見てしまいましたよ界隈での話題作。
 というわけで今日見てきたのはこの作品!
 もともとはネトフリ限定配信だったそうですが、配信されるやいなやSNS上で一気に話題となって劇場での上映が決定、さらに1週間限定配信だったのが上映期間延長されて上映館も増えるという爆発的人気を博しています。
 というわけでわたくし人形使いも逆張りとかせずに見てみようとしたものの、Tジョイ梅田の席は連日満席。最近になってようやく落ち着いてきたのか席が取れたので見に行くことにしました。この「話題になってるので見に行こうとしたら連日満席でびっくり」ってなんか覚えがあるなーと思ったらあれだ、プロメアのときと同じだわ。原作なしのオリジナル作品はこうやって突発的に現れて人気が爆発するので油断なりません。なお案の定関連グッズは全部売り切れており悲しみ。
 酒寄彩葉は、学費のために連日バイトをしつつも東大への進学を目指し成績も上位を保つ優秀な女子高生。友人関係も保ちつつもどこか余裕のない生活を送っていました。
 そんなある日、バイトから疲れ果てて自宅への帰路につく彩葉の眼の前で、電柱が七色に輝き始めます。なんとその中には玉のような赤ん坊が! なんでだよ。
 彩葉は仕方なくその赤ん坊を自宅に連れ帰ります。赤ん坊はすくすくと異常なスピードで成長し速攻で立派な女の子になりました。
 女の子は月から来た宇宙人と名乗り、「かぐや」と名付けられます。自由奔放なかぐやに振り回されながら、彩葉はメタバース「ツクヨミ」にてライバーを始めたかぐやをサポートするいろPとして活動を始めます。
 徐々に人気を博し、生き生きとしていく彩葉。しかし、おとぎ話のかぐや姫の物語と同じく、かぐやが月へ帰らなくてはいけない日は刻一刻と近づいてきており――。
 いやーーーーーとんでもなく面白かった!
 日本人なら誰でも知る物語にして最古のSFとも言われる「竹取物語」をこうも鮮やかに現代のおとぎ話として再翻訳してみせるとは。調べてみたら本作の山下清悟監督は今回が初の長編アニメーション作品だとか。この名前、覚えておかねば。
 本作でうまい!と思ったのが、竹取物語とVtuber文化を組み合わせた点。誤解されがちなことですが、「斬新なアイデア」とはこれまでの作品と一切の共通点を持たないアイデアではなく、既存の要素の斬新な組み合わせです。しかるに本作の「竹取物語×Vtuber」という組み合わせは、一見まったく接点のなさそうな両者をがっちり組み合わせて物語を作り上げていました。
 いきなり終盤の話になりますが、竹取物語のクライマックスであるかぐや姫が月に帰るシーンをVtuberの卒業ライブにするというアイデアには足がへし折れるくらい膝を打ちました。翻案が巧すぎる。
 さらには本作には、竹取物語ではかぐや姫が月に帰るところで終わってしまう原典に対して、その先を描くという形で「状況が決めたストーリーという『セカイ』を己の決定と行動でもって破壊する」というセカイ系の文脈も感じられました。
 そして実際、彩葉は終盤で、「かぐやとの別れを経て日常に戻っていく」という既定路線とスタッフロールを押しのけてかぐやとの再会を目指して奔走するという。「未来はあなた次第!」なんてのはもう聞き飽きた常套句ですが、実際にそうしていく姿を見せられるとやはり沸き立つものがあります。
 また、本作は竹取物語という悲劇的な別れで終わる作品を下敷きにしているので、見ている方は当然、最後は再会を匂わせはしても彩葉とかぐやの別れで終わるものだと思うでしょう。しかし本作は、そんな予想を蹴っ飛ばす勢いで「原作がそうだからって本作まで同じ終わり方をする必要なんてないよなあ!」とあのハッピーエンドで顔面をぶん殴ってくれるわけですよ。
 いや実際、本作は「既定路線の文脈vs新規アイデアとキャラクター」というのが大きな柱としてあるんじゃないかと思います。
 これはやや穿った見方というか、おそらく制作者側にはそんな意図はなかろうとは思いますが、本作にはある側面では「二次創作(特に既存作品のフォローイングという意味での)の肯定」というメッセージを勝手に感じ取りました。わたくし人形使いはそれほど詳しくはありませんが、本作では「メルト」「ワールドイズマイン」といった往年のボカロ曲のアレンジやカバーが多用されていました。これもまた広義の二次創作だと思うし、本作自体が竹取物語の二次創作とも言えるわけですよ。そして、作中でかぐやが言っているように「既存の物語の終わりが気に入らなければ自分で作ってもいいよね!」は二次創作へのエールだと俺は捉えたッ!
 
 また本作はいわゆるガールミーツガール作品でもあり、毎日をそつなくこなしつつもどこか空虚さを抱えていた彩葉と、破天荒で型破りで無邪気なかぐやとの交流がメインの軸となっています。
 作劇的にはメインキャラ二人はお互いにまったく異なる凸凹コンビだと映えるものですが、本作を見てるとかぐやは彩葉が憧れ、そして成長するごとに失い封じ込めてしまった幼児性と自由さそのものだなあと感じます。人間は自分から遠いものに惹かれるもの。まるで地球と月のように。
 彩葉は父親を幼くして亡くし、母親とも確執があって一人暮らしをしています。では周囲との人間関係が断絶していたり自閉的な性格になってしまっていたりという「絵に描いたようなわかりやすい不幸さ」をまとってはいません。加えて本作の中盤まではシリアスな空気は極力排除されており、彩葉の苦しい生活やその背景も徹底してコミカルに描かれています。この辺、終盤への落差であるとともにそのコミカルさの描写がなんというかいい感じに古臭く、90年代から00年代のOVAを楽しんできた我々旧きオタクは笑いとともにノスタルジーに涙するわけです。
 わけても劇中の電脳空間「ツクヨミ」の管理AIにしてかぐやの本体とも言えるヤチヨのコミカルな表情はあきらかにわざとらしく古い。令和8年に劇場アニメで「アメリカンクラッカー状の涙」を見ることになろうとは見抜けなかった、この海のリハクの目を持ってしても。思うに、あれって場が電脳空間でありヤチヨがAIであることを考えると、いわゆるエモートなんですよねおそらく。そこらへんの演出もただやってるだけではなくちゃんと設定や世界観を活かしたものというのが見事。
 あとまあかぐやが本当に魅力的なキャラなんですよね。見てるだけで楽しく動いてるだけで楽しい。そして後半の彩葉との数々のやり取りを見てるとなんかもう心臓の裏側のほうがムズムズしてくる。これが恋?
 素晴らしい作品に対する反応はさまざまだと思いますが、わたくし人形使いの素晴らしい作品に対する反応としては「内臓にダメージが来る」があります。しかるに本作は見終わったあとに得体のしれない不整脈に襲われたので素晴らしい作品認定です。ウッ動悸が……。
 まだまだ上映中かつノベライズとコミカライズもあるようなのでそっちもチェックせねば。あとこれほど応援上映にふさわしい作品も無かろうと思うのでサンサン劇場で応援上映してください。
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Tジョイ梅田「超かぐや姫!」見てきました!
初公開日: 2026年03月03日
最終更新日: 2026年03月04日
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