なんとクソッタレな運命だと思う。
伝承とかなんだか知らないが、俺の目には時折『未来』が見えた。
でも、望遠鏡で遠くの星々をじっと見るような、そんな綺麗なもんじゃなくて、ジャミングのように突然現れては俺の視界を目いっぱい殴りつけてくるような、そんな乱暴で不躾な力だった。
だってなぁ、考えてもみろよ? 余った菓子が手元に一つ、食べる気もなくて、それを気まぐれに顔見知りのこどもにやるところ。そんな些細な出来事の合間に、そいつが登った木から滑り落ちて、頭を打って死ぬシーンが視界を埋め尽くして、すぐに消える。そうしてから見たそいつの屈託のない笑顔が、どんだけ苦々しく感じることか!
そんなのが常日頃だから、人と関わるのは億劫だった。どうにか関わらない立場をふらふらと探して、たどり着いたのは月を信奉する教会の、聖職者だった。
先に言っておくが、俺は太陽を信仰していたわけではないし、ましてや月の神秘を信じているわけでもなかった。だけど、この国では太陽の神を崇めるやつがほとんどで、月を信じるものは少なかった。だから教会に来るやつは少なかった。そして、月の聖職者はそう人と関わるもんじゃなかった。俺には、好都合だったんだよ。
あいつと出会うまでは。
あいつと出会った日のことは、よく覚えていない。いや、あの時見た『未来』だけを覚えているんだ。あのせいでそれ以外の記憶はほとんど吹っ飛んでいる。
前後もよく覚えていなくて、何があったんだか。
……その日、俺は酒を飲んで、集会が終わったあとの教会に入って。よく周りを見もしなかった俺と、ぼーっと道の真ん中に突っ立っていたそいつとぶつかった。
盛大に転んだ俺は、何か言ってやろうと顔を上げて。緩慢に振り返ったあいつと、目が合った。
そして、『未来』を見た。
――太陽のない暗い空。青白く輝く地表。冷たい光に市井は右往左往し、そして、太陽を戴くはずの神殿は闇に塗りつぶされ、そこに、『あいつ』だけが月の光の中、そこに"居る"。
視界が現実に引き戻されたとき、目が合ったそいつに気がついて、ぞわっと寒気が走った。開きかけた口が、はくはくと震え、思わずこう言った。
「お前、何だ」
そして、そいつは言った。
「……ああ、そうだ。思い出した。俺は月神だった」
それを聞いて、もう、瞬きさえできないほど、俺は体の自由を失った。
――ああ、なんて、クソッタレな、素晴らしい運命なんだろうな! 本当によぉ!