とりま一二三×幻太郎の初夜でも書くわ
いけ好かない男に何故か惚れて、交際に至って一か月。これといって大きな変化は起きていなかった。ホストという職業柄向こうからの連絡はマメであったし、文字を書くことを生業としている為に返信もさほど苦にならず、電話は生活時間のズレから少なかったがそれなりにやり取りはコンスタントに行っていた。
「これうめぇ!」
最初こそ何かを嗅ぎ取って家に出入りするのを遠慮していた帝統だが、最近では冷蔵庫の作り置きの味を占めてまたこうしてやってきている。それは別にいい。彼……一二三にも説明はしてあったし、出入りする友人に目くじらを立てていたら男と交際していながら違う男と同棲している自分の立場はどうなる、と彼にしてはまともな返しも頂いた。
「帝統、いつまで居座るつもりで?」
「あー、んー……雨降る前には帰るわ」
日も沈みかけた夕暮れ、雨の匂いが忍び寄る空を窓越しに見上げた帝統は律義にご馳走様と手を合わせて食器をシンクへと運ぶ。
「宿にアテがあるんで?」
「ねぇけど?」
「なら泊まっていきんしゃい」
明後日にはシブヤでちょっとしたラップバトルがある。見世物に近い非公式なものだが風邪を引かれてはチームメイトとしても困ってしまう。
「えー……いや、流石にちょっとソレは」
帝統の歯切れが妙に悪い。泊まるのだって一二三と交際してからは無かったがその前は出て行けと尻を蹴飛ばすまで入り浸っていたような男がだ。
「何か問題でも?」
「問題っつーか、客用の布団ってホストも使ってるだろ」
「きちんと干してありますよ」
「そうじゃなくて……その、アレだろ」
しどろもどろな帝統。果たして何が言いたいのか。この男は金銭感覚はおかしいしアドレナリン中毒のギャンブラーだがそれ以外では結構まともな思考回路を有していたりする。
「だ、だから……そういう、恋人同士の……みたいなの、使いたくねぇんだよ」
文字通り修羅場を潜ってきたとはいえ若干二十歳の青年は頬を赤くしてぶっきらぼうに言い捨てる。あぁなるほど、そういう事か。
「大丈夫ですよ、そういう事まだしてないので」
そう答えると帝統は目を丸くして五秒ほど硬直して、マジで?と一言だけ呟いた。