「疲れたか、小鳥」
「…散々だったわ」
審神者と山鳥毛が警視庁を出たのは時刻はもう午後8時近くになっていた。事情聴取を受けた後は事務的な手続きをして、その後に入院しているという病院に向かい更に事務手続きを行って今はやっと自分たちの住む本丸に帰るため、宮内庁へと向かっている所だ。
審神者は山鳥毛の問いかけに疲れ切った声色で答えた。今頃高いワインを開けて楽しくやっていた頃だと審神者は窓から見える東都の夜景を恨めしく見ていた。
隣に座っている山鳥毛は審神者の様子をじっと見ていたがその視線に気づいた審神者が夜景から視線を外し山鳥毛を見た。
「…小鳥」
山鳥毛は審神者の薄い肩に手を回して審神者の頭を自分の肩に凭れかかるようにさせた。そのまま優しく頭を撫でて髪を梳く。
「…疲れた」
「そうか」
ちゅうと優しく審神者のつむじに山鳥毛は口づけを落す。審神者は彼にされるがままに受け入れた。
「…暫くは忙しくなりそう」
「そうだな」
「少し寝たい」
「ああ、…着いたら起こそう」
「よろしく」
審神者は更に山鳥毛の肩に頭を深く凭れ掛けると目を閉じた。
山鳥毛は規則正しく審神者が呼吸していることを確認すると窓から見える東都の夜景を見た。
妙な空気だ。と山鳥毛は前に自分の前に居る「透」と彼女に呼ばれた男を見た。鮮やかな金色の髪に褐色の肌、明らかに鍛えられている体、そして何よりに山鳥毛はその「透」という名に違和感を感じた。なんというか魂と名があっているようであっていないのだ。
「名前」とは本来、親から子に贈る初めてのものであるからその子にどういう風に育って欲しいかなど「願い」が込められている。
山鳥毛を始めとした刀剣男士たちも紆余曲折はあれど人間に望まれて作られ持ち主の由来や切った時の由来から「名」や「号」をつけられる
彼女に「透」と呼ばれた男にはそういう「名」に関する由来が無い。
違和感を覚えてあまりじろじろと見るのは失礼だし自分のこの容姿から相手に不快感を与えて揉めるのは審神者に迷惑が掛かってしまう。山鳥毛は色眼鏡をしていて良かったとつくづく思った。
審神者はゆっくりとエレベーターを降りた。それに続いて山鳥毛も後に続く。
「…お久しぶりです」
「…久しぶり」
「お知り合いですか」
「…いや」
高木と名乗った刑事に関係性を尋ねられたが生憎、山鳥毛も彼女とあの男との関係性は分からない。緊張しているのだろうか、普段の彼女からは想像できない程に声が震えている。あきらかに動揺しているのがこちらにも伝わる。
「あの…」
「…ごめんなさい、部屋はどちらかしら?」
「こちらです」
様子がおかしい二人に心配になったのだろう、高木刑事は審神者に声を掛けた。
審神者はこれ幸いと声を掛けた高木刑事に部屋まで案内をさせる。声はもう震えておらずいつも通りの審神者として職務を進める彼女の姿があった。
彼女も安室もそれ以上会話をすることなくすれ違う。
ちらりと山鳥毛は通り過ぎた安室の方に視線だけ向けた。
彼の小指に巻かれている赤い糸がブツリと切れている。人間には見えないが付喪神とはいえ、神の末席に位置する刀剣男士ならばよくわかる。特に審神者である彼女と「番」として深い仲になっているから余計にその糸の意味を理解した。
…なるほどそういうことかと先ほど自分たちが乗って来たエレベーターに乗り込む男を見て視線を前を歩く審神者を見てそう思った。
審神者たちが高木刑事に案内されたのは応接室だった。部屋の中に入ると中央に大きな黒革のソファーが目に入る。部屋の中に居たのは良く知っている青島警視正だけではなく捜査陣だろうか、背広姿の人間が多い。
青島警視正は審神者たちに気付くと出迎えるようにして声を掛けた。
「怜奈さん」
「青島さん、お久しぶりです」
「ええ、それよりも次長が、」
「ビックリしました、でも命に別状が無くて良かった」
「ええ、本当に、あれだけ撃たれたのに」
「…憎まれっ子世に憚るっていうでしょう、それですよ」
青島警視正は普段と変わらない様子の審神者に安心した。電話越しでは心配そうな声色だったので
、…紹介します、こちらが黒田管理官、目暮警部、白鳥刑事に佐藤刑事です。みなさん今回次長が撃たれた事件を捜査して頂く方々です」
「そうですか…娘の一文字怜奈ですこちらが…」
「夫の一文字山鳥毛です」
山長毛はサングラスを外して名を名乗った。サングラスを胸ポケットに入れる。
