ドアノブを捻ると鍵が掛かっていた。珍しい。どうやら今日はおれの方が先に着いたらしい。キーケースを取り出して、中身を探る。これは家の鍵。こっちは自転車の鍵。そしてこれがこの事務所の合鍵。鍵穴に差し込んで回せばかちゃんと音を立てて鍵が開き、扉の向こうにはしんと静まり返った冷えた空気。扉横のスイッチを押して電気を点けると――いつも通りの風景の中に、いつも通りじゃない色彩が、窓際でぽつんと迷子のように立ち尽くしていた。
「……あ、」
赤い花はゼラニウム、紫色の花はサイネリア。彼はそう言っていた気がする。室内でも育てやすく、冬の寒さにも負けないんだとか。
それらは街中や住宅街、どこでも見かける何の変哲もない無毒の花だ。確か寄宿学校の花壇にも咲いていたのを見たような気がする。
身を守るための毒も棘も持たない、耐毒の訓練の役に立つこともなく、薬草になる訳でもない。ただ咲いて散るだけの花に、どんな意味を持たせるんだろう。人は、……彼は。
そんなことを考えながら荷物をソファーに置き、引き寄せられるように窓際に足を進めると、よく知る足音が耳に届いた。次いで扉が開き振り向けば、この花々を育てた人、此処の主――聖来が、そこに立っていた。
「……おはよう」
「おはようございます――、あっ!」
朝一番に聞くには通りの良すぎる声を上げ、彼はおれの荷物の横に鞄と上着を雑に置くと大股でおれを追い越して窓際に向かう。一瞬見えた横顔はどこかきらきらしているようにも見えた。
「良かった、ちゃんと咲いてくれて」
「色々調べてたもんね」
完成しなかったけど終わりにします 続きはそのうち書いてあげます ありがとうございました!