もう一度、ニュース画面に表示されている情報を確認する。出火したと思しき時刻は17頃。クライアントの情報を確認する。ID照合された個人情報とともに表示された事務所への来訪時間は……19時27分。
つまり、クライアントは私の事務所を訪れた時間には、すでに火事で死んでいたということになる。
「どういうことだ……?」
もちろん、私のその問いに答えるものはいない。
その代わりに私は半ば反射的にアプリを起動し、バロック屋同士が情報交換に使用している裏(ダーク)ウェブに接続、情報を確かめる。今どき、ショッキングなニュースほど疑わしいものだ。中には本物のニュースと見紛うばかりの動画や画像まで捏造されているケースがある。バロックの中には、そうしたフェイクニュースを脅迫的な精力で作るものさえもいた。
ツールが表示する雑多な情報をより分けながら、目当てのニュースを探す。程なくして該当の情報は見つかった。
有名アイドルグループ「◯◯」のメンバーの失踪のニュースに関連付けられたその情報は、今しがた私が見た火災のニュースと同じものだ。同時にSNSを確認すると、その情報はまさに延焼するように広がっている。どうやら、このニュースは手の込んだフェイクではなく本物らしい。