設定メモ
ループもの/恋愛
*****
「転校生の、林さんです」
そう言って、中学校教師が紹介したのは一人の少年だった。
とくに目立った特徴もない、
他のクラスメイトたちと比べても大した差のない外見の生徒。
これがかわいらしい女子生徒や、容姿端麗な男子生徒であったなら、
誰もが目を引いたのかもしれないが。
少なくともこの転校生は、良くも悪くも平均的だった。
クラス全体が、興味なさげに転校生を見ている中。
しかし一人の生徒だけが、目を丸くしていた。
何度か瞬きし、メガネを拭いて、見る。
それから小さく頭をひねり、考え込む仕草をした。
彼は、この転校生に見覚えがあった。
しかし、どこで見たのか、知り合ったのか。
覚えはなかった。
その日の放課後、転校生が彼に話しかけてきた。
「あの、藤堂さん。ちょっといいかな?」
話しかけられた側の藤堂は、驚き転校生を見る。
だが転校生は、首を小さく傾げてから続けた。
「学校の近くに、スーパーってある?」
「……あるけど」
「どこにあるかわかる? できれば、連れて行ってくれると嬉しいんだけど」
藤堂は数秒、思案する仕草をしながら。
小さく頷き答えてから、尋ねた。
「いいけど……どうして、僕の名前」
「ああ、さっきクラスの人に聞いたんだ」
相手の受け答えに、藤堂は疑問を感じたが。
それ以上は尋ねず、彼の要望通りスーパーへ向かった。
スーパー周辺では、主婦が多くいた。
自転車で通り過ぎる主婦もいれば、立ち話をしている主婦。
まだ幼稚園であろう子供を連れた母親の姿もあった。
「ここで、いい?」
「うん! ありがとう、助かったよ」
転校生は笑顔で礼を言ったが、その表情は少し名残惜しそうに見える。
なぜ、そんな顔をするのか。
藤堂にはわからなかったが、とりあえずこのまま帰宅しようとした。
その時、帰ろうとした藤堂の背中に、転校生が声かける。
「あ、あのさ!」
藤堂は振り返る。
まるで、言いたかったけれど、今まで言えなかった言葉を絞り出すような。
緊張感ある声音に、足が止まる。
「藤堂さんは、その……宇宙人って、信じてる?」
「……は?」
「あ、いや! なんでもない、ごめん、気にしないで」
転校生はそう言い残すと、足早にスーパーの中へ行ってしまった。
藤堂も、質問の内容が理解できないまま、帰宅する。
それから藤堂は、転校生の林とよく話すようになった。
次第に親しくなり、度々二人で出かけるようになり。
そうしている内に、冬になった。
息も白く凍てつくようになったある日の深夜。
突如、林からメッセージが届いた。
かろうじてまだ眠っていなかった藤堂は
そのメッセージに目を通し、入りかけたベッドから飛び起きる。
『宇宙に帰ります、さようなら』
メッセージの意図はわからなかったが、
林は冗談でこんなメッセージを送るような人ではない。
ただならぬ気配を感じた藤堂は。
親にばれないよう静かに上着を着込むと、外に飛び出した。
行き先は林の家だった。
だが、目的地に着くよりも先に。
藤堂は林の姿を見つけた。
林は降り出したばかりの浅い雪が積もるアスファルトに、
うつ伏せに倒れていた。
「林! ど、どうしたんだよ、なあ!?」
藤堂が駆け寄ると、林の手元からスマートフォンが落ちた。
見たことのない機種だ。
藤堂がそのモニターに視線を向けた時。
自然と、彼の手がスマートフォンに伸びた。
「なんだ、この、写真」
そこに映っていたのは、藤堂の写真だった。
しかし、藤堂には撮られた覚えのない写真ばかりだった。
最近撮られた数枚は見覚えもあるが。
それよりも古い写真には、
行ったこともない神社をバックに撮った写真もあった。
そして、写真を区分けしている文字に、目が止まる。
『99回目』
「99回目って、なんだよ」
*****
目が覚めると、そこは林の自室だった。
林はすぐさま、定位置にあるデジタル時計を手に取る。
時刻は午前6時。
日付は、4月1日。
日付まで確認した林は、そこで一度安堵する。
「99回目は、通り魔……っと」
スマートフォンの記録アプリに文字をメモすると、
林は窓のカーテンを開けた。
眩しい日差しが、林の目を刺激した。
「これが、100回目の4月1日、朝」
自分で口にしながら、実感はなかった。
朝は、朝。
いつもと変わらない眩しさに、嫌気がする。
なにせ、この1年を、100回繰り返しているのだから。
彼は、この現象によって自分は宇宙人になったのだと思っていた。
この理解できない現象は、
この地球に存在しうる、あらゆる技術で説明できなかったから。
だが、それでもいい。
理解できなくても、説明できなくても、
そしていつかは必ず終わりが訪れるとしても。
悔いなんて残らないくらい、
何度もこの『幸せ』を味わえているのだから。
「次はちゃんと、挨拶からはじめないとな」
林は独り言を口にしながら、身支度を始める。
そして中学校へ行き、何度も共にこの1年を過ごした彼に歩み寄る。
彼は不思議そうな目で、林を見上げる。
林は言った。
「はじめまして、俺は林。君、名前は?」
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何度でも会いたい
初公開日: 2020年04月05日
最終更新日: 2020年04月05日
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コメント
はじめての配信になりますので、テストも兼ねています。
完結しなかったらゴメンネゴメンネ~