本丸では審神者の意向でテレビ広間と希望者には個人でテレビが設置されている。刀剣の中には支給されたタブレットやスマホで映画や動画なんかを楽しんだりする刀も居るが、山鳥毛はあまりそういったことには興味がなく、審神者が好んで見ているものしかあまりみることがない。
テレビの中で知識としてはあるが実際に警察という組織で働く人間を見るのは彼女の父親とその部下としかない。
ドラマの中であるような実際に現場に出て捜査をするような人間を見るのは初めてだ。
「黒田兵衛です」
「目暮と申します、後ろに居るのが私の部下の白鳥と佐藤です」
「白鳥です」
「佐藤です」
「どうぞお座り下さい」
黒田管理官に促され上座の席に通されてた審神者と山鳥毛は並んでソファーに座った。その向かいには黒田管理官を中央に向かって左側の出口に近い席に目暮警部、その後ろに立っているのが白鳥・佐藤刑事、右側には青島警視正が座った。
「早速ですが、来栖次長が撃たれた件についていくつかお話をお聞きしますがよろしいですかな」
「ええ、私達でわかることがあれば」
先ほどまで応接室へと案内していた高木刑事が審神者たちに淹れたお茶をローテーブルに置いて行く。その間に黒田管理官は目暮警部に視線を向けて話を進めるように合図をする。
「では、関係者全員にお聞きしていることですが、来栖次長が狙撃された時間今日の16時半前でしたがどこにいらっしゃいましたか?」
「…その時間なら夫と二人で仕事場に居ました。今日は朝から会議でしたので」
「青島警視正から宮内庁にお勤めだとお聞きしたのですが間違いないですか」
「ええ」
「宮内庁ではどのようなお仕事を?」
「宮内庁書陵部歴史統制編纂課という部署で…簡単に言えば全国各地に散らばる史料などの調査と管理をしています」
審神者はトートバッグから淡いベージュ色をした革の名刺入れを取り出した。名刺を2枚取り出して少し重ねるように置くと立ち上がり黒田管理官と目暮警部に名刺を手渡した。
「私の担当…チームのマネジメントをしている「常磐」という者が居ます、その人に確認をして頂ければ確実かと」
「そうですか」
目暮警部は審神者の名刺を白鳥刑事に預けた。そのまま白鳥刑事は応接室を出る。審神者と山鳥毛のアリバイを確認しに行くのだろう。
「では、次長が撃たれたことについて何か心あたりはありますか」
「心当り、ですか」
「ええ、例えば誰かに恨まれていたりとか」
「生憎ですが、そういう事は存じ上げません…父は私に対して仕事の話は一切しませんでしたし、お恥ずかしい話ですが父がこんなに偉い立場の人間だとは思いませんでした、何となく上の方だとは思っていましたが」
「次長であると知らなかった?」
「ええ、父もそういうことを自慢するタイプではありませし、そういうことは私よりみなさん警察の方たちの方が父のことを詳しいと思いますよ」
「彼のお蔭です」
そういうと彼女は隣に座る山鳥毛と視線を合わせ微笑んだ。
「では、食事を予定していた場所は?」
「サクラサクホテルです」
「41階の確か…」
「アルヴァ」
「全力で犯人を捕まえます」
「そうでないと困ります」
「は?」
「仮にも組織のナンバー2が撃たれたんですよ、犯人にケジメを着けさせないと付け上がってまた同じことを繰り返すかもしれませんし、」
「ケジメ?」
「ええ、ケジメです」
「個人的な見解ですが、組織の上に立つ人間には…立場が人を作るのですよ」
コーラルピンクに彩られた口からは想像ができないほど冷たい声色に黒田管理官は眼鏡越しに驚いた。年若いのに隙が無い印象を与える女だ。
来栖次長とは何度か仕事をしたが
自分の歳からはまだ小娘と言わんばかりの年齢の女が
まるで自分が組織の上に立っているのかのように
「…確かに一理ありますな」
「ご理解して頂き、恐縮です。まぁ、日本の警察は優秀と聞いていますから…問題ないと思います、先ほども言いましたが私に出来ることであれば喜んでご協力させて頂きます」
この話は終わりだとそう言わんばかりに怜奈はソファーから立ち上がった。髪を梳くように整え不敵に微笑んだ。山鳥毛も彼女の後に続いて立ち上がり帰る支度をした。
「怜奈さん、お送りしますよ」
「大丈夫、タクシーで帰るから…それに青島さんは少し休んだ方がいいわ」
彼女らと同じく立ち上がった青島警視正に断りを入れると審神者は自身の人差し指で目の下を指さした。
