さら、さら、と髪の毛を触るのは膝の上にすっぽりと収まるガキだ。
夢中になって俺の髪を前から後ろへと撫で付ける。
「なんだよ」
「んー」
「気に入ったのか?」
「うん?」
「ライブん時の」
ライブの時はそうそう目は合わせない。
約束みたいなもんだな、一応。
だが、視線はきちんと俺に向けられてた。
そんなお前を俺はちゃんと知ってんだよ。
「気に入ったっていうか」
「ん?」
「案外髪長いんだなあって」
「そうか?」
「だってこんなに結べるよ」
「見えねぇよ」
俺に股がって前から俺の髪をまとめてる。
俺は煙草の火が付かないようにだけ気をつけて好きにさせてやってる。
当然自分の後頭部の状態は見えない。
だからこんなに、がどんなに、なのか分かりゃしない。
「だからなんだよ」
「んー」
「ん?」
「でもちょっと違うんだよなあ」
「何が」
「髪を結ぶのとは、ちょっと違う」
神童ってのは何考えてんだか分かんねぇ。
何が違うってんだよ。
何と違うってんだよ。
お前の前で髪型変える事なんか、…あるな。
「こう、か?」
前髪をかきあげると、はっとした顔をした。
けどすぐに顔を真っ赤にして俺の肩口に埋めた。
「どうしたよ?三郎クン?」
「うるさ…!」
「思い出したんだろ?」
ベッドの上のこと、と囁いてやればぎゅうと服を握りしめられた。
こいつが俺を見つめてたのは既視感はあったものの若干の違いを感じてたからだ。
そして、それがいつのものだったのか分からなかったんだろう。
そりゃあ、あんなになりゃ記憶もあやふやになるわな?
「お前よォ」
「…なに」
「逆効果なの分かんだろ?」
「効果てきめん、の間違いだよ」
「ハッ、上等」
そのまま抱き上げて、こいつが思い出したであろう部屋に向かう。
俺の首に抱きつきあむあむ、と小さな口が動いて俺を誘う。
言っちゃやらねぇが、お前だけじゃねぇからな。
十四とは思えない吐息を三百万人に聞かせやがってよ。
あれはお前がトぶ時と、同じ息遣いだ。
まァそれを知るのは二人といないけど、な。