左銃SS『おにぎりの話』 -混ぜ込みおにぎり
些細なことで喧嘩をした。
気が立っていた、といえばそうかもしれないし、虫の居所が悪かったといえばそうかもしれない。
言い訳はいくらでも考えられるが、喧嘩をしたことは事実だ。
左馬刻の横暴な態度はいつものことだし、いつものように唯々諾々と従っていたらよかったのだ。だが、どうしても許せないことはある。
左馬刻が静かに家を出て行ってから、二時間。
もしかしたら、今日はそのまま戻ってこないかもしれない。それでもいい。時には、頭を冷やすことは必要だ。
だが、不安は過ぎる。
明日が、来るとは限らないのだ。どんなに普通の生活をしていても、明日が確実に来るとは限らない。それは事故かもしれないし、急な病かもしれない。その人がどんなに善人だろうと悪人だろうと、変わらないことだ。
大事な人の明日が簡単に吹き飛ぶことを、身をもって知っている。だからこそ、怖いのだ。
スマホを持って画面をタップする。もちろん、何も通知はない。メッセージ欄を見るが、最後は昨夜で終わっている。何か送るかと考えるが、言葉は降りてこない。指先が画面の上をすべるだけで、結局アプリは閉じてしまった。
気分転換にコーヒーを淹れようとキッチンに向かった。
物の少ないキッチンだ。だが、最近は少しだけ生活感が出てきた。左馬刻が来るせいだ。自分だけだったら、ずっと素っ気ないままだっただろう。左馬刻が来るようになってから、ほとんど使わなくなったコーヒーメーカーを引っ張り出してコーヒーを作る。
抽出している間に、ふと炊飯器が保温になっていることに気づいた。
自分では炊かないから、炊いたのは出て行った方。
そっと蓋を開けると、釜いっぱいのご飯があった。急に食欲をおもいだす。
そう言えば、左馬刻が出ていくときまで、食事をどうするか話していたような気がする。
つやつやの白米と、温かな湯気。だが、いつもより気分は上がらない。小分けにして冷凍してしまおうかとも思ったが、
やっぱり腹が痛い
気が緩むと腹が痛いのかと思って配信してみたけど、変わらず腹は痛かった
むりだね腹痛いのにご飯の話は掛けないね