・天導天使パート導入部
起こるべきことが起こるべくして起こり、すべてが終わったのがわかった。
神が失われていたものを取り戻し、その欠落は補完された。
しかし、世界は変わってはいない。世界は都合よく、大熱波以前の姿を取り戻してくれたりはしなかった。世界は未だ、欠けて歪んだままだ。
そして――私の罪もまた、都合よくなくなってくれたりはしなかった。
私の罪は、この感覚球が記憶している。おそらくは、永久に。
祈っても、すがっても、罪はなくならない。私のこの醜く歪んだ姿も変わりはしない。
世界は、未だここにある。
もはや私の傍らにあることが当たり前になってしまった感覚球を、両手を広げて抱きかかえた。
脈動するようにゆっくりと明滅するその神の感覚器官が、神が大きく変質した今どのような状態になっているのかは、もはや知りようがない。少なくとも、以前のようにここから情報を読み出すことはできないだろう。
しかし、私の罪はたしかにここにある。なくすことはできず、消えてもくれない。
私の罪。私はその罪を拭うために、あの人を裏切った。けれど罪は折り重なるだけでなくなりはしない。物語のように、劇的なフィナーレとともにスクリーンが暗転してはくれない。物語のように、そこで終わってはくれない。
私はこの世界で、この罪を抱えて生きていくしかない。
私は罪人だ。その罪の報いが、罪を抱えて生きていくことだというのなら、私はそれを受け入れなくてはならない。
いっそ狂気に陥ってしまう方が楽だったかも知れない。しかし私にそんなことが許されるはずはない。世界を崩壊させた原因の一端を、あの銃弾を作り上げたのは私なのだ。そしてあの人を裏切ったのもまた私なのだ。私の罪を許すことは、神ですらできない。私の罪を背負うことができるのは、この世で私だけだ。
私はこれから幾度も自分の罪を思い出し、自分の罪と向き合い、自分の罪を引きずりながら生きていくしかないのだ。
だがその罪は同時に――私が裏切ったあの人との、唯一のつながりでもある。この罪を抱えている限り、私はあの人と、たった一本残された、か細い蜘蛛の糸でつながっていられる。
――そう思っているのは、私のバロックに過ぎないだろうか。