カーテン越しに差し込んでくるひかりに誘われて目が覚めた。すぐそばで穏やかな呼吸の音が聞こえてくるから、年の離れた最愛の恋人はまだぐっすり眠っているらしい。枕元のスマートフォンに手を伸ばし、液晶画面を確認する。どうやらまだアラームが鳴るよりもかなり早いようだ。せっかく早く目が覚めたわけだし普段より少し豪華な朝食でも用意して、まだ夢の中にいる彼女を喜ばせてあげようか、なんて考えながら慎重に体を起こし、音をたてないように注意しながらベッドを抜け出そうとしたとき、引き留めるように何かが俺の腕に触れた。自分のものとは対照的な、白くてちいさな手。持ち主が誰かなんてすぐに分かった。
「れぇくん、どこいくの」
「早く目が覚めたから、朝食でも作ろうかと思ってな」
「……だめ」
「なにが」
「もうちょっと、」
「お前は寝てていいよ。昨日も遅くまで課題だのなんだの、いろいろやってたんだし」
「ちがう……、れぇくんも、いっしょ」
「俺も?」
「もうちょっと、いっしょに、ねるの」
眠たそうなゆるゆるの声で、いっしょにねるの、ともう一度繰り返してから、彼女はくいくいと掴んだままの俺の腕を引っ張って、まだ温かさの残るベッドに引き戻そうとする。年下のおんなのこの、しかも寝起きでろくに力の入っていないそれを振り払うのは簡単ではあるけれど、あまえた声でもう少し一緒に寝ていたいと強請ってくる恋人を無碍に扱えるほど、降谷零という男は非情ではない。というかむしろ、最愛の恋人のかわいいおねだりに、内心喜んですらいた。掴まれているところから伝わってくる体温が愛おしくて、とろんとした瞳に見上げられていることがうれしくて、彼女を力いっぱい抱きしめたくて仕方ない。かわいい、すきだ。
「れぇ、くん?」
「……そうだな、もう少し寝ようか」
「うん」
つい数分前に抜け出したばかりのベッドに戻って体を横たえると、きい、と軋む音がした。そろそろこのベッドも買い替えるべきかもしれない。頭の片隅でそう考えながら、ちいさな体をきゅう、とまるめている恋人に手を伸ばす。すると彼女はもぞもぞと動いて俺の腕の中にすっぽり納まった。微かにあまい香りのするピンクブラウンの髪に指を通しながら、さわり心地のいいパジャマに包まれたぬくぬくの彼女をゆるく抱きしめて、目を閉じる。
「……しあわせ、だなあ」