「はっぁ、ふ」
 吐息が暗い室内に響いて、悲しく消える。仕事に間に合わせるからと兄に珍しく駄々をこねたのが今朝のことで、熱のある体で舌戦を繰り広げて見事に勝利したのがその10分後のことだった。メンバーたちは一様に心配してくれていたようだったが、移ってしまっては元も子もない。ひとりで平気だからと言いつけて、渋る背中を無理やり外に押し出した。そうして作り出された空間は酷く静かで、寮内にいるメンバーたちは皆熱のある一織のことを気遣って静かにしてくれているのがわかる。珍しくほとんどの人間が仕事がないということもあるだろうが、活気を感じる分静かなのが余計に寂しく思う。もともと自営業の家庭であるため、ある程度の喧騒の方が落ち着く。それゆえ、これほど静かな方が落ち着かない気持ちになる。
「っ、」
 薬を飲んだはずなのに、一向に効いている気配がしないのはなぜだろう。眠りについていないせいもあるのかもしれないが、熱のせいでそもそも眠くならないのだから一織にはどうしようもない。じわじわと涙が染みだして、視界が滲んでいく。生理現象だと言い訳をしながら、なんとか眠りにつこうと目を閉じたり、深呼吸を繰り返したりと必死に睡魔を下そうとするのに、頑張れば頑張るほど眠りは一織から遠ざかっていく。
「ぅ……」
 諦めて半身を起こすと、たったそれだけの動作でも視界が眩む。薬が効くのには時間がかかると知っているけれど、そろそろ効いてきてもおかしくはないと思う。いつも以上に緩慢な動作で室内時計を見ると、薬を飲んでから少なくとも一時間は経っている。薬効時間を考えれば、そろそろ効いてきてもおかしくはないはずだ。やはり、眠れていないのが問題なのだろうか。
「は……、っはぁ」
 口から零れる熱い息はそれでなくとも荒いのに、一織の焦りを反映したようにゆっくりと、でも確かに。荒れて、壊れて、平常を失っていく。落ち着けと言い聞かせても、一度冷静を失ってしまった呼吸を戻すのは病んだ一織には荷が重い。助けてと素直に言えたらいいのに、こんな時でも一織のプライドが邪魔をして、SOSは音にならないまま消えていく。
 助けてと一言いえば、お兄さんたちはすぐさま駆けつけてきてくれると知っているのに。
「……、こふ」
 息が、苦しい。
 熱で息が籠って、喉奥から咳がこぼれてくる。
 仕事に間に合わせなければならないのに、不甲斐なくて情けなくて、涙がにじむ。
「げほ……、は」
 不意に肩から何かがずれ落ちる感覚がして、無意識に柔らかな布地を押さえる。暗い室内でもよく見えるその橙は、強がった私の肩に兄さんが欠けて行ってくれたものだ。
「ぁ、にいさ、」
 はくり、小さく口が開閉して、助けてほしい人の名前を呼ぶ。
 堪えていたのに、ぽろぽろ、雫が頬を伝って布団にシミを作る。
 助けてほしい。熱くて寒くて苦しくて辛い。
 辛い。
「にいさ、……、にぃさ」
 声が届かないとわかっているからこぼれた弱音は、徐々に一織の息を奪っていく。たすけて、と口遊んだ時、扉が開いて光がさす。
「一織、……一織!?」
「にいさん……ッ」
 ほろり、視界が滲んだ。
終!!!!!!!
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ありがとうございました!!!
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初公開日: 2023年11月14日
最終更新日: 2023年11月14日
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コメント
しょうがさんの絵を書きます
1の体不
ワンライ『入院』
体調不良ワンライお題は『入院』です 21:30から開始出来たら開始するつもりです
海月
ワンライ
体不ワンライを書きます!!!パスワードは今回のお題です!
海月
ワンライ 練習
過呼吸・ライブ・夢中だったのどれかor全部を使用
海月