ざぁぁぁぁ…
風で、マリーゴールド達が揺れる。
…ああ、これは夢です…。
こんなにこの花が咲いているわけがない。
だってあのひとは…。
「主さん」
ハッと呼ばれた方を見る。そこには、こちらに背を向ける鍔切さんがいた。
「鍔切さん」
「そこから動いたら駄目ですよ主さん」
彼は、駆け寄ろうとして一歩踏み出した私を制した。
とたん。
世界は反転した。
青は赤
黄は黒
澄んだ空気は澱んで。
まるで天国から地獄に変わってしまったかのように、そこに立つひともまた。
黒く赤く、長い尾のような骨が蠢く魔性の姿に変わる。
「あと一歩。……こちらに来たら、アンタを連れて行きます」
そう言い鍔切さんが振り返れば、明るい景色が戻ってくる。
黒い影は消えていつも通りの彼が立っている。
「俺はまだ……あれには勝てませんから」
そういうとまた視線を外し、遠くを見る。
「主さん、こんなところまで来てくださってありがとうございました」
夢の世界は明と暗が切り替わるようにころころと変わる。
「ただ、もう起きられたほうがいい」
また私の方を見てふっと儚く笑うと
「ほら、アンタを呼ぶ声が聞こえるでしょう?」
促されて、耳をすませば。
遠くから御手杵さんの気配がする。
「気に入りませんが、主さんを隠してしまうよりはマシっすから」
またあちらでお会いしましょう。
ゆめはほどけて、あわゆきのようにきえていった。
…………。
…結。
起きろよ…朝だぞ…?
結!
「ううっ、もう少しゆっくり起こしてください…」
揺さぶる御手杵さんに懇願しながら、目をあける。
視界いっぱいに御手杵さんの顔が映る。
「起き上がりたいので少し離れてください…」