フフフ……もはや誰も気づくまい……。
 去年の第21回東方紅楼夢新刊レビューが実はまだ終わってなかったなどと……。
 いや実は終わってなかったんですよねこれが。
 最後に残っていたのはこの作品!
・マリアリ再録集(アトリエ・ダルサラーム)
 第20回東方紅楼夢でお隣になったサークルさんから頂いたマリアリ小説の再録集。
 収録作「魔法王女ダイマリサーvs機動兵長まゆみん~接触編・覚醒編」はずーっと前にレビューしてましたが、残りの「恋色スクールぐらふぃてぃ前編・後編」が今回最後のレビューとして残っていました。
 本作はCDにPDFデータを収録した形だったのでページ数がわからなかったんですが、いざ読み始めるとまあボリュームがすごいことに。
 そのページ数たるや、前編373ページ+後編434ページ=合計807ページの大ボリューム!
 前編はPDFデータをスマホに転送してkindleで読んでたんですが、後編はページ数が多すぎるせいかkindleから読み込もうとするとなかなか読み込まないうえに頻繁にアプリが固まってしまうので読み進められなくなってしまいました。
 仕方がないのでわたくし人形使いは一念発起、後編をまるまる印刷することに。
 もちろん全ページ印刷してもホチキスが通らないので、最終的には3冊に分冊することになってしまいました。ちなみに今測ってみたら、その厚さはおよそ2センチ。3冊に分けて大型ホチキスで止めてもギリギリでした。
 でもやっぱり小説を読むならペーパーメディアがいちばんですよやっぱり。
 さて感想に行きましょうか。
 本作はタイトルの通り学園モノ。四季異変のあと、魔理沙とアリスは神綺のはからいで時間を遡る形で魔界の高校に入学。恋に勉学にイベントに励むというお話です。
 本作を一言で表すなら全部入り。入学式から始まって卒業式まで、およそ学園モノというジャンルで考えつく限りのイベントと展開をおよそぜんぶやっています。「お約束」という言葉は「ありきたり」と同義に使われることも多いのでネガティブな印象もありますが、本作では800ページ近いボリュームの中にこれ以上ないというくらいの学園モノのお約束が突っ込まれており、読んでる方はそのボリュームに圧倒されっぱなしでした。
 そして、この800ページ近いボリュームの学園モノのお約束はすべてマリアリのためにあるという。「魔法王女ダイマリサー」でもそうでしたが、それ以上のイチャイチャが全ページに詰まっており読んでるだけで糖尿病になりそう。体感3ページごとに1イチャイチャくらいの頻度でマリアリが人目も憚らずイチャイチャするので含有される糖分は一般的なサトウキビ畑24353460ヘクタール分に相当すると思われます。(脳内調べ)
 魔理沙とアリスはただイチャイチャしてるわけではなく、ちゃんとお互いの距離が近づき、人間関係は進行していることが察せられるのがよかった。そもカップルというのは特別な間柄なわけですが、じゃあその特別さを本作ではどう表現しているかと言うと、魔理沙とアリスはそれぞれお互いの前でしか見せない面があるというか形で表現してるんですね。
 マリアリにはさまざまな流派がありますが、本作はどちらかと言うと魔理沙がアリスに対してけっこう甘えており、女の子としても女性としても憧れているという感じ。なので魔理沙はアリスの前では他の友人達の前ではあまり見せない甘え=弱さを自覚的に見せられるくらい仲が進展していると分かります。
 アリスの方もなんだかんだで魔理沙に甘えてる部分があったり、表面上は冷静を装っていても内心では気が気でないというような一面を見せてくれるのもいいですね。本作は基本的に魔理沙の一人称視点ですが、時折アリス視点に切り替わることがあります。このアリス視点があるからこそ、魔理沙だけでなくアリスの感情もしっかりわかるのがいい。
 アリスや魔理沙といった原作キャラだけでなく、マユやカエデといったオリキャラも魅力的なのが本作のいいところ。いわゆる学園モノの魅力を引き出すには人間関係を魅力的に書けなくてはいけません。カップリング、特にマリアリというお互いふたりだけの関係性の結びつきが非常に強いカップリングでは、当然関係性はこのふたりの間でのみ終始することも多いでしょう。
 しかし本作では、魔理沙は初めての、アリスは二度目の高校生活に突入することでマユやカエデといった新しい友人をはじめとするさまざまな人々と関わり、成長・変化を遂げていきます。個人的に本作でもっとも大きな成長と変化を感じられたのが、後編の終盤で魔理沙が友人からの恋愛相談に乗るようになっていたシーンですね。恋愛的にはアリスといっしょにさまざまな成長と経験を通して大きく成長したんだなあと感じられました。
 二次創作へのオリキャラ投入はなかなかリスクが高い行為だと思ってますが、本作では原作キャラを踏み台にせず、さりとて背景に没することもなく魅力的に描かれていると感じました。これ、言うほど簡単なことじゃないぞ。
 また本作、さまざまなところにちょっとした小ネタが散りばめられているのも楽しかったですね。学校の魔法の先生に明らかに田中敦子ボイスのスタイリッシュ痴女が混じってたり、別荘でのバカンスの最中に襲ってきた謎の水上スキー軍団が明らかに艦娘だったり。
 こういう小ネタって書いてる方は楽しいのでついついやりすぎてしまうことも多いんですが、本作ではきちんと小ネタは小ネタにとどめており、本文をの流れを阻害するノイズになっていないのがよかった。こういうのはともすればやりすぎて優先順位が逆転してしまい、作品が小ネタやネットミームを乗せるための皿になってしまうもの。このへんはテクニックと言うよりも自制心の問題かもしれません。
 あと本作の感想で忘れずに言っておきたいのが食事シーンの気合の入れよう。
 創作をやってる人なら思い当たる節があると思いますが、人の作品を読んでると「あ、ここ明らかにノリノリで書いてるな」とわかることがあります。本作ではマリアリのイチャイチャに気合いが入ってるのは言うまでもありませんが、要所要所の食事シーンの描写に明らかにリキが入っているのを感じ取りました。
 特に年末のエピソードのカニ鍋のシーンよ。わたくし人形使いは創作における食事シーンの魅力は食べるシーンだけでなく作るシーンにもあると思っているんですが、このシーンは食材を持ち寄って料理を始め、そしてみんなで楽しく美味しくいただくシーンがたっぷり尺を取って書かれているのでとにかく腹が減りました。しかもこのシーン深夜に読んでしまったので空腹を持て余して布団の中で悶え苦しんでおりました。このシーン、しっかりシメの雑炊まで描写してるからな。
 それに、描写がやけに具体的。調理の過程だけでなく味もしっかり言語化しているのでなんかもう読んでて一種の拷問を感じました。表紙に「カニ鍋描写注意」のマークを入れてほしい。
 ……といった感じで過去最大規模の再録集、楽しませて頂きました。なんならマリアリのイチャイチャよりもカニ鍋のほうが印象に残ったかもしれん。
 というわけで、これにて第21回東方紅楼夢新刊レビューは完了! しかし間髪入れずに今度は例大祭新刊レビューが始まるぞ! 俺たちの戦いはこれからだ!
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第21回東方紅楼夢新刊レビューファイナルスパーク-2
初公開日: 2026年05月08日
最終更新日: 2026年05月08日
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