体調不良やらなにやらでなかなか見に行けなかったこの作品ですが、ようやく行ってきました。
というわけで今日見てきたのはこの作品!
塚口のファッションリーダーこと秋山殿のこの姿には、懐かしのゴジハムくんを想起せずにはいられません。
さて本作、期待値は低めでした。その理由はまず監督が山崎貴であること。個人的には「STAND BY MEドラえもん」や「ドラゴンクエストユアストーリー」などの評判から山崎監督にはあんまりいいイメージは懐いてないんですよね。ただ、寄生獣シリーズはマンガからの実写化としてはけっこう上手いことやってたと思いますが……。なので、まず監督の時点で期待値は高くありませんでした。
そして予告編を見た感じ、邦画の悪い意味でのあるあるである「感情的な絶叫」があったのでそこからさらに期待値は低下。加えて試写会の感想がなーんか具体性を欠いたぼんやりした絶賛ばっかりだったのでこれに不信感を覚えてさらに期待値は低下。なんなら評判だけ確認して見に行かないという選択肢もありました。
しかし公開日、TLから漏れ聞こえてくる感想がけっこう好評で、しかもそれが手放しの大絶賛とかではなく「悪いところもあるにはあったけどそれ以上に良いところがあった」「減点方式なら70点、加点方式なら100万点」「ゴジラが怖すぎてゴジ泣き」といった声が上がっていたのでちょっと期待値が回復。というわけで見てきました。
なお、公開からけっこう日は経っているのでネタバレ反転はなしで。
さてまず率直な感想としては、「点数をつけるなら60点、ただしマイナス分が100点としたらプラス分が160点で60点」といった感じでしょうか。確かに評判の通り、悪いところはかなり悪い……というか典型的な邦画の悪いところが散見されましたが、それを帳消しにできるだけの良い点もありました。
まずは個人的なマイナスポイントを上げると、明らかにストーリー進行の理屈がおかしく劇中の話の流れに食い違いが生じている箇所がいくつかありました。
中でもかなり「おいおい……」と思ったのが、「ゴジラの出現を国民には伏せるという決断をした日本政府に『情報統制はこの国のお手の物だからな』と毒づく主人公たち」というシーンの次のシーンでラジオからゴジラ襲来のニュースが報じられるという流れ。情報統制できてないじゃねーか。
また、メインキャラクターのひとりである木造船「新生丸」艇長・秋津の言動が他のキャラクターに比べて悪い意味で芝居がかっている、カッコつけている感じで、周囲のキャラクター、ひいては本作の空気感から終始浮いている感じでかなりノイズとなっていました。ポジション的には美味しいキャラだったのでもう少しどうにかならんかったのかなあ。
そして見てきた人たちの多くが心配していたであろう人間ドラマパート。分量としては人間ドラマパートにかなり尺が割かれており、ゴジラが暴れまわるシーンはかなり短かったです。じゃあその人間ドラマパートが面白かったかと言うとうーん……といった感じ。
確かに特攻から逃れて帰還兵となった主人公・敷島の葛藤や強迫観念を抱えるキャラクター造形、そしてそれを演じる神木隆之介氏の演技は非常に良かったです。また、彼とチームを組むことになる水島や橘、野田、水島といったキャラクターは好感が持てるものでした。しかし後半の人間ドラマパートが邦画の悪いところが多く出ている悪い意味でのお約束展開が多く、そこは残念でしたね。特に「海神作戦」の会議シーンなんかは全体の流れがごくごく悪い意味での感動シーン、いわば悪い意味でのプロジェクトXのノリになってて見てて白けてしまいました。こういう場合の「白け」は制作側が想定している観客の感情と実際に見ている観客の感情のズレから生じるものだと思うんですが、制作側が想定しているノリが古い。
詳しくは後述しますが、「海神作戦」はゴジラを倒す作戦としてはなかなか面白そうなアイデアだったのに、「はいここ感動のシーンですよ!」っていうのがあまりにもあからさますぎて、そしてその「感動のシーン」のノリがあまりにも古くて萎えてしまいました。本作における人間ドラマパート自体は決してダメな部分ばかりではなかっただけに、ここは特に残念な感じでした。
上記のように、本作は予想していたよりもけっこうダメな部分が多くありました……というか、いわゆる「邦画のダメな部分」がそのまま入っていたという方が正確かな。しかし、それと同時に予想外に良いところもありました。
まずは多くの人が語っているであろう、本作独特のゴジラの怖さがすごくいい。基本的にゴジラは、進行ルートにあるものや攻撃してくる兵器を狙ってくることはあっても、人間そのものを直接的に狙ってくる描写は意外になかったと思います。
しかし本作のゴジラは明らかに人間を目標として襲ってきている、なんなら目が合うという怖さがあります。
「シン・ゴジラ」におけるゴジラは「怪獣」というよりもはや「災害そのもの」といった感じで、どこを見てるのかわからない目には意志があるのかさえわからないような存在でした。
対して本作のゴジラの目には明らかな殺意を感じました。特に冒頭では、無作為に暴れ回っているのではなく、「これ、ジュラシックパークか?」ってくらい人間を明確に狙ってぱっくんちょしているシーンがあったのがかなり衝撃でした。一口に「ゴジラ」といっても作品ごと、シリーズごと、時代ごとにさまざまな傾向やポジションが異なるゴジラですが、今までこういう方向性で従来のゴジラ像と差別化してきたのは本作が初なんじゃないでしょうかね。
