汗ばむ陽気の午後だった。西に傾き出した陽が作る影がその形を広げようと、射場に流れ込む風は生ぬるく、絽の地の襦袢は肌に纏わり付いて涼を得るには程遠い。
神棚を背に立つ一人の老紳士は、並び立つ四十余名の老若男女を前に明朗な声で告げる。
「これから皆さんは地方連盟の枠を超え、連合、そして中央へとその活動の場を移して行くことになります」
アブラゼミの合唱の中に、蜩の声が混じり始める。そんな喧騒の中にあってもこの射場の中だけはどこか別世界のように感じられるほどに、その空気は引き絞られた弦のようにピンと張っていた。
「始まりの時にも言いましたが、皆さんがこの先高段者となるには、我流の癖を捨て、正しい射を身につけていかなければなりません。本日の講習がその一助になれば幸いです」
老齢の講師は衰えを感じさせない立派な体躯をシャキリと伸ばし、深みのある声で終わりの言葉を綴った。
「一日一日、一射一射をどうか無駄にせず、修練を重ねて行って下さい。これで四段講習会を終わります」
 相互に交わした礼と挨拶でもって、この日の講習会は終わりを告げた。受講生らの後ろからその光景を眺めていた雅貴は、知らず詰めていた息をそっと吐き出した。
 遅い春が駆け足で抜けて行った、ある初夏の日曜の事だった。
カット
Latest / 22:12
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
湊マサこんな話が出せたらいいな(願望)
初公開日: 2020年04月02日
最終更新日: 2020年04月02日
ブックマーク
スキ!
コメント
「駆け恋」軸の未来編。
マサさん→風舞コーチ
湊→風舞教師(弓道部顧問)
看病しようと押し掛けるおにいさんvs拒否するゲーム主人公【宗おに二次創作】
タイトルは仮というか、分かりやすいメモみたいなもんです。書き上がるかは不定。エンド10後想定:おにい…
MN*B