▼ここまでの(存在しない)あらすじ
・ドラゴンの群れにちょっかいを掛けたところから逃亡します
・いわゆるハイファンタジー世界で、魔法は一般に存在するものとします
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耳元を羽音が掠めた、と思う間も無く背中に激痛が来た。
豪雨の中、唯でさえ滑る箒をかろうじて握りしめ、肩越しに視線を向ければ、小さなドラゴンが蹴爪を振り翳しながら何頭も旋回しているのが見えた。小さな、といっても山犬ほどの大きさで、次にまともに喰らえばひと溜まりもない。さらに、烟る雨の向こうに薄っすらと見えるのは、考えたくもないが、おそらく群れのボスだ。鯨と見紛うほどの巨大な翼が、ひどくゆっくりと羽ばたきながら、こちらを追いかけてくる。巨体なだけあって飛翔速度は遅いが、手負いの今となってはいつまで飛び続けられるか分からない。あいつの炎の射程圏内に入ったらそれで終わり、空中で消し炭にされて跡形も残らないだろう。
喉から溢れようとする悲鳴を舌打ちで追いやり、背中の出血を片手で拭う。雨に洗い流されるよりも早く呪文を唱え、箒の柄に赤く紋を描いた。樹皮の内側に眠らせていた蔓の新芽を叩き起こす。
魔力を注ぎ込まれた箒が震え、ガクンと重力に囚われた。自由落下。振り落とされないように半身を箒に引きつけ、滑る柄を必死で握りしめる。蹴られた右肩に力が入らない。長い数秒の果てに手の中で樹皮がざわめき、節の間からぶわりと噴き出た蔦が腰に絡みついた。胸のあたりまで圧迫されて息が詰まったが、ともかくこれで両手を離しても箒から落ちることはない。浮力の戻った箒を急旋回させ、めちゃくちゃな軌道で加速した。ドラゴンの翼は小回りが利かない。小さい奴らはこれで振り切れる。
問題はあいつだ。冷たい雨の吹き荒ぶ中を高速で飛び続け、歯の根ががちがちと鳴った。じきに速度を保てなくなり、あの巨大なドラゴンに追いつかれる。なんとかして倒すしかない。
頭上で雷鳴が長く尾を引いた。覚悟を決め、その場で旋回してドラゴンに向き直る。距離およそ四百、こちらが風上、豪雨に閉ざされてはっきりとは見えないが、間違いなく、怒りを激らせた巨大な金の瞳が、まっすぐにわたしを射抜いている。鳩尾から湧き上がる怖気を飲み下し、両手で宙空に円を描いた。箒全体を魔法の杖に、編み込まれた枝葉の先々まで意識を集中させる。
「天を轟かすものよ、」
雷を使役する魔法だなんて、一介の魔女に扱える訳がない。
可能なのはただ一点、この身に突き刺さる視線を手繰り寄せ、その視線の元へ、輝く金の両眼へと、力が流れる座標を固定すること。
真っ白な閃光が視界を灼いた一瞬に、詠唱を完成させる。稲妻が天を裂き、魔力で穿った導に沿って走った。耳を弄するほどの轟音が、ドラゴンの断末魔を掻き消した。
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推敲おわり!!
呪文考えるのに30分くらい掛かりそうなのでここで一旦完成にします
だいたい1000字ほど ありがとうございました:)