機体の旋回の勢いに合わせて、左腕部を突き刺していた敵機をそのまま投げ飛ばす。回避するまもなく衝突、転倒した敵機2体に残っていた中型ミサイル「[[rb:神火飛鴉 > シェンフォフェイヤー]]」2発を叩き込む。
上がる火柱を見届けるまもなくレーダーを確認。敵機を示す赤い光点は残り3。このまま引き下がってくれることを頭の隅で祈るが、3つの光点は散開し、再度こちらを囲むように移動してきた。
「クソがッ! いい加減諦めろ……!」
かすれた声で悪態をつきつつも、ワンは地形を確認する。
最悪だ。この先は高い崖がそびえ立っている行き止まりだ。周囲には今度こそ掩体になりそうなものがない。このまま残った3機に囲まれてしまえば終わりだ。
『あれあれ~? 大ピンチじゃーん! どうするのー? ねえどうするのー?』
「うるせえええええんだよ今考えてんだから静かにしろッ!!」
怒鳴りつつも、ワンは必死で地形データとレーダーの間に視線を往復させる。そうしている間にも3つの光点は包囲を狭めつつあった。もはや時間の余裕はない。
「ッだあああもうこれしかねぇッ!」
ワンは機体を崖に向かって疾走させた。残りの敵機はそれを追ってくる。[[rb:至近距離 > レンジ・ワン]]に侵入、[[rb:警告 > アラート]]と同時に敵の放ったミサイルが背後に迫ってきた。
シートの背中越しにはっきりとミサイルの[[rb:視線 > シーカー]]を感じながら、ワンは加速を止めない。前面モニターいっぱいに崖の壁面が広がり――機体背面のすべてのバーニアが下方向を向いた。急加速!
ほぼ直角、上方向に向かって加速したワンの機体を追いきれず、放たれたミサイルは崖の壁面に命中、爆発。その爆炎に押し上げられるように、ワンの機体は急加速によって崖の上に押し上げられた。同時に、ワンは中型ミサイル「[[rb:神火飛鴉 > シェンフォフェイヤー]]」残りの2発を発射した。敵機に向けてではなく、地面に向けて。
着弾した地面に、大きな裂け目が生じる。裂け目はみるみるうちに広がり、次の瞬間には轟音とともに崖が崩落し始めた。
敵機の放ったミサイルで脆くなっていた壁面は、さらにワンの放ったミサイルで決壊、大量の土砂と岩の雪崩となって、ワンを追ってきた敵機3機を瞬く間に飲み込んだ。
数瞬置いて、空中にあったワンの機体のバーニアが機能停止。臨界駆動終了。機体はそのまま落下する。
コックピットの緩衝バルーンに埋もれたワンの耳に、機体の過剰ダメージを警告するアラート音が遠く聞こえる。