先週は引きこもりがちだったので、月の頭である今日は早速映画に行ってきました。
今日見てきたのはこれ!
これまたこないだまでまったく知らない作品でしたが、Twitter(頑なにXとは呼ばない)で評判がいいようなので、あとなぜか「男塾名物直進行軍」というワードが出てきたので関心を持って見てきました。
・あらすじ
事件が起きたのはアメリカのとある街の水曜日、深夜2時17分。家々から子どもたちが突然飛び出し、どこかへ姿を消してしまいます。
失踪したのはある小学校のクラスの生徒たち18人のうち17人。翌朝一人だけ教室に残っていたアレックス、そして担任教師であるジャスティンに世間の非難と関心は集中します。
ジャスティンはアレックスが心配なのと自分への非難に耐えられないのとで、校長に止められたにもかかわらずアレックス宅へ。アレックス宅のドアを叩くも誰も出てこず、家の窓は一つ残らず新聞で塞がれていました。新聞の隙間から家の中を覗くジャスティンの目に飛び込んできたのは、身動き一つせず暗い家の中に並んだ生徒たちの姿。ジャスティンは驚くも、やはり一連の事件の真相はアレックスの家にあると確信、行方不明になった生徒の父であるアーチャーとともに事件を調べ始めます。
この集団失踪事件の真相とは? そして、アレックス宅に潜むものは?
・6人の登場人物の視点から繰り返し見直す視点
本作の前半部分はいわば「出題編」で、児童失踪事件が起こってからキーとなる人物が浮かび上がってくるまでのパートとなっています。
そしてこの「出題編」は、同じ話の流れを、担任教師ジャスティン、消えた生徒の父親アーチャー、校長マーカス、警察官ポール、浮浪者ジェームスの5人の登場人物の視点から5回繰り返すというスタイルになっています。Twitterで本作の上映時間はけっこう長い(128分)と聞いてましたがこういうことだったんですね。
この5回の繰り返しを経て、次第に事件の全容が浮かび上がってくる構成は期待とワクワクを段階的に上げてくれてよかったですね。一見モブだと思ってたキャラが重要な視点を持ってたり、あるキャラの視点では見えなかった部分が別のキャラ視点で明らかになったりする展開からの、後半で一気に真相が明らかになってストーリーが結末まで文字通り一直線に爆走して行く流れは、2時間近い上映時間でもダレがなく楽しませてくれました。
一連の視点が出揃ってからの後半戦となる事件の唯一の生存者アレックス視点からのクライマックス、確かにアレは「男塾名物直進行軍」でした。なんでだよ?
というか本作の操られた子どもが走るときのポーズ、どうしても内藤ホライゾンにしか見えなくて困りました。
……みんな内藤ホライゾンって知ってるよね?
/⌒ヽ
⊂二二二(^ω^)二⊃
| / ブーン
( ヽノ
ノ>ノ
三 レレ
今、「WEAPONS 内藤ホライゾン」で検索したら1件もヒットしなかったので闇落ちしそうでしたが「WEAPONS ブーン」で検索したら数件ヒットしたんで僕は一人じゃないんだなって。
・「魔女」という恐怖
いきなりネタバレですが本作における一連の事件の原因はアレックスの叔母であるグラディスでした。はっきりとは描写されませんが、老齢のために衰弱しつつある彼女は、感染呪術によって街の子供たちを生贄に捧げることで延命することを目的として一連の事件を引き起こしていたわけです。
得体のしれない魔術を使って次々に人々を陥れていくグラディスの姿はまさに絵に描いたような「魔女」そのもの。
この「奥様は魔女」ならぬ「おばあちゃんは魔女」の構図はみんな大好きアリ・アスター監督の「継承-ヘレディタリー」でもありましたよね。
しかし本作における魔女であるグラディスは、「ヘレディタリー」における「家族という血縁の呪いの体現者」ではなく「親族なのに得体のしれない存在」として描写されている気がします。
アレックスから見て叔母であるグラディスは、作中の描写から見てアレックスだけでなくアレックスの父母からも敬遠されている様子。当然アレックスとも親しくはなく、彼からすれば「突然家に転がり込んできた不審人物」でしかありません。
そもそも子どもから見て、家族と疎遠である親族というのは赤の他人とも違う独特の疎外感や距離感、ひいては嫌悪感があるものです。アレックスは両親とも仲がいいだけに、そこに割って入ってきたグラディスはまさに異物。そして案の定というべきか、グラディスは両親を人質に取る形でアレックスを脅迫し、魔術に用いるためにクラス全員の持ち物を回収させていました。そしてグラディスの魔術によって操られた生徒たちは深夜2時17分という同じ時間に目を覚まし、アレックス宅を目指して走っていったわけです。
