自分の想いを伝えることは、とてつもなく難しい。
それはきっと、国語のテストで「作者の思いを回答しなさい」という問いよりも難しい。
まず、最初にしなければならないことは想いをしっかりと形作ること。なにせあやふやなままではしっかりと相手に伝えるどころか自分がどういう感情を抱いているのかもわからない。テスト勉強だって範囲がわからなければ意味の無い行動になりかねない。
そして、想いを形作った上で、相手にどう伝えるか。これもまた、難しい。
なにせ。なにせ、わたしの好きな相手は自分と同じ性別なのだから。
同性だから好きになったわけではない。好きになった人が同性だった。ただ、それだけだ。
とはいえ、そう簡単に話が終わるわけではない。
もう少し情報が必要だろう。
どうしてわたしが彼女を好きになったのか。そのことを明白にすべきだろう。
彼女とはいつの間にか出会っていた。
家が近くにあるということでいつも傍にいることが当たり前で、同じ学校に仲良く投稿していた。いわゆる幼なじみという間柄に該当するだろう。
お互いのことを、それこそ親には話せない――というよりも、親だから話せないと表現した方がいいか――ことを伝え合った。彼女がテストの点数が悪かったことを伝えれば、わたしは掃除の最中に教室のガラスを誤って割ってしまったことを伝えた。彼女と同じ時間を過ごせば過ごすほどに、お互いに秘密を共有し合える……というか、共有しなければならないような関係になっていた。秘密は小さなものから大きな物まで、大量にある。その一部でも公開されてしまえば、人生は破滅間違いなし!
「なんてこともないか」
空は久しぶりに晴天を見せていた。
春でありながら、夏のような日差しがわたしに照りつける。
それだけで焦げてしまいそうな気分になってしまう。もちろん焼けることはないけど。
わたしは青井美空。まもなく大学受験という考えたくない将来が目前に迫っている高校生。部活で青春を謳歌するわけでもなく、わりかし勉強漬けの日々を過ごしている。
「何よ、急に」
隣からはやけにクールな声が聞こえてきた。
わたしよりも少し背が高くて、わたしよりもほんのり成績がよくて、そしてわたしよりもちょっぴり……そう、ほんのちょっぴりだけ美人。
彼女の名前は叶野純。
「突然よくわけのわからないことをつぶやいちゃって」
そう言いつつも、視線は先ほどから読んでる本から逸れることはない。
「いや、別に」
頬をかきながら、わたしは純に答える。
「たまにひとり言が押さえられなくなる様な時って、ない?」
「ない」
短く言い切られてしまった。
「……そっか」
そんな返事ではこちらもこう返すしかなかった。