松野家三男には、どうしようもない兄がふたりいる。
このふたりときたら、ひとりは小学生メンタルでもうひとりは意味のわからないナルシスト。
揃って働く気もなければ怠惰な日々を何の呵責もなく送っているので、必然的に自分がしっかりしなければと、思っているのだ。
今日も、銭湯で最後にまわってきたコーヒー牛乳が少なかったと、小学生メンタルでぐちぐちといいながら後ろを付いてくる長男を、彼以下の弟四人全力でスルーしているところだ。
ふと、最後尾を歩いていた次男が長男を呼び止める声が聞こえた。
この次男、普段は根拠のない自信と綺麗に透き通った自意識を携えて訳のわからないこと言ったり、している。かと思えば、頼まれごとを断り切れなくて涙目になっている困った兄だ。
ふと、少しだけ視線をうしろに向けた先。
いつも能天気でだらけきった顔をしているふたりの兄は、ひどく大人びた表情を見せることがある。
四男以下は、あの顔を見たことがあるのだろうか。たぶん、ない気がする。
六つ子を半分に割った三人に分けられれば、自分だって「兄」になる。その自分だけは、その顔を見る機会があるのだ。
だからこそ、新年に一念発起して茶髪に変身してカッコよくなった自分のことを、頼りにならない兄達は差し置いても弟たちに報告して安心させてやらなければ、と考えたのだから。
「あのさー、俺たち…」
「フッ……今夜は」
「「おそくなるから!」」
肩越しに振り返ったおそ松とカラ松の笑顔は、ずっと彼だけがみてきたあの顔のような、それとも少し違うような大人の顔をしているように見えて。
チョロ松は、下三人の顔を順番に眺めてため息をついた。
カット
Latest / 27:18
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
おためし配信
初公開日: 2020年04月04日
最終更新日: 2020年04月04日
ブックマーク
スキ!
コメント
筋トレ
リチャードさんはリンデンバウムの葉が茂るころ、かつての母校で動物になってしまいたかった話をしてくださ…
瀬をはやみ
筋トレ
サンジェルマンさんは雲ひとつない晴れの2月の正午、美術館の飾られた絵の前で手首の骨は案外飛び出ている…
瀬をはやみ