しかしラスト、グラディスはアレックスによって同じように魔術にかけられ、正気を失った子どもたちの標的にされ、無惨にも五体を引き裂かれて死んでしまいます。ここらへんの全力ダッシュは怖いやら笑えるやらでどういう目で見ていいんだか。あんだけ老齢で衰弱してたように見えた割には見事なスプリントを見せてくれるグラディスの健脚が笑えます。そしてラストはほとんどグリーン・インフェルノでした。大江戸ファイトぉ~……。
ところで本作にはもうひとり魔女が登場します。冒頭で一連の事件への関与を疑われ町民から激しい非難にさらされたジャスティンの車には、「WITCH」という落書きが描かれます。
これ、明らかに不自然というか作為的なんですよね。侮辱やいたずらが目的であればここは「BITCH」と描かれるのが自然でしょう。実際ジャスティンは飲酒運転の前歴があったり、もと恋人で現在は結婚しているポールとなし崩し的に一夜をともにするなど、道義的によろしくない側面があります。にもかかわらず、彼女に捺される烙印は「BITCH」ではなく「WITCH」。
グラディスとは違い、ジャスティンには別に魔術的な力はありません。ジャスティンに捺された魔女の烙印は明らかに「魔女狩りの標的としての魔女」としてのものでしょう。
実際、彼女は冒頭で事件の関係者……を通り越してほとんど首謀者のような扱いで激しく糾弾されます。そのままであればジャスティンは魔女狩りに遭い、彼女をスケープゴートに仕立て上げたであろう真の黒幕であるグラディスは正体が露見することもなく、一連の事件は闇に葬られていたことでしょう。これもまた魔女という属性の持つ恐怖のいち側面だと思います。
このように本作にはふたりの、非常に対照的な魔女が、そしてそこにまつわる恐怖が描かれていると言えます。
・ネットリンチという現代の黒魔術=虐殺兵器=WEAPON
本作の一連の事件の真相は上記のとおりなんですが、それでも不明瞭な部分は残ります。
アレックス宅に向かったアーチャーが見た巨大なカラシニコフの幻影はなんだったのか?
グラディスに操られた子どもたちのあのポーズにどんな意味があるのか?
そもそも本作のタイトル「WEAPONS」にはどんな意味があるのか?
特にタイトルに関しては、オカルトスリラーな内容に妙にそぐわない気がするんですよね。
その辺を色々考えてみたんですが、本作の一連の事件ってオカルト事件の皮を被せたネットリンチなんじゃないでしょうか。
ろくな証拠もなしに激しく糾弾されるジャスティンの姿はまさにネットリンチの典型です。また、操作権限もないのに勝手に証拠を集めたり他人の家に押しかけたりするアーチャーもネットリンチで見受けられるネットユーザーの典型的な姿でしょう。
そして決定的とも言えるのがグラディスの使う黒魔術。ターゲットとなる相手の所持品を用いることでその意思を奪い意のままに操るというものなんですが、この魔術、作中でしばしば「特定の相手をターゲットにしてどこまでも執拗に追いかけて殺させる」という形で用いられます。
これ、ネットリンチにおいて標的となった人物にいつまでもどこまでも粘着して、ネット上だけでなく自宅凸までやらかす流れと同じに見えるんですね。さらにその流れがグラディスによって意図的に引き起こされ誘導されたものというのにもネットリンチ的な側面を感じます。
そして極めつけがラストでグラディスが逆に大勢の子供たちに追いかけられるシーン。ネットリンチや炎上を仕掛けていた本人が悪事を暴かれ、逆に激しい追求を受ける姿に見えます。子どもたちから逃げるグラディスは必死に弱者アピールをしますが聞く耳を持ってもらえず、誰からも助けてもらうことなく子どもたちに引き裂かれる。あのグラディスを執拗に追いかける大勢の子供たちの姿は、SNS上で「叩いていい対象」認定された対象に群がる無数のアカウントに見えました。
思えば子どもたちのあの両腕を広げたポーズは戦闘機のようにも思えます。無数のアカウントによるネットリンチは、もはや一種の大量破壊兵器である。だからこそ本作のタイトルは「WEAPONS」なんじゃないでしょうか。複数形であるところも含めて。