また「ゴジラの差別化」といえばその大きさです。ゴジラは作品ごとにスペックが異なり、中には100m超えのものもあります。調べてみたところシリーズ最大のサイズは「GODZILLA怪獣惑星」に登場したゴジラ・アースの300mのようですね。
では本作のゴジラはどうかというと、公式twitter(頑なにXとは呼ばない)によれば50.1メートルとのこと。このサイズは歴代ゴジラの中でもかなり小さめのものです。では、小さいから迫力がないかと言うとさにあらず。本作におけるゴジラには、このサイズだからこその「すぐ近くにいる」「そこまで迫ってきている」という恐怖を強く感じさせる力がありました。ゴジラとの距離が心理的にも物理的にも近いんですよね。
思うに、この「ゴジラとの距離の近さ」はそのまま主人公である敷島の抱える「トラウマとの近さ」であると感じます。特攻から逃げ、その先の大戸島でゴジラによる襲撃を経験した彼はいわゆるサバイバーズ・ギルトを抱えています。「自分だけが生き延びてしまった」という罪悪感が彼の抱えるPTSDの原点なわけですが、本作におけるゴジラは明らかに彼のPTSDの投影でしょう。だからこそ本作のゴジラは遠くではなく手の届くところにいる、追いかけてくる、そしてこちらを常に見ているわけですよ。作品によってさまざまな概念やイメージを投影されるゴジラですが、本作におけるゴジラは「どこまで逃げても地響きを立てて追いかけてきて、気づけばすぐそこから自分を見下ろしてくる悪夢」であると思います。
本作のゴジラで印象的なのは、前述した「明らかな殺意のこもった目」だけではありません。個人的には足の造形……というか、足のクローズアップが非常に印象的でした。ゴジラによる攻撃といえばもちろん放射熱線ですが、本作ではそれと同等に、もしかしたらそれ以上に足によるアクション、すなわち「踏み潰す」「歩いてくる」というアクションが大きくクローズアップされていると感じました。
前述の通り、本作ではゴジラと人間との距離が非常に近い。そのためゴジラが襲来してきたときにまず目に入るのが足なんですよね。ゴジラにはそれぞれの作品、それぞれのゴジラで印象的な体のパーツがあると思いますが、本作は明らかに足を重視しているはず。今回のゴジラの造形は明らかに足まわりに力が入っていたと思います。
そしてゴジラといえば放射熱線のシーンがどうなるかが新作ゴジラの大きな注目ポイントとなるわけですが、あのいかにも「エネルギーを装填してます」といった感じの背びれのギミックはとてもよかった。ゴジラの放射熱線は宇宙戦艦ヤマトの波動砲と同じポジションなのでその見せ方は非常に重要、さらに言うならその「溜め」が重要なわけですが、最初の放射熱線の発射を直接見せないというのは非常に上手かったと思います。ゴジラが消えた海中から青い光が溢れてくるだけで観客は「『アレ』が来る……!」と悟るわけです。
2016年のギャレゴジでは、なかなかゴジラ本体が登場しない「ゴジラ焦らし」が長すぎたことがしばしばマイナスポイントとして挙げられていましたが、本作ではゴジラ本体は開始1分で早々にドーンと出してくれたのに対し、放射熱線はしっかり焦らしてから見せてくれたのが非常に良かった。
ゴジラの造形に関しては、そのサイズ感や見せ方はうまく従来のゴジラ作品と差別化されており全体的に良かったと思います。
他にも良かったところといえば*震電!!震電!!震電!震電ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!震電震電震電ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!日本海軍施策局地戦闘機震電たんの五式 30mm 固定機銃一型乙をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!*
などと懐かしのルイズコピペをやってしまうくらい震電たん!震電たん! エンテ型カッコイイよ震電たん!!! サムライソード!!! とテンションが酷いことになってしまいました。
終盤で海神作戦を成功に導くために元戦闘機乗りである敷島が使用可能な戦闘機を探し回った結果見つけたのがこの震電というのがアツい。
震電はそれでなくてもその独特の形状などから非常に高い人気があるわけですが、本作では震電は「大戦末期に試作されたものの実戦投入されなかった戦闘機」という点で大戦をひとりだけ生き延びてしまい己の勤めを果たせなかったという想いに苛まれ続けている敷島とオーバーラップするわけですよ。ただ出したわけではなくしっかりと作劇的必然性を伴っているので、この震電の登場には説得力を感じました。
そしてこの震電でもって、強力な防御力と再生能力を持つゴジラの唯一の弱点である口の中に体当たり攻撃を敢行するという一連のラストバトルの流れも、史実では飛ぶことがなかった震電の勇姿をたっぷり見せつつ、敷島がかつて果たせなかった己の努めを果たすというシークエンスがしっかり成立していて、正直驚きました。この部分のストーリーテリングは非常に良かったと思います。まあオタクはちょろいので震電が飛んだだけで100点出ましたが。
その後の「銀座襲撃で死亡したと思われていた典子は実は生きていた」というのは蛇足感とまあこのくらいのご都合はあってもいいかなという気持ちが半々といった感じ。
まとめると、公開前に心配されていた「邦画の悪いところ」はけっこうそのまま入ってたましたが、ゴジラの造形と見せ方は非常に良くさらに既存のゴジラ作品ともうまく差別化されていたと思います。