午後のあったかい陽射しの中で、お花見しながらおさんぽ。なんて。素敵なデートじゃないか。
そういう思いつきは、きっとあたしの中だけのものだった。
その証拠に、ちょっと休憩しようと言い出した彼氏はベンチに座り、目の前の桜並木も隣のあたしもほっぽってスマホに夢中。つむだかなんだか知らないけれど、いつでもできるスマホゲーと今の時間、どっちが大事なのってハナシだ。むかつく。
脚を投げ出して座り直す。踵がどすんとたてた音にも隣の馬鹿者は気を回しやしない。
遊歩道を歩いていく人々は、家族連れだったり、夫婦だったり、あたし達みたくカップルだったりするけれど、みんな手を繋ぎ腕を組み、楽しそうに散り始めの桜を見ている。
うらやましいなあ。ぼんやり思う。隣に好きな人がいて、天気が良くて、風もおだやか。薄ピンクの花は綺麗だし、どこかから香る甘いにおいはきっと何かの花だったりするのだ。これほど素敵なことはないはずなのに。
「あっ、バカ! そこ消すのは違うだろうっ?」
急にそんな声がした。隣のつむではない。もっと遠い、向こうからだった。
目立った音がすればそっち見ちゃうよね。くらいの気持ちで顔を向けて、固まる。
兎に角おキレイな顔だったのだ。インスタ映えしそうな顔面ってやつだ。インスタやってないけど。てかやめたけど。
陽射しにキラキラする金髪と碧い目。この距離でも分かったのは目がデカイからだ。すらっとした身体をしているとジーパンにパーカーでも全然美しい。隣も私も似た格好だけど比較にならない。そしてもってそんなお美しい人は隣にいるこれまた美しい人に縋りついている。どちらかといえばその人の持つスマホに。
「うるさい。どうするかは俺が決める」
「だってそこ消したらせっかく作った連鎖がだな」
「やってみろって渡してきたのはあんただろう?」
「それとこれとは話が違う」
「だから。うるさい」
軽口を叩き合う二人は私たちの座るベンチの隣まで来て、さっきからスマホでおそらくぷよとかそれ的なものをしていた方が勝手に座った。金髪のインスタグラマー(かもしれない)はそれにちょっと遅れて反応して、やっぱりベンチに座る。
「せっかく人が教えてやろうとしたのに」
「まぁ、確かにおもしろいな」
「だろ?」
金髪の人は得意げに笑った。間にカレシが挟まった視界の筈なんだけど、どうでもいいくらいにキラキラしている。金髪効果だろうか。まぶしさに眩みそうな目をぱちぱちする。真っ直ぐにあんなもの見せられて大丈夫なんだろうか。余計な心配を向けた相手も、やはり美しいから、もしかしたらああいうのは美しさ同士で打ち消し合ったりするのかもしれない。
長い指と大きな手で持ったスマホはどうにも小さく見えて、尖った印象の横顔がそれを真剣に眺めながらちょんちょん弄るのなんかは、どうにもかわいく見える。金色の眼も相まってちょっとネコっぽい。いや、豹とかその辺かも。
簡単に『イケメン』と呼ぶのも躊躇うような二人はベンチに寄り添ってなおもスマホゲームに勤しんでいる。揺れる桜の枝も舞う花びらも見もしないで、あたしがうらやんだお花見デートの人たちとは全然違う。だけどもやっぱり、あたしはそれを「うらやましいなあ。」と思うのだ。
ふたりは尚も、ほっぺたがくっつくような距離感でひとつのスマホに熱中している。時たまワっと声をあげたり、肩や背中を叩いては楽しそうに囁き合っていた。桜吹雪を背景に、それをぼんやり眺める。あくまで、隣の彼氏を見てますよー、向こうの桜を見てますよーという雰囲気で。あちらはすっかりふたりの世界なので、あたしごときが見ていることなんて気にもしないかもしれないけど。
いいなぁ。何度目ともなくそう思う。あたしだって彼氏と二人で楽しく過ごしたいだけなのに。
陽射しまでもが淡くピンクに染まりそうな桜並木と、雲の少ない青い空。時折吹く風が満開の花を少しずつ散らしていく。たぶん、あと数日で桜も散りきってしまうだろう。今、この時しか見れない景色なのだ。これは。
「わーっ、伽羅! よくやった!」
しんみりしてたところで、また金髪の人が声をあげた。フっとそちらに焦点が戻る。金髪の人は豹みたいな人に抱き着いて、それこそ猫にでもするみたく髪の毛をくしゃくしゃにしていた。
「慣れればこんなものだろう」
素っ気なく、そのくせ満更でもない風に撫でられた方は笑った。別に向けられたわけでもないあたしでもキュンと来た。なにせ元々王子様系より強面の方が好きなのだ。
「いや、初心者であのレベルをクリアできるのはすごいぞ。俺は結構かかった」
「あんたせっかちだからな」
「……そんなことは」
「ない?」
「…………なくは、ない」
唇を尖らせるのを見て、強面さんは再び笑った。やっぱりクラっとくるほどの笑顔だった。
「そら、行くぞ」
先に座った方のくせにそんな風に言って、極々自然に、その人は金髪のひとの白い手を取る。取られた方も当たり前にそれを握り返して、ふたりは歩いていく。目の前を通っていくとき、おだやかに繋がったふたりの指先がほんのり桜の色をしていたのは、きっと桜の花々を透かせた陽射しのせいだろう。
いいなぁ。通りゆくふたりを見て、それから、まだたった数インチの画面に夢中な彼氏を見る。
ただ、あんな風に寄り添って、楽しい時間を過ごしたいだけなのに。
「ねぇ」
声をかける。こちらに顔を向けられることはなかった。
「なに」
「あたしもそれやるって言ったら、教えてくれる?」
バッ、と、今度は音が鳴るくらいの勢いで、顔が向けられた。
「興味あったのっ?」
「……同じのできたら、いいかと思って」
なんとなく目を逸らして言う。ちょっと、気恥ずかしい気がして。
「いいよ、教える!」
「…………ん。」
隣に好きな人がいて、天気が良くて、風もおだやか。薄ピンクの花は綺麗だし、どこかから香る甘いにおいはきっと何かの花だったりするのだ。これほど素敵なことはないけど。だけども、好きな人とおんなじことを楽しめるのだって、それはそれで素敵なことだ。きっと。
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お邪魔します!!
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ななし@e0a102
お邪魔してます。展開してきたー
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交流する座布団
拝見できてよかったですありがとうございます
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向き
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くりんばわんどろ「桜吹雪」「寄り添う」
初公開日: 2020年04月04日
最終更新日: 2020年04月04日
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コメント
くりんばわんどろチャレンジ中。
刀剣乱舞二次創作同人小説(BLもの)です。よしなに。
帰ってからめちゃくちゃ復習した
旗主ワンドロライお題「浴衣」付き合ってる旗主
てお
山の神、鹿の子
御形様フェスに参加したい。山の神様な御形様とディアケンタウルスな恵という自分の性癖詰めました。
あぼだ