「黎斗は病気を憎んでる?」
ドレミファビートのバグスターである彼女は、話す言葉も歌うように軽やかだ。ゲームの電子音を愛している彼は殊更その響きを愛していた。
「何故そんなことを聞く?」
「質問を変えるね、黎斗は病気の事、嫌い?」
目の前のパソコンから目を離さず、しかしキーボードを叩く手は止めて彼は少しだけ考える。
「例えばポッピーは真珠を美しいと思うかい?」
「真珠?あの宝石の真珠?」
「そうだ」
「うん、きらきらしててゴージャスな感じ!」
「真珠が好き?」
「綺麗なものは好きだよ」
黎斗は穏やかな笑みをみせる。ポッピーはどうしてだかその顔にとても弱いので、とくんとくんと跳ねる鼓動が自分のものだとわかる。
「真珠は病める貝から生まれるものだ。その輝きや大きさは、貝が苦しめば苦しむほど美しくなっていく」
「そうなんだ」
「私は真珠を美しいと思うよ」
それが答えだ、と言わんばかりに彼は自分の作業に戻ってしまう。
「……えっ、黎斗、質問の答えは?」
「言っただろう、真珠を美しいと思う、と。……病める貝は患者だ」
「それってつまり、」
好きかどうかは答えてないよね?
パッと筐体の画面が消えて彼の姿が見えなくなる。あのわざとらしい笑い声が奥から響いてポッピーはもー!と怒ったふりをして笑う。
おわり