カーン、カーン、カーン。くり返しくり返し、火の都の街に鐘の音が響く。
路地の物陰に座り込んだライナルトは、左肩の辺りに浅く刺さった矢を抜き、マントを裂いて作った包帯で止血をしながら、その音を聞いていた。
『とらわれ者』を連れた一般民の小集団が、いくつも、街を巡回していた。四つ辻で立ち止まっては鐘を鳴らすのも、その集団の一部だ。
七年前のあのとき――火の都支部・旧拠点が襲撃を受けたときにも、くり返し打ち鳴らされていたメロディーだ。
今のライナルトは、その意味するところを知っている。
過激派反魔術師組織、『緋の轍』。七年前の襲撃の際、中心となった一般民組織だ。
この七年間、『緋の轍』はたびたび、はぐれ魔術師狩りをしていた。不運にも、今日がその日だったのだろう。
ジェラールが外界に出ているのなら、ライナルトと同じく、『とらわれ者』に察知されているかもしれない。
思うように動けない。
エントランスへの入り口が一般民に見つかってしまうかもしれないことを考えると、迂闊に支部に戻ることもできない。
継承者である『とらわれ者』を連れている彼らに、支部への道を明かすわけにはいかない。
「――ジェロア」
何も告げずに出て行った。
どうして
かすかな風にのって、煙の匂いが流れ込んでくる。
火の属性を持つ妖精の影響が強い火の都において、屋外で火を焚くのは危険な行為だ。一般民にも、それがわからないはずがない。
もちろん、現在の火の都支部は、迷宮のような構造になっており、それぞれの空間を繋ぐゲートも、魔術師でなければ通れない。
支部のエントランスに立ち入ることさえ、一般民には不可能なのだ。