練習:隠喩・直喩・擬人・共感覚法
 遂に先生はあのネメシスを打ち倒した。歓声で大地が揺れる。皆の喜びの声に囲まれて、先生とクロードは陣地へ帰還した。それからガルグ=マクへ戻り、戦いに参加した皆は傷の手当てを受ける。回復したものから戦後処理にあたり、戦いが終わったというのにしばらくの間は慌ただしい日々か続いた。そんな中、ある日突然クロードの姿が消える。誰にも、何も、何処へ行ったかも告げずに、クロードは居なくなった。
 風の行方は誰も知らない。
(隠喩・ローレンツ視点)
「君の瞳はまるで宝石のように綺麗だ。不服だけど、それは認めざるをえない」
「そんな甘ったるい台詞、俺にじゃなくて女子に言ってやれよ」
「だけど嫌いじゃないだろう?」
「……っ」
「愛しているよ、クロード。君の全てが素敵だと思ってしまうくらいには」
 まるで愛されているみたいだ/みたいも何も、その通りさ
(直喩・会話文)
 クロードと言い争いをした。学生の頃は仲が悪く、似たようなことはしょっちゅうあった。昔の僕ならば、全てをクロードのせいにしてしまえただろう。だけど今回はそういう話ではない。先の戦いで、クロードが僕を庇ったのだ。後方にいた僕は黒魔法を使用すべく、呪文を唱えていた。そんな僕を狙って敵の弓兵が矢を打った。当然、詠唱中の僕はその矢に気が付いていても、避けられない。きっとあの矢は僕に当たるだろう。そう思ったとき、ドラゴンに乗ったクロードが僕の前に立ちふさがった。そして、僕を射るはずだった矢がクロードの身体に刺さる。クロードの背中がよろめいた。しかし、クロードはドラゴンの上で体勢を立て直すと、すぐにその弓兵へ反撃の矢を射った。程なくして、戦いは僕らの勝利で終わる。その後、マリアンヌさんの治療を受けているクロードに僕は詰め寄った。
「何故、僕を助けた!?」
「何故って言われてもなあ。あの場ではそれが最適だっただけさ」
「だからと言ってわざわざ君が傷つく必要はなかった。僕だってあのくらいは耐えられた!」
「おいおい、俺はお前を助けたんだぜ? 礼は言われても怒られる筋合いはないさ」
「いいや、ある。そもそも君は自分の身を蔑ろにし過ぎているんだ。あの場でわざわざ君が僕を助ける必要はなかった」
 クロードと僕は、マリアンヌさんが止めに入るまで言い合いを続けた。その後、二人そろって先生に叱られた。それ以来、まだクロードとは口を聞いていない。別に僕はクロードに守られたことが不服だったわけでもなければ、自分ならなんとかできると驕りたかったわけでもない。ただ少しでも、クロードに自分の身を大切にして欲しかっただけなのに。
 僕は気を落ち着かせるために、先ほど自分で淹れた紅茶を口に付ける。その紅茶は少し渋く、僕のこの気持ちを表しているかのようだった。
(直喩・ローレンツ視点)
 口付けは不思議だ。ただ唇同士をくっつけているだけなのに、どうしてこんなに気持ち良いのだろうか。俺は目の前で少し緊張した面持ちで瞼を閉じて寝台の上に腰かけているローレンツの唇に、己のものを合わせる。ぴったりとくっつくと、びくんとローレンツの肩が震えた。面白い。気を良くした俺はローレンツの上唇を食む。されるがままのローレンツは驚きで薄く口を開けた。開いた唇の間に俺は自分の舌を差し込む。歯茎をなぞるとまた震えるローレンツの肩。ああこいつ、やっぱりこういう触れ合いには慣れていないのだろうな。
(ボツ・クロード視点)
 ローレンツに押し倒される形で、二人して寝台に雪崩れ込む。ローレンツの手が俺の上着を脱がしにかかるので、俺もローレンツの前合わせをはだけさせる。二人そろって上半身が裸になったところで、再びローレンツは俺をシーツの上に寝かせて覆いかぶさった。
 ふいに耳元にローレンツの唇が触れる。
「クロード……」
 最大級に甘ったるい声で、ローレンツが俺の名前を呼ぶ。
「よせよ」
 そのくすぐったさに俺は逃げるように頭を逸らした。しかし、珍しくローレンツは俺を逃がそうとしない。逃げた先まで追い掛けて、再び俺の耳に注ぎ込む。
「逃がしはしないさ、クロード」
 少しばかりの恨みも籠っているような気がしたが、やはりその言葉尻は甘い。まるで砂糖水とはちみつをともに鍋に入れて煮詰めたような甘さで、頭がくらくらする。そんな甘ったるい菓子には慣れていない俺には刺激が強い。だけど、病みつきにもなってしまいそうだった。
 俺は逃げるのを諦めて、ローレンツの背中に腕を回す。
「ローレンツ、もっと」
 もっと、お前の愛が欲しい。
(共感覚法/クロード視点)
 この地に足を踏みいれたのはいつ以来だろうか。僕がまだ10歳にも満たない頃に、母が父にこれでもかと強請って旅行に出かけたときぶりではないだろうか。戦があったというわりには街はほとんど被害がない。思い出のままだった。
 クロードが率いていた同盟軍は帝国に敗北した。その争いに参加していたリシテアさんは帝国に下り、ヒルダさんは命を落とした。そして、盟主のクロードは姿を消した。という。同盟の中で帝国派だったグロスタール家は、このデアドラ戦においてどちらに参加することもなかった。だからこの戦いの話は全て人伝に聞いた話で、詳細は分からない。もしかしたらリシテアさんに話を聞けば詳しいことが分かるかもしれない。しかし、彼女は下った直後にエーデルガルトが率いる軍に参加し、そしてそのまま皇帝の側近として未だに働き、旧同盟領には戻っていない。そのため僕はリシテアさんに会うことができなかった。
 帝国派を貫いたグロスタール家は、当主が居なくなってしまったリーガン家が所有する領地の統括を任された。実質、リーガン家は取り潰しとなる。そして僕は父に命じられ、このデアドラに来ていた。
 海と隣接するデアドラの街並みは、このフォドラの中でも特に美しいと僕は思う。幼心にこの街の美しさがずっと残っていた。リーガン家を嫌う父の前では言い出せなかったが、いつか僕はこの街に再び訪れたいと思っていたのだ。
「しかし、それがまさかこんな形で叶うことになるとはな……」
 潮風が僕の頬を撫でる。風が僕に伝える。リーガン家は、クロードは、もう、このフォドラには居ないということを。
(擬人法/ローレンツ視点)
終了します!見てくださってありがとうございました!!
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初公開日: 2020年04月05日
最終更新日: 2020年04月05日
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