「クマ酷いよ」
「あはは、まいったな」
「しっかり休んで早く解決してくださいね」
いたずらが成功した時のように笑うと審神者は応接室から出ようとする。
「佐藤、下までお送りしろ」
「はい」
「…どうもありがとう」
黒田管理官が佐藤刑事に指示をする。審神者たちは佐藤刑事の案内で応接室を出た。パタンと応接室のドアが閉まると目暮警部は小さくため息をついた。
「…随分迫力のある娘さんですな」
「いつもああいう感じですよ、物怖じしない所なんて次長にそっくりですよ」
「そうなんですか」
「ええ」
「宮内庁書陵部歴史統制編纂課、主任か…」
目暮警部から渡された名刺を見て
審神者たちが本丸に戻ったのは午後9時になろうとしていた所だった。
執務室に荷物を置いて初期刀である歌仙を探しに
山鳥毛が呼んでこようかと提案してくれたが、彼も疲れただろうと断りを入れて風呂行くように勧める、明日も現世んび行かなければならないし、彼には護衛役をも兼ねてもらっているので早めに休ませたい。
皆の顔が見たいという理由も兼ねて本丸内を
山鳥毛は着替えて風呂に行く
審神者はジャケットを脱いで歌仙が行きそうなところを見ていると三日月の部屋から出てくる歌仙がいた。
すれ違う刀たちにお帰りと言われると自分の家に帰って来たことを実感して安心する
寝る支度をしている刀たちも居たのでおやすみの言葉も掛けていく。
「歌仙」
「ああ、お帰り主」
「ただいま、早速で悪いんだけど執務室に来てくれる?それ置いてからでいいから」
「ああ、分かったよ」
「なぁに?それ?」
「白檀のお香だよ、三日月殿から頂いたんだ」
「いい匂いね」
歌仙が大事そうに手に持っている
匂いを嗅ぐ。
「おや、主かお帰り」
「ただいま、三日月」
審神者の声がしたからだろうか、三日月がひょっこりと顔を出して
「父君は息災であったか」
「まぁね、相変わらずよ」
「そうか、息災でなによりだ」
「ありがとう」
「うむ、さて俺は風呂に行ってくるこれから次郎太刀らと飲む約束をしてるんでな」
「いってらっしゃい、次郎たちにもよろしく言っといて」
「あいわかった」
「今日は大変だったね」
「まったくよ、まぁ撃たれても命に別状はないから儲けものね」
歌仙は執務室に備えつけてある電気ケトルのスイッチを入れた。審神者はその様子を見て最初にケトルを置いた時は形が雅じゃないと怒っていたのにどこからかお洒落な感じのケトルを探し出して来て使いがっていいと愛用している
トートバッグの中から会議の資料を取り出して歌仙に渡した。
デスクを挟んで向かいに座る歌仙は
・歌仙と兼定で
「はいはーい」
「ああ、堀川?」
「お帰りなさい主さん」
「ただいま、そこにかっこよくて強―い今流行りの刀はいる?」
「兼さんですね、居ますよ」
「悪いんだけど執務室まで来て欲しいって伝えてくれる?」
「わかりました!」
部隊の編成を組み直して
「ただでさえ、鬼丸が来るのに資材注ぎ込んだから」
「最終的に来たんだからそれまでの過程は問題ないの」
大分減った資材を見てなるべく溜めておきたい。
金と同じで資材と手伝い札と金とうそうはある分に越したことはない。
「それ言ってみなさいよ、きっとみんな現世にカチコミしてくるわよ」
元々戦道具としての気質が強いのか鍛刀した審神者に気質が似たのかこの本丸の刀たちは血の気が多い。
「とりあえず、明日の朝、素直にいうけど」
「元彼とあった」
「元彼?」
「おいおい、それ大丈夫なのかよ」
「どう伝えていいか分かんないし関係性を聞かれなかったから言ってない」
「ぜったいやべー」
「だよね」
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原稿作成
初公開日: 2020年04月04日
最終更新日: 2020年04月04日
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支部にあげているDC×とうらぶのクロスオーバー作品の作成
えふごとシノアリクロスオーバー「人魚姫と作者」
タイトル通りのクロスオーバー。この二人で書いてみたかったので……話の展開とか何も考えていないのでとん…
リュックでか子
※夢 展示用SS書く
夢小説を書いているため苦手な方はお戻りください。znzr 🐈
糖度ゥ