…。
……えっと。
…本当に、来たのか。
…今晩は。
と、言うべきだろうな。
…すまない、あいつ、
いや、ミレイは今日は居ないんだ。
……少しだけ。
代わりにこの場所を借りている。
……。
…名前、名前は、
柊夜。神 柊夜。
あいつと同じ、システムの一人だ。
…何を話せばいいんだ。
あいつは何を話していたんだ?
…なんか、好き勝手やっていただろう、あれは。
俺の口からじゃないと、
話せないことを話すのがいいか。
…なら、俺の役割の話を。
少しだけ。
ただ…、そうだな。
あまり明るくない話もあるから、
気をつけて欲しい。
とくに、ミレイとは、色々あったからな。
…恨んでは、いないけど。
俺の役割は、
素体の中でもとくに子供に近い要素、
悪い言い方をするなら、身勝手さと天才性だ。
あれが人に合わせることを司るなら、
俺は誰にも合わせず、
自分のペースを守ることを司る。
わかりやすいだろ。
概念としては、俺はミレイと対、
もしくは双子のようになっている。
真逆に返した要素を多く持っていて、
対等に渡り合える様に。
あれが、横軸の可能性を得意とするなら、
俺は縦軸の効率性を。
向こうが能力を人に合わせることに使うなら、
俺は自分にフォーカスして、前を走ることを。
そういう事だ。
ミレイが暴走する、可能性を、
俺が言葉で潰せるようにも。
世界によって、多少立場は変わる。
概念的には、双子だと言った。
現実的には、恐らく、俺が兄になる。
俺の元になった性格は、
ミレイが生まれるに至ったころの、
素体の性格だ。
その意味では、俺はあいつより先に
原型がいた事になる。
ところが、システムとしてこうして存在する
という流れで言うなら、正確には俺は、
10年ミレイと離れている。
そして、観測の世界では、
ミレイは俺の6つ上になる。
複雑な関係なんだ。
……。
…ミレイに対しての、感情は、
…難しい。
俺の原型は、素体だといった。
俺が、俺として名前を与えられるより前。
俺は真っ黒な姿の。子供だった。
俺の核は、素体の子供心なんだ。
素体の悲しいとか、悔しいとか。
そういうのを表出するための影。
当時素体は、それを持て余してた。
だから、ミレイが。
いや、ここではシューターと呼ぼう。
その頃には、まだ、あれはミレイという名を
持っていなかったからな。
…シューターは、
俺を止める役割を担っていたんだ。
俺として。記憶しているのか、と言われると
分からない。
ただ、痛みを、苦しさを止める手段を
まだ持たず、自分で解決をすることも
出来ないころだったからな。
やったことは、手っ取り早く、
感じ無くさせることだった。
……察しているな。
…そうだ、俺にとって、
シューターは、俺を繰り返し殺していた存在だ。
心なんて言うのは、簡単に死にはしない。
殺され、戻り、また耐えられ無くなったら
喚いて、また停められる。
…気になるなら、本人に聞くといい。
多分、どうやったかまで、あれは忘れていない。
それが一番初め。
長く時間が経って、俺は改めて
ミレイ・シューターという存在から、
分岐する形で自分の名前と姿を貰った。
そしてその時に、魂の核として、
素体はその黒い子供に、
それを与えたわけだ。
それが……5年前か。
もうそんなに経つんだな。
さて、不思議なことに、その真っ黒な
子供だった存在だったものは、
名前と姿と、歴史を受け取って
成長するようになった。
あるきっかけで、お前がいるその世界で
目を覚ました。
…びっくりしたよ。その時は。
それから、素体やあいつと何度も話をして、
時には喧嘩もして。
対等な立場まで、今は成長した。
…初めの頃は、俺が下がることが出来なくて。
素体がこまっていたこともあったな。
避難用の部屋を作ってもらって、
そこで眠っていたこともある。
1年近くかけて、俺は起き続けたまま、
後ろに控えて居られるようになった。
今もな。
…悪い。
…俺はあまり、話が得意じゃない。
ミレイほど、分かりやすく話すことも、
楽しく話すことも、苦手なんだ。
ただ…。
あれを、ミレイを嫌わないで欲しい。
俺にとって、たしかに許し難い存在では、
あるんだろう。
でも、俺に対してしたことを、あれは正当化も、
忘れることもしない。
……たぶん、だから俺を、守ろうとする。
俺が突っかかっても、笑っている。
分かってるさ。
ミレイと俺は、簡単な関係じゃない。
大切な相手で、嫌いな奴で、放っておけなくて、
止めたくて、守りたくて、でも、もしかしたら
どこかで罰したいのかもしれない。
俺はあれが俺に謝ることも、
贖罪をすることも、認めていない。
自分の道を曲げずに、俺を巻き込み、
犠牲にしてでも、自分のひとつの願いを
達成することを望んでいる。
罪も、罪悪感も、全てを持ったままな。
俺は、シューターから生まれた。
そこから自分の道を。生き方を与えられて。
不器用さと、自分のことを優先する部分と、
正義を持ち続けることを司る様になった。
あれが、一人の人のために、
全てを犠牲に出来るように。
俺は自分の掲げる正義を、
ミレイが持てないものを、預かっている。
……。
………。
…、話しすぎたな。
すまない。
…もう少し、楽しい話を、
持ってきたかったんだけどな。
……この話をしないと、
多分、俺がどういうものなのか、
分からないままになるから。
…聞いてくれて、その、
あり……がとう。
……。
…困った。
…えっと……。
…帰るといい。
…また。ここにたまには、俺も来るから。
……多分。
…じゃあ。
また。
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