(今日はあてが外れたか……)
長谷部はひっそりとため息を漏らした。ダイナミクスご用達のこの店ではフリーのsub達が笑いさざめいている。なんでも今日は超VIPのDomが来店するという。sub達がその時を今か今かと待ち構えていた。長谷部の周りにいるDom達は「今日は来るんじゃなかったなぁ……」などと言って既に今日のプレイは諦めモードに入っている。長谷部もその仲間に分類されるだろう。
店のドアが開いた。途端に空気が変わる。sub達が色めき立つ。
入ってきたのは長身でしっかりとした体格、キリリと男らしい美貌。右目を隠すかのように伸ばされた前髪の間から黒い眼帯が見える。
(ほう……)
長谷部は入ってきた男を極上のDomであると認識した。こいつが噂の超VIPなのだろう。男は店内のsubが集まっているスペースを一瞥すると、Dom達がたむろしているカウンターの方にやってきた。そしてなぜか長谷部の隣の席に腰を下ろす。長谷部は試しにGlareを向けてみようかという悪戯心が沸いたが、既に男が放つDomのオーラが圧倒的過ぎたので無謀な挑戦は止めておこうと思った。その時、男が長谷部の方を向く。
(しまった……っ!)
男と目が合ってしまった。男の目がスッと細められ、長谷部を値踏みするかのように頭の先から足の先まで視線を動かしている。そして何かに気付いたようだ。