔と、よく知る彼女の家の様子が映っている。地域に根付いた、気のいい定食屋さん。
『大学で友達ができたんだって?』
「なんで知ってるの?」
『しのぶさんに聞いた。よかったね』
「うん」
力なく答える。午睡から醒めたばかりで、頭が少し重い。
『どんな子?』
「毎日凝った髪型をしてるの。編み込みしたり」
『へえ』
「華道部に誘ってくれて」
『華道部? ないって言ってなかった?』
「あった。私がチラシとか、見逃してただけだった」
解像度の粗い画面のアオイが、少しだけ笑ったように見える。
『よかったね、女の子だけの大学に、ないってことはないわよね。流派は?』
草月流、と答える。難しい? と聞かれたので、よく分からない、と返す。
「いろいろ違うから。高校の頃の部活とは」
『そうよね。でも楽しそう』
「そう?」
『うん。なんか変わったみたい』
「なにが?」
『カナヲが。なんかたくましくなったね。一人暮らしを始めたからかな』
アオイの言葉に、思わずベッドから起き上がる。